世界には、名盤とされながらも未だCD化されていない作品がいったい幾つあるのだろうか?


理由はどうあれ、こういう“埋もれて”しまっているものたちを掘り出し、世に紹介していくのが所謂バイヤーの仕事なのだろうが・・・ (だとすれば、非常に興味深い職業だ。)


今回紹介する作品も未だCD化されておらず、また、ウェイン・ショーターの『スーパー・ノヴァ』、『オデッセイ・オブ・イスカ』、ジョー・ザヴィヌルの『ザヴィヌル』、そして、最後にそれらが一体となったウェザー・リポートのデビュー作などと並び、マイルス・デイヴィスの『マイルス・イン・ザ・スカイ』(68)に始まり、『ビッチェズ・ブリュー』(69)を頂点とする一連の“電気化”を先導した歴史的名盤でもある。




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ミロスラフ・ヴィトウス 『パープル』(70)


ミロスラフ・ヴィトウス(b,elp)
ジョー・ザヴィヌル(elp)
ジョン・マクラフリン(g)
ビリー・コブハム(ds)




女の恨みよりも男のそれの方が性質が悪いなどという話を耳にしたことがあるが、このアルバムにまつわる話はもしかしたらそこに当てはまるのかもしれない。


というのも、ウェザー・リポート初期にバンドが集団即興重視の演奏に変わりザヴィヌルがファンキーな要素を入れる為に、エレクトリック・ベースに持ち替えファンク・ビートを演奏するようヴィトウスに要求するようになったことから、二人の音楽性にズレが生始め、次第に2人の仲が険悪なものとなってき、さらには、1973年発表の3rdアルバム『Sweetnighter』では、ザヴィヌルが実際にもう1人のベーシストとしてアンドリュー・ホワイトを起用するなどしたため、その溝がさらに深まり、次の1974年発表『Mysterious Traveller』を最後にヴィトウスは追われる形でバンドを脱退したそうだ。


これを受けてヴィトウスは、バンド名の「ウェザー・リポート」使用のロイヤリティーを求めての提訴を起こしたのだが、これ以降、二人の仲は改善不能な程にまで陥ってしまったらしく、その結果、お互いが参加したこの『パープル』のCD化を互いに良しとしていないそうだ。(しかも、ザヴィヌルはそのまま亡くなってしまったわけで・・・)


そんな『パープル』だが、先に書いた参加メンバーををご覧いただければお分かりいただけるように、半分はウェザー・リポートの、もう一方はマハヴィシュヌ・オーケストラの中心メンバーである。


この面子で一体どんな駄作が作れるというのか?(しかも時は1970年!)


幸い、自分の手元にはこれの音源があるのだが、当然演奏に関しては全く文句のつけようがない。(“スリリング”とでも形容しておこうか)


前回の『限りなき探求』の記事でも使った文句ではあるが、60年代新主流派ジャズとフュージョンとをつなぐ“ミッシング・リング”と呼ぶに相応しい文字通り“歴史的名盤”である。


こんな作品を世に出さないなんて、それは最早“罪”だ!!






ワーナー・ミュージックさん、そろそろ真剣にこれのCD化を検討していただけないでしょうか?w(“Forever YUONG”シリーズで)