あえて、お薦めしない映画。 | まりのブログ

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性同一性障害者の私が、思いのままに生きるために頑張って生きてます。
性別適合手術をしてから2年になりました。
私はトランスジェンダーとして誇りを持って生きてます

貯蓄も収入も無いけれど、国の支援も無いからさ、しんみり映画を観る日々よ。

正直、この映画、薦めてはいけないかもしれませんが、私の心に触れた?ので。
「クリティカル・ブロンド」
CIAエージェントのケリーは世界各地で計画されていたテロに纏わる捜査の際に傷付き、昏睡状態で帰還する。
彼の脳には重要な情報が記録されている。
妻のテスは彼からその情報を手に入れるべくコンタクトを取ろうとするが、ケリーの脳ではケリーの意識が迷走していた。
テスは何とか局内に裏切り者が居る事を知るが...
情報はどんな資産より価値がある。それはいつに成っても変わらない。テクノロジーが発達し過ぎた為に脳を利用した新たな情報管理と情報の収集を画策する組織とエージェントの話。
なのですが、まあ、驚くほど伝わらない。
更にテロだなんて壮大な話でも、映画を観ていて気付かないほど、情報が伝わってこない。さっぱりなのだ。
近未来テクノロジー感を出そうと映像を非常に凝った作りにして、サブリミナル?カットバック?無数の映像が入り交じり、更にデジタル的ノイズやハウリングをがんがん鳴らしてくる。難解な単語が羅列し、複雑な理論や理屈をひけらかす。わざわざ画質を落として見せるデジタル世界。しかしそんな意図した低級表現も、映画の質を落としているようにしか感じられない。
また、ケリーがデータを視覚化した風景の中を縦横無尽に走り回るのだけれど、ケリーの背景では常に違う国や違う場所の風景が切り替わり、また、ケリーがそんな混乱を体現するかのように倒れ、転がり、嘆き捲るシーンを幾度と無く見せられます。
更に意味ありげな無数のサブリミナル風イメージ映像が繰り返し挟まれ、またもやノイズとハウリングが混乱を煽ります。
これ、コンピューターの多重処理やそのラグ、そしてエラーを描いているのだと思います。例えばAと言うデータを中国、Bと言うデータをイタリアとして、そのAデータは途中で壊れていて、終わらずにBデータに繋がっているとします。そしてデータを共有するプログラムが中国、すなわちAデータを読み込んで(歩いて)いると途中からイタリアに来てしまうと言う訳ですね。
それを何重に、それもハイスピードで映像にすると...非常に疲れる映像に成るわけです。
お陰でキャラが、"流れる映像から必要な情報を探る"なんてものを映像にしてみても、起こっていること、キャラが知ったことが、こちらにビビッドに伝わってくる筈もありません。これでは観ている方は退屈するか呆れてしまう。何故?こんな表現をするの?と頭を傾げるばかりです。
私、頑張って観ましたが、一見、理解は難しい。何度も口にだして復習し、理解の整理が必要でした。
ただ、情報パニック気味ながら、雰囲気作りだけは満点。ゲーム級ながらSF特有の非現実感は視覚的に有り、更に世界各地の美しい映像がふんだんに切り貼りされて刺激的です。
抽象映像を用い、生命の始まりから誕生、成長、時に進化までもを描いたテレンス・マリックやスタンリー・キューブリックのように、新しい表現の域に誘おうと試したならば、成否にかかわらずそれはそれなのかもしれない。
...ただ、やはり微妙なのだ。
例えば、ミュージックビデオのカットバックは非常に巧みだが、歌が念仏だった...みたいな印象なのだ。とてもハイセンスで良き近未来感は非常に魅力なのだけど、ビートが地味すぎる。
無念。
目立つキャラは物語の導き手であるヒロイン。「Gree」「アイアム・ナンバー4」のディアナ・アグロンは綺麗で魅力的ですが、元々、あまり豊かな表現が得意では無いので、観客の気持ちを投影せず、惹き付けてくれません。
アンディ・ガルシアも他の俳優たちも存在感に弱く、物語を牽引しません。
一時間半のランタイムは確実に長く、苦痛さえも感じ、当然、お薦め出来る筈がない。
ですが、やはり、このハイセンスはすごい。作り手の頭の中の暴走する"描きたい意識"が脳髄を揺さぶるくらい強烈なのだ。再見し、柔軟なキャパシティと頭を巡らし辿り着いた読み解きを用意しても、付いていくのが辛い...
なのに、どうしても捨て置けない意欲の力に満ちている。
迷宮に迷い込んで、道どころか自分さえも分からなくなったエージェント。その先に救いとして待っていたのは、ごくシンプルな想いと記憶だった...そんな愛らしさも遺すオチは非常に洒落ている。
そう。結局は脳をハードディスクとして使用してそこにエラーやウィルストラブルが起こってしまうと苦痛(まともに記憶(データ)が繋がらないジレンマ)が残る。戦ってもさ迷っても逃げても心を潰しても、命の危機は終わらず、データは答えを見出だせない。ケリーの悲鳴だけが永遠に響き渡る。それも潰えようとしている。
そんな宿主を導いたのは記憶だった。それも愛の記憶。
更なるオチも有り、観客もケリーと共に倒れ、転がりそうになりますが、VR的新世代映画は、まだ私達には早すぎたかもしれない、そんな挑戦的映画でした。
これは失敗作。
しかし、予算と才能が足りて映画に活かせていたら、素晴らしい作品にも成り得たのではないか?と、意外にも心を掴んで痕を残しました。
ただ、やはり薦められない。もうハウリングは耳をつんざくし、現実映像はチープ。脳内映像は混乱必至。でも。一度受け入れられたら、脳髄に響く衝撃度。スゴいです。:p
改め。全くお薦めはしていません。


お薦めされてしまうと、見なくてもいい粗が見えてしまうものなので、こちらもお薦め無しと言う事で。:p
こんな題名ですしね。
「エアポート2018」
ロサンゼルス発ニューヨーク着の飛行機は雷雲を横目に飛んでいる。飛行は順調。
問題は、ある乗客が嵐を恐れているくらい。
そして彼は窓の外に人の姿を見る。狂乱状態に陥った彼を何とか取り抑えるが、それを機に、小さな不可思議な現象が乗客たちを襲い始める。
原題は「Flight 666」666にイメージする如何にもな映画ですが、悪魔は関係有りません。666便だったのかな?
原題、邦題共に安易なタイトルですし、危惧は捨てられないアサイラム製作なのですが、なんと驚くほど脚本が緻密で見応えあり。概ねアサイラムとは思えません。
映像も非常に良く撮れていて、音楽もいい。状況に合わせて気持ち良く煽ってくれます。
航空パニックでは無くオカルトとは言え、緊張感は上々で、迫る恐怖にドキドキが止まりません。
オープニングで見せられた殺人事件は?幽霊は何を伝えたい?電気系統の異常は?
更に食料に虫がわき、扉が開かなくなり...そんな異常事態が積み重ねられる。
疑心案義は乗客を不安に苛み、機長らまでも事態を危ぶむ。事態は更に更にと怪奇的にピースを揃え、序盤のミステリーが徐々に真実を露にしていく。
上手い。映画「パラダイム」や「ザ・リング」などにある摩訶不思議な扉を開いてしまった...そんな恐怖感もよく出ている。飛行機の上で窓の外に霊が!なんてシーンは「トライライト・ゾーン」のようです。
一見異常で、厄介にこそ見えていた人達が次々と理性的に見えたり、そのまた逆も上手い。疑いは私達にも感染し、気付けば同乗者のひとりに成って事態を見守ります。
登場人物それぞれが"らしい"台詞を適切に吐き、あの人ならこう言うだろう、こうするだろうにきちんと答えてくる。みんななかなかの行動派で、事態には誰かが向き合うし、立ち向かうし、小さな小競り合いには誰かが理性的に間に入る。
迫る恐怖に気付く者、気付けない者...それらが次第に彼等の意識を纏めて行く。
そして現れた死者。
イヤホン、トイレのドア錠、鏡も恐怖のアイテム。
何が起こるか分からない未知の恐怖は70~80年代のホラーのよう。先行きの読めない綴りは非常に惹き付けます。
乗客らが、揉めながらも一丸と成って行く姿は非常に素晴らしかったです。そうして始まる謎解きもとても見応えが有り、目が離せません。
着地点も見事。映像もVFXもメイクも素晴らしい。スタッフキャスト全員が与えられた仕事を全力で挑んだかのように非常にクオリティが高いのです。テンポも良く、ノンストップで繰り広げられるスリリングな展開は不条理な殺戮ホラーとは一線を画すもの。
追い詰められゴースト系ホラーの鏡のような映画でした。
アサイラム、見直しました。映画は予算じゃないのだ。


ようやく「キャプテン・マーベル」も観ました。
主演が私のお気に俳優ブリー・ラーソンですもの、間違い無しでした。
監督に共同で女性が入っているからか、アクションより描きに気持ちが入りすぎているようで、少々盛り上げ方に欠いた気がしなくもありません。しかし、お陰でかキャラクター造形が素晴らしい。活き活きとした女性たちが画面を堂々と闊歩しています。
台詞にしろ立ち振舞いにしろ、まさに女性。男性を前にした女性で無く、そこに在る"女性"を見た気がしました。ハリウッドのウーマンリブがようやく形を成し始めたように思えます。
作品も面白かったです。ブリーがあの顎エラを遺憾無く発揮し...また可愛らしい表現をたっぷり魅せて頂きました。
ですが、ちょっとひと押しが足りないような気もします。"閉め"が足らないのかな?
悪を倒して感動のハグ~みたいな閉めを観たいのかも。最近のヒーローもの全般に言えるけれど、悪はカリスマに欠き、野望の規模の割りに世界の不安は限定的で、故に達成感に欠きます。だからこそ「アベンジャーズ、エンドゲーム」が面白く満足に至ったのはスケールだけでは無く、きちんと話を終わらせたからではないか?巨悪が倒れ、救われた者の歓喜を感じる事が出来たからではないか?報われない孤独なヒーローの背中に哀愁を見、ささやかな愛や信頼の育みに暖かい気持ちに成ったから。
とは言え、それらが無い訳ではない。足りないだけ。だから満足はする。更にスリリングさや駆け引き、カタルシスの解放をも楽しめる。
しかし、やはり巨悪を倒して欲しい。
「マイティソー、バトル・ロワイアル」も「キャプテンアメリカ、シビルウォー」も「ガーディアン・オブ・ギャラクシー、リミックス」にしても達成感に弱い。新しい「スパイダーマン」なんてカタルシスすら無い。
とは言え、映像は非常に素晴らしいし、アクションの興奮は驚くほど高い。キャラはグッズが欲しくなるほど魅力的ですし、映画は何度観ても楽しめる。
でも...いつの間にか贅沢に成ってしまった。これだけのものを心から「楽しい」と言えなくなってしまった。
「アベンジャーズ」は確かに面白い。観てお腹いっぱいになる。でも心の充実感と素晴らしい情熱に出会えた嬉しさは良きB映画には敵わない、と、私は思ってしまっています。それもやっぱり「エアポート2018」のせいです。「ロサンゼルス女子刑務所」のせいです。:p「鮫の惑星、海戦記」や「ジュラシックサバイブ」のせいです。
資金が無いからと代わりに注ぎ込んだ、有り余る情熱が、あまりに煌めいているせいです。
B映画こそ巨悪など倒してないし、戦いは明日に続く!とやりがちです。でも、いえ、だからこそ、2時間半ものランタイムを稼ぐ大作までそれじゃ、満足足りません。
スカッと終わらせましょう。悪を倒して善悪を語り、キメ台詞を吐いて欲しいのです。
よろしく、ハリウッド。


☆1月1日の事故による打ち身はようやく痛みを感じなくなり...おそらく大丈夫、か...な?
まだ、肩に荷物を掛けると2日ほど首から肩にかけて張りがキツく、悶えます。
でも、何とかやっています。あれこれ大変な時期ですが、変わらず毎日、歩いています。
筍食べてます。春の旬を楽しんでいます。ストレスなんて溜めません。