東京に住み始めて3年くらい経ったある日、今から11年くらい前のことですが、車が故障を繰り返すので手放し、それ以来車を持たない生活を続けています。北九州市に住み始めてから4年、車に乗りたい、乗る必要があるときはレンタカーです。レンタカーはいつも新しめの車がキチンと整備されているので良いですよ。今回は車を持たない生活の良さについて書きます。

 先日のこと、家から2kmくらいのところにあるホームセンターからの帰り道(2kmくらいなら歩けますよ)、高速道路の高架下の路上で強面のオッちゃんが洗車中、彼の真後ろには事務所があり、NPO法人サポートハウス小倉と玉井組という看板がありました。同じく強面のその看板のデザインはいわゆる組事務所風なのですが、気になったので家に帰ってからネットで調べてみました。…NPO法人は刑務所出所者や生活困窮者の社会復帰支援などをしている団体で、玉井組は建設系の企業であることがわかりました。そのホームページもどことなく強面風なデザインなのが印象的でした。

 玉井組という企業は明治時代、今の北九州市若松区で石炭の港湾荷役業(運搬船に石炭を積む)を興したのが始まりで、創業者は玉井金五郎(のちに当時の若松市会議員にもなった)とあります。なんとこの人の息子は火野葦平(本名は玉井勝則)、芥川賞作家です。火野葦平は父を主人公にした「花と龍」というベストセラー小説を書いていることもわかりましたので、近々手に入れて読みたいと思います。その作品は何回も映画化されており、主演は石原裕次郎だったり高倉健だったりです。また火野葦平の息子は暴力団玉井組(先程の玉井組とは別組織)の組長である玉井金芳とのことで、彼は北九州市において排除の対象、暴力団工藤会の顧問という立場だという情報がネットには出ています。いやあ世の中知らないことばかりですね。

 そしてこれまた驚いたことに、玉井金五郎の妹の息子(甥)はアフガニスタンで医療やインフラの整備に尽力していたけれどテロ勢力に銃撃され亡くなった医師の中村哲氏です。顔が玉井金五郎に似ています。福岡出身とは報じられていましたが、こんなゆかりがあるとは全く知りませんでした。中村哲氏はいわゆる反社会的組織と血縁があるということです。彼が活動場所を海外に求めたのはこの出自にあったのかもしれないというのは私の想像ですが、でもそのエネルギーの源泉もまた出自によるところはあったと思われます。

 そしてさらに、北九州市にあるプロサッカーチーム、ギラヴァンツ北九州の会長をしている玉井行人氏は玉井金五郎の孫、つまり中村哲氏の従兄弟であることもこのたび私は知りました。ギラヴァンツはチーム方針らしきものはアバウトではっきり言えば弱いチームなのですが、ホームスタジアムはとても立派です。私が今回知った玉井組の歴史などから、スタジアム建設にお金をかけたかっただけなんだろうなと思いました。真相はわかりませんが、今期もJ3リーグで最下位のチームを見るとそう思います。

 暴力団は排除!撲滅!とばかり言う現代の北九州市の行政についてもはや私は何か書こうとは思いませんが、今回知ったこれらのことは、私が日常的に車で移動していたらわからなかったことです。買い物帰りに目にした玉井組の看板から色々知ることができて良かった、皆さんも町を歩いてみませんか?