原発再稼働の「責任」 首相発言は安心担保にならない(愛媛新聞社説) | 伊方原発とめまっしょい☆若者連合のブログ

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原発再稼働の「責任」 首相発言は安心担保にならない

2015年10月09日(金)

http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201510098594.html

 

 「責任を持つ」とはどういうことか―。原発再稼働と万が一の事故時における「責任」の本質について、議論を尽くすべき時機だ。国や県、市町、国民それぞれが、他者に転嫁することなく、自分のこととして考えなければならない。
 国の原子力防災会議で、四国電力伊方原発(伊方町)の重大事故時の対応について、議長の安倍晋三首相が「国民の生命・身体や財産を守るのは政治 の重大な責務で、責任を持って対処していく」と述べた。これを受けて中村時広知事は「責任を負う覚悟の表明と受け止めた。踏み込んだ発言で、県民に報告で きる」と評価した。
 知事は、重大事故時に国が最終責任を持つとの首相の意思表示など8項目を国に要望。知事としての再稼働の是非の判断に要望の実現を重視する考えを重ねて示してきた。首相の表明で再稼働への条件達成へ大きく前進したとの認識がうかがえる。
 しかし、国が国民の生命や財産を守るのは、殊更言うまでもなく当然の責務である。国の言質を取ったことは成果ではなく安心の担保にもなり得ない。地元の県が、それを大きなよりどころとして、再稼働の判断をすることは到底容認できない。
 首相は具体的にどう責任を取るのか語っていない。実際、責任の取りようがないことは、東京電力福島第1原発事故でよく分かっているからだろう。
 事故から4年半を過ぎても、10万人以上が県内外での避難生活を余儀なくされている。放射性物質は海や森林、農地に影を落とし続け、産業の復興は厳しい。除染によって出る膨大なごみの処分先は見つからず、原発の廃炉作業や汚染水処理は全くめどが立っていない。
 いま現実に起きていることへの対応すら、まるで追い付いていないことは厳然たる事実だ。事故の責任の所在も曖昧にしたままである。にもかかわらず、責任を持つから再稼働に協力をと迫る首相の言葉は空疎で、無責任というほかない。
 首相は「原子力規制委員会が世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた」と安全性を主張するが、規制委は「新基準適合で絶対安全と は言えない」とくぎを刺す。自然の脅威に対し、人間の能力には限界があり、人知による原発制御が不可能なことは福島の事故が如実に示している。誰かの責任 で安全が保障されるかのような誤解をしてはならない。
 いざというとき、対応を迫られるのは地元自治体である。だが、多大な影響が懸念される原発30キロ圏内の5市町長は、再稼働など重要事項決定に意見する権限がないことを背景に、是非の判断を知事に委ねた。
 誰もが当事者でありながら、住民や将来世代への重い責任を他者に預けようとしてはいないか。不安を抱く住民を議論の蚊帳の外に置いたまま、いつの間にか判断がなされることは、決してあってはならない。