若者の今を救うジェシカ、日本映画を救うEXILE。 | まりのブログ

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性同一性障害者の私が、思いのままに生きるために頑張って生きてます。
性別適合手術をしてから2年になりました。
私はトランスジェンダーとして誇りを持って生きてます

またもや非常にお薦めし難い映画ですが、もしかしたら...あなたの特別な何かに成るかもしれません...
祈りが込められた映画です。

「ジェシカ」
ミカエルは問題を起こし、社会から不適合とされた。そんな彼の前に現れたのはジェシカ。ジェシカは隠れ家を用意し、たくさんの若者に戦う術を教えていた。
ミカエルは穏やかな時を過ごすが、社会の刃は彼等の命を奪うことも有った。
仲間たちとの関係に慣れてきたミカエルはルカと社会に頻発に足を踏み入れるようになる。そこでミカエルはカミールと知り合い、心を交わす。
隠れ家の生活は平穏無事だと思っていたが、小さな想いのズレが悲劇を招き、彼らを窮地に陥れる。
時は近未来。世界はおそらくそこそこの管理社会に成っています。ジェシカやミカエルが集う若者達は、"孤児"との表現も有りますが、社会規範との関わりを断った者達の集まり。彼等は見付かれば不適合者として処分される。
故か、そうだからか、彼らは暴力でしか社会の中で自らの思いを表現出来ない。
そんな彼等を救うのは、ジェシカ。
彼女はささやかな方法で彼らを助け、導いて行く。それは共感、共有、そして受け入れる懐。
彼等は穏やかに、そしてひっそりと暮らしている。
...設定はそれなりに分かり易い"近未来もの"なのですが、まあ、映画はそんな設定を分かり易く映像にしない。
長閑な住宅地に突然、窓に体当たりして、血塗れのまま呆然としているミカエル。そこにジェシカと仲間たちが現れ、ミカエルを追って来たドローンを銃で撃退する。
ミカエルは迎えられ隠れ家へ。仲間たちはミカエルを受け入れ、各々が意味を持つ"なにがしかの物"をミカエルに譲る。それは仲間としての共有。共に生きる事を示す。
そんな語りを言葉少なく淡々と描く。
映像はカラッとした鮮明映像。鮮明過ぎてホームビデオのよう。ただ、その捉えた映像は時に非常に美しく時に刺激的、しかし語りと言えば、感覚的で、どうも物語が紡がれないアート志向。淡々とランタイムが流れ続けます。
序盤はSF的アイテムにドローンに銃撃戦と期待させる一方、哲学的で感覚に響く、調べのような映像と語り部に、誰もが気後れする筈です。
しかし、集う若者たちの表情は雄弁に語ります。そして、彼等の零す些細な言葉の中に、若者たちの思いや夢が込められている...
どうもこれはフランスの若者たちの思いの映画らしい。世界共通の、社会現象にもなっている若者たちの暴力を、悲鳴なんだと語ろうとしているようだ。そして彼等が悩み、考え、その隙間に幾度と無く零れるのは、ごく単純な言葉。"愛"。
若者たちは非常に愛に飢えている。そんな想いを孤独な若者達が集い、抱きしめ合って、涙を流す、そんな映画でした。
派手なアクションは無い。分かり易い提言とも言えない。記憶に残るほどの何かを見ることも無い。
不思議な近未来感の中に非常にリアルな若者たちの孤独を描いている。暴力と不遇に押し潰されるような現実に喘ぐ若者達を描いた社会派映画ほどビビッドには伝わらないが、気付けば、じわっと染み入るように身につまされている、そんな感覚はなかなか味わえない。
何と無く、映画「ミスターロンリー」を思わせる。社会から零れ落ちた者達の寄り添いとその場しのぎの癒しを見る。
彼等は誰も知ることの無い過去を背負っている。そしてそれを抱えたまま、永遠に生きる。もしかしたらいつか誰かにそれを話せるかもしれない。そんな友を捜す旅をし続けている。ジェシカはその旅の導き手。居場所と歩く方向を教えてくれる。
それは実は、親が子に与えるべきものだ。そう思わせる。
ジェシカは親がする力の他に、仲間たちを繋ぐ力をも奮う。それは粋がった共感や力任せなものでは無い。厳かでスピリチュアルな静寂の向こうで、行う。
彼等に特別な言葉は要らない。ジェシカを信じる心が糊と成って、そこの一部と成る。

終盤。仲間たちの中で、一番逞しく凛々しいライデンが窮地に陥る。些細な事で、彼は自らの心をズタズタにしてしまう。
過信でも抜かりでも無いのだけれど、彼は今日まで築き上げたものを破壊してしまう。
それは仲間の世界をも破壊してしまう...
ジェシカは彼等に無敵ではない。でも、ジェシカはじっと見守り、彼等を否定しない。苦しみに喘いでいる彼らを特別に労りはしない。ただ、伝えるべきものを選び、向き合って、真摯に語る。
非常に単純でありながら、はね除けられない特別な言葉を使って。

あまりに淡々とした映画です。
しかし心に隙間の有る人は、この映画がそこに触れてくるかもしれない。もしかしたら共感を見出だせたなら、あなたの何かを癒すかもしれない。そんなリアルがあります。
この映画は、おそらく、映画「ショート・ターム」のような社会から何らかの事情で追い出されてしまった若者たちを保護するNGOあたりが製作した映画なのでは、と思います。
ジェシカはそこの局長?
彼女の祈りが込められた作品です。


一転、エンターテイメント。こちらはお薦めです。
「Jam」
過去を抱える刑務所帰りのテツオ。心優しい訳有りのタケル。場末のアイドル演歌歌手の横山田ヒロシ。
絡む事も無い三人が、思いを胸に、また想いに振り回されて、とある同じ時間を駆け巡り、奔走し、そしてその三つの願いは交錯して行く。
そして運命の日は訪れる。
劇団EXILEとSABU監督のコラボはどうなるかと思いましたが、まあ、凄い。
「High&Low」のような、如何にもなEXILE的映画かと思いき、始まった途端にカーアクションにパニック、そしてジョーク?
主人公は冴えないあんちゃん?それとも演歌歌手?刑務所出所にいちゃんが出て来て、やはりEXILE的気配は嗅ぐわいますが、この映画はあくまでSABU監督映画。
彼の描く純然たる一本の映画でした。
ちょっと残酷性が有るので、気を付けないといけません。それも結構な痛たた系。ぜひSABU作品の「Mrロン」で耐性を。こちら名作です。
それにしてもたくさんの因果がひとつに繋がっていくのはSABU監督の真骨頂で、非常に上手い。繋がる度に嬉しくなってしまいます。結構なシビアな関係図で、変にドキドキさせられちゃう危うさが堪りません。
序盤の中心はテツオ。刑務所を出所しますが何やら因縁を抱えています。無表情で前髪で目元を隠し、その抱く想いを隠しています。
彼はその想いを吐き出す為に過去に足を向けます。復讐。それは非常にストレートに暴力的に行われます。
しかし彼には祖母が居る。夫の帰りを楽しみにしている穏やかな祖母。テツオはそんな祖母を心から愛して居る。
中盤の中心はタケル。彼は朗らかで優しい。しかしその優しさの向こうには、また、過去を抱えている。その想いの為に毎日を生きている。
そしておそらく主役で、最もEXILE感を携えていないキャラクター、横山田ヒロシ。場末の演歌歌手である。
序盤からあまり話を紡がないくせに、非常にランタイムを使い、彼の下らないアイドルショーを見せられる。その描きは、如何にもなブラックジョークで、氷川きよしや韓国ドラマに飛び付いた叔母さん達の狂乱ぶりを、有りのままに優雅に滑稽に、そして醜悪に見せる。
結構な失笑です。おそらく「あるある、こんなだよね」と誰もが卑下さえするでしょう。が、しかし、その行く先は更なる狂気の世界でした。おぞましき「ミザリー」の世界。
芸能人が填まった絶対の危機!なのですが、不思議と笑えるのです。いえ、結構、良い感じ。更に更にと展開し、ヒロシの満を持しての"してやったり"が、何故か裏切りにさえ感じてしまう、悪への不可思議な同調感に複雑な気持ちにさせられます。
そして驚きの、感動さえ感じてしまうオチは「愛ってこんなに強いのね」と絶句です。
映像も展開もある意味、非常に刺激的で、"笑う"を超えてアートな仕上がりに驚かされます。
迎えるそれぞれの顛末は驚くほどの絡み具合と衝撃のものと成り、抽象的で余韻深い痕を残します。

日本では、映画を異空間に飛ばして何でも有りで成るようにしか成らない...そんな作品が多いけれど、今作は良くも悪くも地に足の着いた描き。先行きが、生きるも死ぬも有り得て分からず、目が離せませんでした。
ちゃんと勧善懲悪も有り、安心して観終えられるのも良かったです。
またみんな演技が上手い。脇役叔母さんまで非常に上手い。日本映画の未来を担うはSABU監督と劇団EXILEか?!と思うほどです。
また、20年前からSABU監督が拘る"走る"は走らないシーンさえ走っているようで、これまた見事でした。ずっと観てきたもの、SABU作品。
「うさぎドロップ」は途中断念しましたが...
主演横山田ヒロシ役に青柳翔。私、詳しくないので彼は劇団EXILEなのか分かりませんが、EXILEっぽい"らしさ"に欠く事が、逆に彼を良き役者に押し上げていると思います。
ちょっと、こ憎らしい逆上せ上がり芸能人を余裕で演じております。更に彼の顛末の見事さは、世の"誰かに焦がれる想い人"に勇気と希望を与えます。...ちょっと言い過ぎ。
テツオ役は鈴木伸之。彼はEXILE?でしょう。役に没頭して暴力パートを担います。そうなると如何にもEXILEっぽく成りそうですが、寡黙で怒りに目を輝かせながら、その一方で祖母を慕う優しさを全身から滲ませます。彼の顛末は"終わり""救い""お迎え"と言うところ。
タケル役は町田啓太。「女子的生活」でトランスジェンダー主人公の旧友を演じた彼です。
私、まあ切っ掛けは「女子的生活」なのですが、町田君を応援しております。
そんな彼の役回りは...残念ながらちょっと地味。誰よりも因果たっぷりな役どころなのですが、正直、存在感は薄いです。残念。彼の顛末はきちんと描かれませんが、映像から取るに、良い終わり方に思えます。
そんな三人の思いは直接的では無く、ただその場に居合わせた程度では有りますが、登場人物が状況に交錯し、思わぬところで真実を明かします。罪を背負った者達、そしてその罪に巻き込まれた者達の狂想曲は、突っ走り、思い巡らせその先に、彼等の悲痛な願いを叶えます。
叔母ちゃんパートは呆れるほど長く、一見、面倒臭いです。しかし終わってみれば一番、愛らしく、そして衝撃的な顛末に。
SABU監督は、行き過ぎた思いは"有るものだ"と受け入れ、その先を描こうとする包容力と想像力、"作り手の達観"を見せ付けます。

残念なのは録音状態。些細な音が台詞より大きい。幾つかの台詞は何度聞いても分かりませんでした。
ちょっとブラックジョークの時間配分が長過ぎる気はしますが、その呆れ具合も含めて、とても面白かったです。
最後に振り返るなら...やはりちょっとバイオレンスが過ぎるかなあ...


☆とうとう梅雨。穏やかな雨となるかと思いき、雨が冷たく、寒いです。
隙間を見て買い物と庭仕事をしていたら肩と腰を痛めてしまいました。張り切り過ぎました。腰って大事です。でもぎっくり腰では無いので、そこそこ動いて家事してます。
お陰で今まで以上にゲームに入り込み。
「Fallout New Vegas」はストーリー的に気持ちが上がらず、「スカイリム」に没頭中。
犬のミーコと相棒リディア、そして修道士ヴェルラスを連れて、広い山岳地帯をうろうろしています。
今は盗賊ギルドと魔法使いギルドをメインに"器用な魔女"への道を歩んでいます。
でも本当は庭に出たい。紫陽花と薔薇とラベンダーを挿し木して丁寧に手間をかけています。なかなか着かず枯れてしまったものも出ていますが、願いに応えてくれそうな子も出ています。非常に楽しみです。
でも庭は蚊が凄い。もう、たくさん刺されました。私、ずっと蚊に刺されると患部が腫れ上がりひどい有り様に成るんです。幼い頃の写真には包帯巻いてる私があちらこちらに。
でも女性ホルモン治療を行い始めてしばらく、昨年くらいからは、蚊などなんのその!
夏の庭仕事を満喫出来るように成りました。冬場はこれまた重症だった"しもやけ"がゼロに成り、地味ですが人生可能性が増して...のんびり暮らしてます。:p