欲張りな者のおかげで命拾い
弊社の歴史商品に度々登場してもらっている勤王歌人の大田垣蓮月尼。
今日はその女流歌人についての余録を書いてみたいと思います。
大田垣蓮月尼は、二度も夫と死別、子にも先だたれ剃髪して仏門に入り、
風流を友として、歌人として名が知れるようになり、
やがて作陶に和歌や書画を刻んだ蓮月焼がブームを呼びました。
勤王ということで梁川星巌、西郷隆盛、野村望東尼らと親交しますが、
とにかく人と接するのを嫌ったといいます。
ちなみに、私も彼女の和歌や蓮月焼などをコレクションしています。
さて、彼女は「屋越し蓮月」と呼ばれるくらい、
住居を転々としたことでもよく知られています。
ある夜、蓮月尼の家に強盗が押し入りました。
強盗は、まず型通り「金を出せ」と金銭の要求をして金品を得ると、
要求をエスカレートさせ「腹が減ったから茶漬けを出せ」と迫ります。
それでも強盗は余程空腹だったとみえて、
茶漬けを平らげると更に「他の食い物はないかと」と再度の無心をします。
目ぼしいものが見当たらなかった蓮月尼でしたが、
ふと、たまたま知人から貰った麦粉菓子を思い出し、
その頂き物の麦粉菓子を強盗に差し出したそうです。
するとそれを食べ尽くした強盗が俄かに悶絶し始め、
苦しんだ末に絶命したそうです。
この件での取り調べが行われると、
あろうことか知人から貰った麦粉菓子に毒が仕込まれていたことが判明。
麦粉菓子をくれた主は、蓮月尼がお金を貸していた人。
借金の返済に苦慮した挙句の犯行だったようで、
進物に見せかけて蓮月尼の命を狙ったと推測されました。
欲張りな強盗のおかげで、
蓮月尼が奇跡的に命拾いをしたというオチとなります。