【納税通信全24回連載】拝啓固定資産税殿第20回「2項道路のセットバック部はゼロ評価にすべき」 | トミー稲垣のブログ

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こんにちは。

トミー稲垣です!  

 

 

本日は、納税通信 全24回連載シリーズの20回目をお届けします。  

 

 

今回はセットバック部分に対しての評価について取り上げます。

 

 

 

早速どうぞ!

 

 

 

【納税通信 全24回連載】

 

~拝啓 固定資産税 殿~

 

●第20回●

 

2項道路のセットバック部分は『ゼロ評価』にすべき」

 

(2016年9月5日掲載 )

 

 

 

日本には、いたる所に沢山の道路がある。表通りは別にして、かなり狭い道幅のところがあるのは、何故だろうか?

 

昔は自動車もなく、道路を通るのは、歩く人と人や馬が引く手車(大八車)がせいぜいで、道幅はそんなに広い必要がなかった。やがて交通手段として自動車が使われるような時代がやって来て、「道路もある程度の最低幅員が必要」と感じる時代がやってきた。

 

歴史的に見ると、建築基準法の前身にあたる「市街地建築物法(大正8年4月5日法律第37号)」では、9尺(約2.7m)以上の道に面していることが最低条件とされていた。  

そして、1938年(昭和13年)の法改正では、原則4m以上と改正されたが、第2次世界大戦後、建築基準法の制定当時、既に市街化が進んでいる地域では、4m未満の道が数多く存在する状態であった。

 

建築基準法の第422項道路に指定することにより、道路中心線から2mの敷地部分には建築物を建築できなくなるから、建築物の立て替えの際に、順次2項道路両側の建築物が後退し、いずれ4m幅の道が確保されると想定されていた。道路後退の具体的な考え方は、4m未満の道の中心から、それぞれ2m後退したところを道路境界とするものである。例えば3mの道路なら、中心より2mのところは、敷地の50cm入ったところまでが、道路(予定地)となる。この道路となる部分のことを『セットバック』という。

 

つまり、そのセットバック部分は、保有していても建築面積として参入されない。いわゆる経済的交換価値のない「資産価値ゼロ」の土地である。

 

固定資産税の評価の場合について、実情はどうなっているだろうか?仮に、すでにセットバックして家を建てている場合でも、土地所有者が税務課へ申請してはじめて、翌年から非課税になる。地方税法では「最低1年に1回、現地を見に行って評価し、課税すること。」となっているのに、セットバック部分の申請を認めると税収が減るため、課税庁側が一方的に課税する「賦課課税方式」と言っておきながら、とぼけて違法行為をしている。簡単に言うと、毎年現地を見に行ってない証拠である。ちなみに埼玉県新座市事件の場合、27年間も現地を見ないで過大徴収した。  

筆者が所有している渋谷区の土地は、セットバック部分のコンクリート床面に、表面劣化防止の為ペンキを塗ったのだが、たまたま現地に来て、それを見た評価職員が『私権を主張している』と言って非課税を取り消し、敷地と同じ課税扱いにされた。

 

セットバック部分の犬走りのコンクリート床面は、365日風雨にさらされているので、何もしないと劣化してボロボロになることを税務課の評価員はわかっていない。

 

ボロボロになっても、決して役所が補修してきれいにすることはしない。

 

コンクリートでできた橋の表面にクラックが生じ、その部分から内部に水が入り、中の鉄筋を腐食膨張させ、コンクリートが剥がれ落ち、災害時には、橋はくずれ落ちてしまうのである。役所は、我々の税金で作った公共施設を、いかにしたら長持ちさせるかを考えていない。

 

コンクリートの劣化を防ぐために、自分の費用でペンキを塗ったことを『私権を主張している』などと言って増税するなど、もってのほかである。

 

筆者の知人が世田谷区に貸家を建てているが、2項道路のため、セットバックしている。  

その部分の床面に「タイルを張っているので非課税にはならない」という。「渋谷区ではタイルをセットバック部分に張ってあっても非課税になりますよ」と反論したら、何とその世田谷都税事務所の女性係長は、声高に「世田谷と渋谷では、違いますよ」と、いきり立って発言をして、セットバックとしての評価を認めなかった。

 

東京23区の場合は、東京都主税局が課税主体であり、各区にある都税事務所は単なる出先機関にすぎない。その出張所的存在の見解が統一していない状態で、一方的に課税している固定資産税・都市計画税は、実にいい加減な税金である。

 

最近、2項道路に面している土地に家を新築した場合、セットバック部分を半ば強制的に役所に寄付をさせる例が多く見られる。土地所有者は、「その寄付した部分が非課税となるので、減税」と思っていると…、寄付することにより道路幅員が広くなり、路線価が上がり、家が建っている敷地の税額が上がり、かえって増税となってしまうので、注意が必要である。

 

国税の場合、セットバック部分の評価をどう考えているか?  

『財産評価基本通達』(相続税法における財産の評価方法に関する通達で、国税においては、法律並みの拘束力を持つ)によれば、セットバックが完了していない場合は、通常通り算出した評価額から「70%相当額を控除」して評価する。

 

もちろんセットバック完了後には「ゼロ評価」となる。

 

同じセットバックについての評価でも、財務省(相続税)、総務省(固定資産税・都市計画税)と、国の役所によって評価が異なるのは、おかしい。そもそも「セットバックをした土地は、家を建ててはいけない」という国が決めた建築基準法による、“私有財産の強制制限”である。  

「家が建てられない」ということは、土地の売買においても「資産価値ゼロ円」。経済的交換価値ゼロのセットバック部分の土地は、現状がどの様なものであっても、国税も地方税も「評価ゼロ」とすべきである。

 

 

 

<第20回・おわり>