「港区高輪2丁目」
過日に〝空とぶ絵師〟貞秀の錦絵を新たに購入しました。
今回購入したのは三枚続の「東海道高輪風景」で、
貞秀独特の精密な鳥瞰図構図の特徴がよくあらわれている作品。
タイトルが「東海道高輪風景」となっていますが、
仮にタイトルがなくてもこれが高輪だと簡単に推測できます。
それは錦絵の下部に描かれた左右の石垣の存在。
通りの両サイドに配置された石垣が示すものは、
街道上の江戸内外の境界に設置された簡易関所の「大木戸」の跡です。
江戸時代の大木戸は、
東海道は高輪、甲州街道は四谷、中山道は板橋宿という具合に、
街道交通の警備の要衝三箇所に設けられていました。
ですからその中で海に面しているのは高輪となるのです。
ちなみにもっとピンポイントで特定をすると、
「港区高輪2丁目」となり、わかりやすくいうと泉岳寺あたりに該当します。
その大木戸も寛政年間(1800年頃)には廃止され、
道の両側の石垣に関してはそのまま幕末期まで存在したとのこと。
この錦絵の制作年は文久2年(1862)で、
描かれた石垣周辺に関所の役人らしき人も見当たらず、
石垣だけが遺構としても雰囲気を発していますので、
おそらく制作年に近い頃の高輪から国許へ向かう参勤交代を描いた感じ。
いずれ、自社の歴史商品の図版として登場することになります。