と、常々思っています。
逆に、体重が増えずに困っている、
体重が減ってしまい困っている、という相談も受けるのですが、
職業柄、あるいは専門分野的に、体重が減らなくて困っている方とお話する機会が多い。
大学院生の時に、肥満に関する研究を行い、論文作成を目指していたため、
実験動物相手ですが、体重の変化を観察する日々を送っておりました。
あくまで実験においては、食べる量(言い換えれば食欲)と、消費量(基礎代謝や、運動して消費するエネルギー)が大事で、
要は入ってくる分と、出て行く分を考えてゆくのですが、
何も実験だからというわけではなく、実生活においてもそう大差ないと思います。
たくさん食べれば太るし、よく動けば痩せる。
けれど、これが難しい。
「たくさん食べる」の中には、食欲と、たくさん食べ物が手に入るか、という2つの要素があり、
今の世の中において後者の問題は(日本では)ほぼ解決しており、概ね前者の、「食欲」が問題となってくる。
食欲をコントロールできる方法があれば、大いに解決に近づけると思いますが、
この食欲、様々な支配(感情、ありとあらゆるストレス、ホルモンの影響、脳神経伝達など)を受けており、一筋縄にいかない。
憔悴するくらいのストレス時は、頭を全力で働かせる必要があり(これからどうする!?という場面)、胃で消化している場合ではないです。従って、食欲も減る。ひどいと吐き気を催したり、なんなら唐突に吐いたりもする。
反対に怒り心頭の場面(あるいはその後と言ったほうがよいでしょうか)では、頭に血が上りすぎて、それを減らすためにお腹に血液を回す。
つまり、食欲を増やして消化に必要な血流を増やす。その結果、頭の血流を減らして冷静へといざなう。
さしづめ、このような原理も働いているのではないだろうか。
昨今、食欲を調節する薬物治療が登場し、話題を呼んでいるが
糖尿病治療に使用されるGLP1受容体作動薬がこれに該当する。
数Kg単位での減量を実現するビクトーザ®、オゼンピック®、リベルサス®の他にも
10kg近く減量を目指せるとされるマンジャロ®、ウゴービ®などがその代表である。
他にもサノレックス®という薬剤が昔からあるのだが、副作用等の問題等もあり、一般的には使用されない。
他方、食欲調整薬ではないのだが、「後付け」で体重を減らす薬として、
こちらも糖尿病治療などに用いられるSGLT阻害薬がある。
これは、尿から糖分をたくさん排泄することにより血糖を下げる薬なのだが、
服用すると短期間で1~2kgほど体重が減る。
たしかに減るのだが、下げ止まりで、それ以上下がることはない。
他にも最近、内臓脂肪を減少させる薬として、病院処方ではなく、薬局で購入可能な薬剤、「アライ®」がニュースとなったが、果たして減量への効果はどうなのか。
もともと海外で販売されていた薬だが、実は日本でも10年程前に、武田製薬から似たような薬が販売直前まで行って、臨床使用に至らなかった経緯がある。
小生も多治見病院に勤めていた際、体重が減る薬が出るらしいので、しばらく待っていて下さいと患者さんへ説明を行い、結局販売に至らず説明に窮した記憶がある。
なんでも、副作用の下痢、脂肪便がきつかったようで、ところ構わずお尻から油が漏れ出てしまうのは恐ろしい。
おむつ生活でその薬を飲むならば、全うにダイエットした方がいいのでは…と冷静に思ってしまう。
まったく同じ薬ではないため、副作用は軽減しているのかもしれないが??
話を戻して、
食欲の次の問題。
食べ物が手に入る。
いや、手に入ってしまう。
この問題は別で取り扱った方がよいでしょう。
それだけでたくさんしゃべりたいことはありますが、うまくまとめられる自身がまだない。
その次。消費の方に関しては、皆言わずもがな。
わかっているけれど…
ということです。
機械の便利さと引き換えに、消費する機会手放し。
進めて来たぜ、産業革命。
…すみません。
思いがけず韻を踏んでしまったため言いたかっただけです。
とにかく、何故かそこら中に24時間ジムが出現し、消えていくような世の中。
謎のダイエットグッズが通販で大量に売られ、捨てられていく世の中(少し前ですか)。
きれいな公園や、ランニングコース。
プール場。スポーツができる場所が都会にもできて欲しいのですが、
お金にならないものは作れない世知辛い世の中です。
さて、どうやってエネルギー消費を確保すればよいのでしょう。
強い意志と、創意工夫が求められます。
ということで、まだまだ上手い具合に食欲を調節する方法がない(現時点では糖尿病治療薬でかろうじて…)とすると、なかなか厳しい戦いが予想されるのです。
100年前の人が見たら、驚く光景でしょう。
薬物治療や手術治療が効果的(メリットが上回る)な場合があることは間違いないと思っていますが、
全員薬物に頼るのはあまりにも…。
何でも文明の利器に頼る。で、よいのでしょうか。
それも進化や、時代の流れ。
なのでしょうか。
人類の歴史全体で見たら、きっとこの飽食の時代は、
短い期間で終わる…。ような気もします。
こんな風にあれこれ考えますが、やはり根っこは人の問題ですから、地道に戦うしかない。
脂肪食と呼ばれる、脂肪分の塊を食べていたマウス達が、
際限なく餌を食べてまるまると太っていた姿が、忘れられません。
脂肪食とは、ほぼマク○ナルドの食事と同じ栄養比率で作られていました。
うーむ。自分もたまに食べていますが…。
お腹が減っていたら食べたくなってしまうからなあ…。
果たして、食欲をコントロールできるようになる時代は来るのでしょうか。
富永 隆史