考え倦ねていた一幅
過日、馴染みの画廊に足を運び、
考え倦ねていた一幅を思い切って購入してきました。
豊後日田で私塾・咸宜園を創設した広瀬淡窓(1782-1856)の一幅です。
私塾・咸宜園は幕末期に3000もの塾生を集め、
高野長英・大村益次郎・上野彦馬ら多数の人材を輩出しました。
咸宜園は「三奪の法」なる指導方針が有名で、
年齢・学歴・身分に関係なく成績で評価するなど、
当時としては画期な独自の教育法を実践していたところです。
弊社の商品に「師弟系統図」なるクリアファイルがあるのですが、
その中でも紹介している著名な儒学者の一人。
さて今回購入した一幅は、
昭和30年(1955)に日田市主催「淡窓百周祭」に出品されたもの。
詩書の内容(翻刻文)は、
「邨塾何嫌陋朋来多俊英齋言連楚語墨行雑儒名
洗硯渠流暗繙書林火明田夫停不去似愛誦絃聲」とあり、
現代語訳すると、
村の学塾が狭苦しいことなど苦にならない
方々から学問の朋が集まり俊英も多い
声を揃えて四書を素読し 筆を執るのも儒教の書物
塾生達が硯を洗うと小溝は真っ黒になってしまい
書物を夜遅くまで読んでいるので、林の中でここだけが明るい
いなか者達だがなかなか帰ろうともせず
弦歌の巷に入り浸るようにここでは皆学問を愛している。
いかにも咸宜園での勉学風景が、
視覚的に窺い知れるような内容の詩書となっている点が、
今回の私の購入のポイントとなった次第です。
さらにもう一幅も購入してきたのですが、これはまたの機会にでも。