剛毅果断の姿勢
過日、吉村昭氏について書かれた書籍を読了。
吉村氏が亡くなる直前まで貫いた人生作法は、
一点の曇りもなく自身の哲学で人生が貫かれたように感じました。
それゆえに吉村氏の作品に関しても、
一本筋が通った剛毅果断の姿勢が作品にも反映されていることを
今回の読了で再確認をさせてもらった次第です。
司馬遼太郎氏も凄いが、やはり吉村昭氏も良い。
関東にお住いの某さんは、
吉村昭氏の著名な作品に関して協力をされた方で、
その作品の第一稿となる肉筆を吉村氏から進呈され自宅で保管されています。
私がその方のご自宅に伺った折、
吉村氏が贈られたその原稿を拝見させてもらったのですが、
貴重なものを第三者に譲られる吉村氏に不思議さを感じていました。
でも、こんな考えは所詮私が思うことだけで、
吉村氏の人生作法からすれば、これは至極当たり前のことのようです。
人生は損得ではなく善悪という判断基準が働いているからでしょう。
吉村氏はその作品を書き上げる段階で、
不明な点などがあると細かなことまでも含め頻繁に連絡があり、
時にはその方のご自宅まで片道1時間以上もかけて取材に来られてそうです。
そういうことを幾度も重ねて大作が誕生したという背景をお聞きしました。
丹念で緻密な情報収集、資料集めに対して妥協しなかった証左。
そういったことの積み重ねが歴史小説のベースとなっているわけです。
きっちりと〝妥協は禁物〟を貫かれていました。
吉村作品を再読する時に、また違った趣を感じることになるでしょう。