今から40年程前の話。
当時勤めていた会社(都内)では宿直制度が有った。宿直は月に2回ほどで当番長を含め5名ほどの構成され、就寝前の夜10時頃に社内を手分けして巡回をするシステムだった。
巡回する社内は真っ暗で、懐中電灯で照らすマネキンにはゾーッとさせられる事も有るにはあった。

その日は別棟の担当で事務が行われている建物で、問題は通常無く一人で巡回する事になっていた。
玄関から入り施錠後、1階から3階まで異常なく巡回、階段を利用し4階の人事部の有るフロアに入った。
中は約100坪程あり、7つ程の部屋に分れる構造となっている。
フロア入口の鉄製の重い扉を閉め、入口から順次、給湯室、応接室、印刷室、それぞれの部屋を開け中を確認、ドア確実に閉めながら人事部の部屋に入り、問題は無く最後一番奥の部屋へと向かっていた。

その時、フロア入口付近でギイーと音がし誰かが扉を開けるような気配。しかし中にいるのは自分一人のはず。気になり元に戻ると誰もいないのに入口の鉄製の扉が開いている。この扉はかなり重く風等では絶対に開かない。気のせいかと扉を閉めて、再度奥の部屋に向かった。しかし今度はカタンと軽い音がする。すぐさま戻ると、パネルで仕切られた印刷室の閉めたはずのドアが開いているではないか。ドア自体は一杯に開けない限り自動的に閉まるような構造である。

誰かいるのかと声をかけるが、何かいるような気配は感じるものの当然の事ながら反応は全くなし。
さすがに恐ろしくなり冷や汗タラタラ、上の階の巡回を取りやめ慌てて建物のカギをかけ宿直室へ一目散。当番長に事情を話し巡回を勘弁してもらった。
この話を聞いてさすがに誰もその夜は巡回に行かなかった。

その日は何もなかったものの、翌日目が覚めると電話が鳴った。普通は当番長が取る電話をどう言う訳か自分が取り上げた。
新入社員の家族からの電話で、入院中の息子が亡くなったとの知らせであった。
亡くなったのは会社からわずか2軒隣の病院だった。
スポーツマンで元気が良く好青年で、入社わずか数カ月の事だった。会社に未練が有り亡霊として現れたかも知れない。

このような恐ろしい体験は一度限りで、以降の当番やその後この部屋で数十年勤務することになり、夜遅くまで一人で働いた事もあるが何の恐怖も感じた事は無い。

その時の事を考えると今でもゾーッとする。人生色々なことがあるものだ。


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