寒いです。コタツ出しといて良かった~。
雨が降るといっそう寒いです。
私は更に、この週末、ホルモントラブルで頭がくらくらに。
分かる人は分かる衣装だったりして。
今、あるドラマを観ています。
「石の繭、殺人分析班」です。原作は麻見和史。
如月塔子は捜査一課に配属された。彼女は刑事であった亡き父の面影を胸に抱いていた。
そんなある日、殺人事件が起こる。被害者が石膏詰めにされる猟奇事件だった。
更にトレミーと名乗る犯人から第二の犯行の予告とも言える電話が入る。
はあ...私、溜め息を吐きました。
これ、すごく良いです。
ある、父に纏わる記憶を抱えた新米刑事が、事件の中で刑事として強くなって行く姿を描いています。物の見方を学び、直感を信じ、仲間の有りがたみを力に変えていきます。
そして最大の不安材料であり力でもある"父"と言う存在の重荷を払い、自らのものにして行きます。
サスペンス?いえ、ドラマです。
この作品に欠点を言うなら、さほど観客に推理の介入を与えないくらいでしょう。次から次へと起こるトレミーの挑戦には尽く、負けていきます。しかし、その敗北の中に、過去の事件に纏わる"動機"を暴いていくのが、語りの妙となるわけです。
また、その合間に挟まれた刑事たちのドラマがとても面白い。対策本部に布団を敷いていたり、捜査中の様々な生活感が散見され、労りやけしかけ、中傷、そして激励の言葉が飛び交い、豊かな会話が繰り広げられます。それらが魅力的にドラマを彩ります。溜まり場のカフェやカツ丼さえ愛らしく扱われます。
全ての登場人物が人間らしく存在し、そのひと言ひと言が塔子の心に流れ、彼女の行動に響きます。それは躊躇いや怯えを生み、時には勇気や負けん気を奮起させる事も有ります。
そんな様が、とても素敵でした。事件より面白い。
中盤からは日常は当たり前に成り、真実を露にし始める"事件"が、盛り上がって行きます。
捜査が犯人の思惑と追いつ抜かれつとなるものでは無いので、不評も少なくないのですが、故の人のドラマが活かされています。挫ければ支える者が居て、しかしその挫けている姿を叱咤する者が居て、嫌みを言う者が居れば、戒める言葉が上がり、因果を胸に苦しむ者も居る。
しかし彼らは刑事だ。だから、足を止める事は無い。でも、戦いの中で感情が乱され、犯行動機を読み取ろうとすればするだけ迷いが過る。
しかし彼らは言う。「俺達は刑事だ。過去なんて関係無い。今の事件を解決するだけだ」
よく有りがちな単独行動では無く、特捜部の"部"の戦いが爽快に描かれます。
如月塔子役に木村文乃。私、あまり好きな子では無かったのですが、今作でのルーキーの頼り無さと、直感、そして時に見せる弱点とも成り得る察する思いはとても魅力に溢れていました。気持ちよくドラマを楽しませていただきました。
ちょっと傾いたような立ち方、乱れた髪、口ごもり、溜め息...その全てが心を語っているようで、強く親近感を高めさせられました。
相棒となる刑事、鷹野秀昭を演じたのは青木崇高。口を一文字に紡ぎ、睨み眼で威圧するような彼。いつも人を見て、話を聞き、その心を読み察しているようで、鷹野の人物像が伝わり、素敵でした。
時に厳しく、時に優しく。
他のチームの先輩刑事役の方達も的確、適度以上の演技を披露。上司役の段田安則、渡辺いっけいも良い演技を見せてくれました。
事件は残酷に描かれます。塔子が悲鳴をあげるほど陰惨な時も。しかしその残酷性は人の痛みを体現する力と成っています。
犯人の苦痛。塔子の苦痛。それが絡み、交錯して、事件を結します。
アクションは少なめ。台詞や回想シーンも多く、しかし、テンポはとても良く、とても面白かったです。
脚本が良く台詞が豊かなので、退屈する事が有りません。それが更にテンポを引き上げます。
それに、計算し、見映えに拘った数々の素晴らしいカット割りは見応え有ります。不足の無い素晴らしい演出も見所です。
犯人は誰か?と言うドラマでは無く、犯行の動機に秘められた真実を読み解き、更なる真実を導き出す、そんな作品です。
今、続編の「水晶の鼓動」を観ています。
こちらは爆弾テロなんて件になっており、ちょっと派手。更に前作から引き摺るトラウマが塔子を苛み、ドラマ性は上がりながらも、サスペンスとしての爽快感が萎えてます。第三話あたりは今更のミスが続き「もう新人じゃないでしょうに!」と突っ込みたいほど。
ただし、捜査官の事情を描くなど、人間性は更に高まり、仲間の連携が上がっているので愛着はたっぷりです。
第三作「蝶の力学」も放映が始まりました。すごく楽しみです。
その合間に番外編「悪の波動」も有り、そちらは既に視聴しましたが、描かれたのは第一作に続くエピソード0.5で、出来はまあまあですが、第一作を観てから思うは"無常の悲しみ"...悪の坩堝に堕ちた青年の苦悩を描きます。
そして。断っておきます。こちらはお薦めしません。
「マンディ、地獄のロード・ウォリアー」
ベルギーの映画ですが、主演はニコラス・ケイジ。
レッドは愛する妻マンディと密やかに暮らしていた。ある日、カルト集団に目を付けられたマンディ。
カルト集団は闇の一団を呼び寄せ、レッドとマンディを拉致する。
カルトの教祖は、自らの思い通りに成らないマンディをレッドの前で陰惨な方法で殺害する。
見棄てられたレッドは何とか拘束を解き、友人のもとを訪ねる。そして預けたボウガンを受け取り、そして怒りのままに武器を鋳造する。そして、車を駆り、奴等を捜し出す。
話はメル・ギブソンの「マッドマックス」と変わりません。単純明快、復讐劇。概ね、展開に捻り無く裏切りません。
映像には殺伐とした近未来や世紀末の趣きは無く、とても豊かな森林地帯を背景に非常に美しく撮られています。ただ撮るままでは無く加工も多様に使われ、この世のものとは思えないような美しく、時に不気味で、時に妖しき予感を漂わせる映像となっています。全体的に赤を多用し、感情の高まりか、鮮血の隠喩か、私達の心を乱すような緊張感を醸します。
闇の一団。「ヘルレイザー」の導師みたい。正体不明で気味が悪いです。
登場人物の誰もが感情を秘めたように淡々と演じます。助長するように語りも淡々。
非常に退屈に綴られます。1.5倍速で観てもさっぱり損なう事なく楽しめます。...いえ、等速では辛いかもしれない。著しく映画のテンポが悪いです。
ですが、リモコンを手にする度、不思議な魅力に気付かされる筈です。
私はそう。「つまらない...でも、見届けたい...」そんなジレンマに駆られてなりませんでした。
淡々とした、緩く、神秘性すら感じる長閑な夫婦の時は、気味悪いカルト集団によって打ち崩されてしまいます。それは凄まじく残酷で、血と暴虐さに満ちています。
あからさまにグロを見せつける訳では無く、動きや吐息、噛み締める悔しさ、声無き悲鳴、そして溢れる感情のたぎりが、次第に強い怒りと成って大地を踏みしめます。
そうなったら止められない。
ニコラス・ケイジの真骨頂!目をひんむいて叫び、爆発する感情を叩き付け、降り注ぐ鮮血の中を突き進みます。進み始めた歩足は躊躇う事は無く、留まる事を知らず、悪魔を戒める為には己を悪魔にしなければ成らない。
壮絶です。おぞましいです。
しかし、不思議と美しい。
...そして、絶望しか残りません。
私達はレッドと共に、極彩色の悪夢の中に堕ち、そして狂気と甘美の地獄で、心の一部が解き放たれる"音"を聞くことでしょう。
監督はパノス・コスマトス。「ランボー怒りの脱出」や「リバイアサン」で知られるジョージ・P・コスマトス監督の息子さん。知る人は「カサンドラ・クロス」や「オフサイド7」でしょうか。
テンポの良いエンターテイメント映画に定評のあるコスマトス監督の息子さんは、極アーティスト性質でした。
それも闇体質。
お陰で私の闇特性がふつふつと湧いて来てしまいました。
主演ニコラス・ケイジ以外はベルギーの俳優さんなのでしょう。ニックが浮いてしまう事は無く、彼が導きを上げ、映画の柱と成っています。
最近のニックはブラックジョークのような作品が多かったので、今作のような「救命士」に立ち返る魂までさらけ出すような狂気の演技は圧倒的でした。
始まりの言葉のクレジットに"キングクリムゾン"の名があり、私は詳しくは知りませんが、名前だけは伝説のように聞くほどの有名バンド。おそらくアートコンセプトは、その"キングクリムゾン"のセンスなのかと思います。
全編に渡り、衣装から音楽から80年代あたりの雰囲気が漂います。そして星や神話の話を絡め、不思議な神秘性を醸しています。
そこは神の世界を空に、大地は真紅の地獄の色で染め上げられているようでした。
絶対にお薦めしません。ですが、映画史に残る最低の映画として記憶される事でしょう。
最高の悪夢でした。
☆今、TV ドラマ「おっさんずラブ、in the sky 」に填まってます。愛らしい"おっさん"達が抑えられない愛に悶える姿を軽妙に痛快に描きます。
新人CAに成った春ちゃんが機長に好意を抱かれ、更に数々の想いが交錯し、思わぬ視線や恋の欠片に春ちゃんが困惑、動揺、奮闘する姿を描きます。
実は今、放映されているのは第二作。私、前作は見逃してしまったままなんですよね~。
でもこの第二作が面白くて面白くて、毎週楽しみにしています。
この作品の素晴らしいのは、愛は性別に関わらず在ることが前提なこと。当たり前の世界でも無く異性を愛するかたちは往々にして在り、でも同性への愛を、有り得ない...や異質と言う視点が無い事です。
世界でここまで溶け込んだ同性愛の描き方は無かったと思います。
LGBTに対して理解の低いと言われるこの日本が、世界に先駆けて作り出したLGBTドラマに称賛と歓喜を贈りたいと思います。
いいえ。LGBTだなんて言う事こそ、"差別"なんてかたちを生み出してしまうのだと痛感させられます。
愛を語る全ての人達に勇気を与える、素晴らしき作品でありました。愛などいつも、そして全て勘違いと労りの向こうにあるもの。悶えよ、苦しめよ。さすれば与えられ...ん?
手前に引かない主人公、春ちゃんの悪戦苦闘が楽しみで成りません。
春ちゃんこと春田創一役の田中圭君は決して名演はしていませんが、彼の彼らしさが活きた配役で良いです。
黒澤機長役の古田鋼太郎さんも最高です。
千葉雄大君、戸次重幸君も良い演技してます。
男たちの清々しい愛のかたち。素敵です。それに何しろ、たっぷり、笑えます♪
元気をくれる、今、最高のカンフル剤です。