こんな時こそ映画でしょ。 | まりのブログ

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性同一性障害者の私が、思いのままに生きるために頑張って生きてます。
性別適合手術をしてから2年になりました。
私はトランスジェンダーとして誇りを持って生きてます

遥か以前「プレイグ」と言うフランス映画を観ました。パリの地下水道にネズミが大発生してペストが再燃する、そんな話でした。
おそらくカミュの「ペスト」が原作だと思うのですが、深い人間描写が素晴らしく、戒厳令や対策、そして人々の閉塞感と感染による絶望感を丁寧に描き、地味な展開では有りましたが、好きな映画でした。
しかしそれ以上に心から消えないのはエドガー・アラン・ポーの短編小説「赤死病の仮面」です。
巷では赤死病が蔓延していたが、城内では貴族による宴が毎晩のように催されていた。
ふと謎の人影を見る者が。それも日増しに増えていきます。恐れを抱いた城主はその者を捜し、追い詰め、顔を見ようとします。
するとその者は赤死病の仮面を着けていた。
...死の影は何処にでも忍び込む。死に分け隔ては無い。人よ、おごるなかれ...そうこの作品は訴える。
日本の芸能で働くある方が「まさか私がこんなことに。今でも信じられない」と公で語りました。私はそんな時、この「赤死病の仮面」を思い出します。
善き本を読もう。そして記憶の引き出しにいつでも出せるようにしておきたい。そう思います。

そんな世の危機をひと時忘れ、癒す作品は
「名探偵ピカチュウ」
ティムは周囲との人間関係に馴染めない性格。友ともポケモンとも波長が合わない。
ある日、父が亡くなったとの報せを受ける。
ティムは一路シティへ。そこでRと言う薬を吸ってしまう。そしてティムの前に現れたのは、探偵気取りのピカチュウだった。
更に、何故かティムにはピカチュウの声が聞こえた。
参りました。ピカチュウ...可愛すぎます。もうそれに尽きます。オヤジ声でも構いません。おでこにシワを寄せていても構いません。やられてヘタって、悄気て無理して、友情振り撒いて...堪んない。
ディズニーアニメ「ベイマックス」を観た時みたいな、溢れる愛らしさにやられてしまいました。どちらも日本エッセンスがびんびん来た作品でしたね。
改め。「名探偵ピカチュウ」最高でした。
子供向けなのは確かですが、日本のアニメの綴り方が、アメリカなどのアニメに比べて大人びているように、今作もそう。ティムの、丁寧に紡がれるお父さんへの悔やみのドラマとピカチュウとの関係、そして謎のポケモン・ミュウツー、そこに記者志望の女の子が絡み...あれ?何と無く「ミュータント・タートルズ」みたい?
話の進め方は王道です。
私のポケモンの知識は低いのですが、それでもボールを投げてポケモンをゲットだぜ!とのノリとその先のポケモンとのパートナーシップ、そのくらいの知識で充分楽しめます。
子供向けと言いながら話はなかなかしっかり。父の死。父にシティに誘われた時に断ってしまった息子の悔やみ。謎の薬Rに纏わる利権と野望。伝説のポケモン・ミュウツーがしたこと...
そこに現れた記憶の無いピカチュウ。
ティムとピカチュウが捜査を始めると、次々に露になって来る真実は、思わぬもので、父の死は殺されたのだと知ります。
それはある画策と共に主人公たちだけならずシティ全体の問題に成っていきます。
...その間、まあ、ポケモンが可愛い(*≧з≦)
ピカチュウだけじゃなく、どろどろ、きいきい、くにゃくにゃ、そんなポケモン達にも愛嬌があって堪りません。
話はやはりミュウツーに集約します。
アクションが派手すぎて、意外にも戦いの中でミュウツーの因果を忘れてしまうほどでは有りますが、ミュウツーの本意が物語の最後のピースを埋めて、終局を迎えます。
負けるなピカチュウ、挫けるなピカチュウ、それは世界のため、そしてティムのため。
実は意外にもディズニー級の愛の物語なのでした。なにも考えず、先読みもせず、流れのままに「きゃあきゃあ」言いながら観られるポップコーンムービーです。
更にVFXは見事。ポケモンは本当にそこに居るみたい。アクションは街全体を縦横無尽に走り回り飛び回ります。
シティを発展させた財閥に「アンダーワールド」等の名優ビル・ナイ、さっぱり活躍しない刑事役に渡辺謙。ピカチュウの声に「デッドプール」のライアン・レイノルズと豪華。
「デッド」並みのオヤジ声に「え~」とお思いでしょうが、実はちょっと意味あり。
終わってスカッとした気分に成りますヨ。


そしてもう一作。
「500ページの夢の束」
ウェンディは思いを上手く伝えられない子。たったひとりの家族、姉のオードリーの元を離れて障害者の為の自立支援所で生活している。
彼女のしたいこと。
それは姉と暮らしたい。姪のルビーを抱きたい。そして大好きなスタートレック脚本コンテストに応募すること。
この映画。私は共感があまりに強く、映画を観ながら、そして終わっても、湧き出ようとするたくさんの言葉を吐き出さないと泣いてしまいそうなほどでした。
感動作では有りません。冷静に人を観察しながら生きている人には、ウェンディを「現実を見て」と冷めた目で見るかもしれない。
実は私もそうでした。でも。
あえてウェンディの障害を、映画はこれだと断定はしていません。少なからず社会の中で上手く環境を受け入れていけず、時にパニックを起こしてしまう障害と描きます。それでもウェンディは、彼女なりに社会に出て、狭く、安全を極力保持した世界では、楽しく、洋々と生きています。ただ、それも、終わりが来ると知っている。いえ、終わりが来るのだと信じている。
姉が迎えに来て、姪の居る家にいつかは帰る。
そんなある日に知った、大好きなテレビ番組"スタートレック"の脚本コンテストの話。
彼女は必死で書き綴ります。まさに彼女の魂を込めた脚本は427ページにも至り、満足を胸に、脚本締め切りの日を前にします。
が、気付いてしまう。今日は週末だ。郵便は止まっている。このままでは週末明けに送っても締め切りまでに届かない。
彼女は早朝にホームを飛び出していく。同行者は犬のピート。目的地はロサンゼルス、パラマウントピクチャーズ。
遥か数百キロの見知らぬ世界への第一歩。これは狭い世界で生きてきた少女が初めて自分で選び、自分らしくあり続けた勇気の旅となる。
筈でしたが、彼女はそこで良い縁と悪い縁に苛まれます。なかなか辿り着けない旅は何度も彼女に「無理」を叩き付ける。しかし、彼女は諦めない。
無数の障害を交わし、ロサンゼルスへと足を止めない。
まるでワープのよう。彼女にはそう見えているかも?私には見えちゃいました。:p
悪き縁。幼子=夢のひとつ、姪っ子なのですが、彼女は抱く事を躊躇います。
そして酷い事態に。
この縁は幾つかの良き縁の最大の縁。
手配書を見て、後ろの女性警官はねじ伏せてでも保護する勢いなのですが、彼はある言語を使って接触を試みます。
「スタートレック」好きなら分かりますよね?

私は"障害"と"害"の漢字を使う。世間では障害者の"害"の字を"がい"に変えようと努めています。しかし、そんなものは平仮名に成ろうと意味は変わりません。それにもともと意味など無いのです。
この映画を観ればわかる。ウェンディは自らの世界を誰よりも真っ直ぐに生きている。そんな彼女の歩みを妨げるものこそ、障害そのものだ。
当然、ウェンディら障害を抱える者たちは何もかもをこなせる訳では無い。でも何かを為す時に誰かの手を借りたい、そして借りたらもっと上手く出来るのは誰とも変わらない。ただちょっとコミュニケーションが苦手で世界を知らないだけ。
ウェンディのしたいこと。
脚本を届けたい。姪を抱き締めたい。姉と暮らしたい。誰とも変わらない願い。
たくさんのマイノリティもそうであるように、人はみんな単純な願いを抱いている。そう逸脱していない。それが誰かを傷付けることもそう無い。
この映画は社会的に言う"障害"と言うものが、難しさはあろうものの、大した事では無いと知らしめる。
そして"障害"とは彼女の行く道を遮る人の思惑や決まりごと、そして偏見(思い込み)だと描かれる。
支援所の責任者とその息子サムの話もこの作品を豊かに広げます。
他にもウェンディに好意を感じる青年やささやかに手を差し伸べる人達の気持ちが、ウェンディの背中を支えます。

この映画は、姉オードリーのウェンディを生活の中に受け入れる苦痛も描いています。しかし、自分にもある希望や辛い時に振り返る記憶、そしてほっとする喜びの中には、ウェンディの姿が有れば最上の幸せだと知っている。
愛や労りが人を救い、それは自分をも救うとオードリーの決断は物語る。
映画は困難の先に、500ページまでの"73ページ"が描かれる。
どれだけの苦難でも、それを乗り越えたり受け入れたりした先には、必ず素晴らしいエンディングが待っているのだとこの映画は語る。人よ、旅をせよ、経験せよと誘う。
いいえ。それどころか、旅は終わらない。また新しい旅が始まる。書き続けて欲しいと私達に投げ掛ける。
主演はダコタ・ファニング。
「アイアム・サム」で鮮烈な印象を焼き付けた女の子。私は、主演のブリタニー・マーフィの輝きに負けては居ましたが、親の愛に飢えた我が儘娘を演じた「アップタウン・ガールズ」や未来を予知する超能力者を演じた「PUSH」が好きでした。最近も実は頑張っていたのですが、目が出ず、今作もヒットとは行きませんでしたが、評価は高いです。
監督は「セッション」の監督さんだそうです。あんな重厚でパワフルな作品を撮る人がこんなに優しい映画を撮るなんて驚きです。
「スタートレック」が鍵として描かれますが、スタートレック愛に満ちた作品とは言えず、ベタなファンはちょっとガッカリするかも。
ですが、等身大の明日に悩む若者の青春映画ですので、"スタートレックはこんなにも人を導く"と言う寓話のような物語を味わってみてください。
私は、非常に幸せな気持ちに成りました。


☆どちらもシンプルな映画なのであまり書きませんでしたが、時間を楽しみたいなら「名探偵ピカチュウ」は最適です。子供心をいっぱいに瞬間を楽しめる筈です。
ちょっと人生を見詰め直したい方は「500ページの夢の束」はあなたの心の隙間を埋めるかもしれません。
私は隙間にしっかり詰め込みました。

桜もおおよそ終わりましたね。街は新緑に包まれています。これからはツツジに紫陽花。
まだまだ楽しみです。
デコっぱち。ルーズライフしています。

コロナウィルスで一番困るのはホルモンを補う薬が入手困難に成ることです。女性ホルモンが崩れるとあれこれ手につかなく成るので、残数をよく見ておかなくてはいけません。(。>д<)。