私は、むかし、短い夏という言葉が大好きだった。

いつのまにか、夏はどんどん長くなり、

私は、いつか、短い夏を忘れそうになる。

でも、短い夏という言葉が、まるで、悲しい呪文のように、

なり響いた年があった。

世界が悲しみにくれるとき、夏もまた短ったことを、

わたしは、遠い遠い記憶のなかに、おもい浮かべている。

こんなにも夏が長いと、ひとは、本当の悲しみを、

感じることがないまま、秋の物思いにふけることも忘れて、

ただただ時間の流れのなかに身をまかせてしまう。

私が覚えているながい夏は、たしかに、悲しいことが、

あったせいで、ひどく短かったのだ。

わたしは、今年も、こころなかで、短い夏をあじわいながら、

悲しみこらえて、生きている。
 

(2025.09.26 KIKO.SHIRAISHI)