今回は久しぶりに甲状腺のテーマ。

橋本病について、です。

 

外来でも質問を受けることが比較的多い疾患ですので、なるだけわかりやすい(?)ように重要点を並べてみます。

 

 

橋本病は女性の5人~10人と、とても多い。

日本に女性が6000-7000万人いるとしたら、600-700万人!?

同じクラスや職場に何人かいる計算になりますから、花粉症並にポピュラーな病気とも言えます。

 

しかしながら、橋本病の症状で困っている、とか、入院した、とか、あるいは花粉症のように毎日の会話やニュースに出てくる事もほとんどありません。

 

 

そして日本人の名前がついた病名。

外科医の橋本博士がその病理的特徴を報告したことに由来する病名ですが、別名を慢性甲状腺炎。と呼びます。

字の如く、慢性的に(長い時間)、甲状腺が炎症を起こす状態。

炎症といっても、くすぶっている山火事や火種のようなイメージ(?)で、燃えさかっている(熱が出たり痛いなどの)状態ではありません。

 

 

橋本病がこれほど多い理由は、血液検査を判定要素とするため、疑いを含めて「橋本病」としていることが一因です。

 

 

わかりにくい。

 

要は血液検査で橋本病の抗体(というもの)が陽性となったら「橋本病」としている(!)のが現状です。

 

本当は、甲状腺がびまん性(全体的)に腫れていて、病理学的(顕微鏡で見たとき)にリンパ球浸潤を認めた場合が正式な橋本病なのでしょうが、腫大に関しては例外があったり、細胞を取ってくる検査は大変な上、そこまでして区別した割にはその後の対応方針に大きな差がないだろう。ということで、抗体検査をある程度の根拠に、その後の方針を決めているということです。

 

 

んんー、やはりわかりにくい。ですかね。

 

 

もう少し掘りますが(構わず進むんかい!)、血液検査(抗体検査)としてTPO抗体とTg抗体を測定し、どちらかが陽性となれば橋本病(疑いを含め)と診断します。

 

この検査、割に値段が高く、一度陽性であればごく一部の例外を除いて(手術絡み、炎症や破壊性漏出絡み、他の抗原・抗体との交差反応?要は偽陽性疑い←医療者以外無視してください)、再検査の必要はありません。

病院が変わるタイミングで検査をされることはよくあります(大きい病院では特に)。

これは仕方ない。

しかし、もし同じ病院で何度も再検査された場合はきちんと理由を聞いてみてよいと思います。専門の先生ならきちんと理由があるはず(?)です。

 

また、一般的に抗体価の高い低いで重症度を測る、などということはありません。

 

 

で、ここからが重要なのですが、橋本病(抗体陽性)だと何が困るのか。

 

 

一番の問題は、甲状腺ホルモンが十分に作れなくなる。ことがある。(逆verはここでは割愛)

甲状腺機能低下症と呼ばれる状態に移行するのが困ります。

 

甲状腺機能低下症・・・。

 

甲状腺機能とは?

→甲状腺ホルモンが適切に甲状腺で作れているかどうか。作れていなければ機能低下症となります。

 

そもそも甲状腺ホルモンとは?

→一言でいうと、体全体の代謝を調整しているもの。

ホルモンが少ないと、代謝が悪くなる。女性にとって嬉しくないことばかり。

寒がり、肌の潤いがなくなり、毛が抜けやすく、便秘、疲れやすい、むくみ、しわがれ声、などです。

 

逆に多すぎると暑がり、汗っかき、動悸、手が震える、軟便、体重が増えない、代謝が良すぎて疲れる、などです。

昔、美容に良いと言って怪しげな薬の中に甲状腺ホルモンが含有され、問題になりました。

ホルモンが多すぎるのも良くないのです。特に心臓に。

 

 

機能亢進症はクルマで例えるなら、ミッション5速でずっと走っている感じ。

燃費悪いし、空ぶかし。これ絶対エンジン(心臓)痛めますよ。

 

 

機能低下症はミッション1速でずっと走っている感じ。

アクセル踏んでもパワーでねえ。遅せぇ。

これもエンジン(心臓)に良くない。

 

 

 

妙な例えで熱弁してますが、ひょっとして今はATだけでMTなんてないのかな。

ミッションって死語??ですか?

 

毎日は嫌ですが、たまにミッションで運転してみたくなります。

坂道発進や交差点エンストなど、トラウマ的な恐怖も込みで思い出しました。

 

当方、八事霊園横の教習所卒なので、恐怖の坂道発進ゾーンが多かった記憶がございます。

 

 

失礼致しました。坂道発進に何故か取り乱してしまい。いらぬ脱線はこれくらいにしまして。

 

 

 

今日は橋本病特集なので、橋本病で多い機能低下症の話を続けますが。

 

橋本病と言われている人の20人に1人くらいが、薬が必要なレベルの甲状腺機能低下症になると言われており。

しかしそれがいつ、どのタイミングで薬が必要になるのか、血液検査をしないと、症状だけではわかりづらいのも、難しいところです。

 

 

ちなみに、反対側から見て、甲状腺ホルモン補充が必要な甲状腺機能低下症となる原因。

日本ではその原因の実に90%が橋本病とされています。

 

残り10%は手術や放射線治療、心臓の薬の影響で、甲状腺機能低下症へ至る例など。

 

こんがらがってきましたが。整理しますと・・・

 

橋本病は女性の5-10人に1人。

その中の20人に1人は甲状腺ホルモンの薬が必要となる。

 

甲状腺ホルモンの薬が必要となる人の9割は橋本病が原因。です。

 

 

 

なんだかわかりにくい説明が続いたせいで、こんな長さに。

 

橋本病で2回に分けることになるとは・・・。

 

まったく深くない表面的な説明にも関わらず、いらない文が多すぎますね。いつも。

 

第1回のポイントは、橋本病=甲状腺機能低下症ではない。ということにしておきましょう。

 

 

 

次回は橋本病と言われた後の向き合い方や管理方法、妊娠を絡めた話などにも触れていきます。

 

 

富永 隆史