伊方に暮らす人の「再稼働反対!」 | 伊方原発とめまっしょい☆若者連合のブログ

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私たちは、伊方原発の再稼働に反対することを一致点とする若者のネットワークです。私たちのよびかける行動には、若者に限らずどなたでも参加できます。

 伊方原発の運転差し止め訴訟で、伊方町から原告になった長生博行さん。裁判所で行った意見陳述を紹介します。伊方町のある佐田岬半島で生まれ育ち、「半島の自然の恵みが住民の恵み」と話す長生さんが、「再稼働反対!」と話すのはなぜでしょうか?「伊方原発をとめる会」の許可をいただいて、陳述書を紹介します。ぜひ読んでください。



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 私は伊方町に住んでいる長生博行と申します。私は、旧三崎町に生まれました。家業ては柑橘専業農家でしたが、畜産業も兼業していて、牛、豚、鶏も養っていました。また、母方の祖父も地元で、一本釣りの漁師でした。私は地元の小、中学校、愛媛県立岬高等学校を卒業してそのまま地元に就職し、先祖代々の地で生活しています。

 

 伊方町三崎地区では農・漁業の一次産業が盛んですが、後継者不足、過疎高齢化など長のの問題があります。しかし、農・漁業には定年はなく、また定年後の第二の人生で農・漁業を生きがいにしている人も多数います。それも、この佐田岬半島の自然の恵が住民の恵になっているからだと思います。


 私が伊方町の住民としては初めて、この原発裁判の原告に参加した理由はやはり、福島の原発事故です。スリーマイル・チェルノブイリと原発事故の記憶があり、また国内では、東海村の臨界事故と伊方原発のプルサーマル発電など不安は続いていました。しかし、その思いを受け止めてくれるものはなく、四電・行政も<安全第一><対策はしている>などといい続けるので、一住民としてはどうしようもない日々でした。

 

 しかし、福島の事故を日本国民として体験してしまい、その原発事故の収束のめども立たず、また原因もわからないで再稼動の申請をするとは納得いきません。四電と東電は会社が違うから安全なのでしょうか?福島は東電が運転していたから事故を起こしたのでしょうか?それとも。人智を超えた想定外のことが起きたから事故を起こしたのでしょうか?それなら伊方原発でも想定外のことが起きる可能性は否定できず、安全基準などはありえないことになります。せめて福島の原因究明・事故の収束・環境の復元・住民の期間及び賠償が済んでから運転再開の申請をすべきです。

 

 これまで私は伊方町の住民でありながら、原発に対しては傍観者でしたが、福島は寝ている者を起こす原発事故です。国も東電も事故を起こしたくて、また起きても仕方ないなどとは考えていたわけではありませんし、原発研究者・設計者・施工者、運転員・作業員も事故など起きないと思っていたはずです。しかし、事故は起きました。これが、紛れもない事実であり現実です。伊方原発でも誰ひとりとして事故など望んでいません。しかし、可能性があります。ないといえる人は誰ひとりとしていません。言っている人がいるとしたら、まだ終わらない事故現場の福島へ行って<これだけの安全基準を満たしていたら事故など起きない>と言ってから、伊方原発の申請をしてください。日本は原発事故を起こした国なのですから。  

 

 国内で原発がある地域は、どうして住民が少なく都市から離れているのですか?電力最大消費地に近ければ送電線はあんなにいらないんじゃないですか?安全なら都市に近いところに建ててください。ガソリン・軽油・灯油値上がりしても、車もトラックもバスも飛行機も動いています。どうして、電気料金は特別扱いされるのです。原発の燃料も輸入しなければならないのだから同じではないのですか?私たち伊方町の住民は生活を営みながらも、絶えず原発事故の不安をかかえていました。原発を稼動していない今は、不安はありません。


 しかし、一度目が覚めたら疑問が次々湧き上がります。今年の4月に伊方町長選挙がありました。有力三候補は誰も原発問題に触れることができませんでした。しかし、当選者の報道会見では、再稼動について住民の理解が得られたと報道されていました。選挙中は触れもしていない原発問題に対してです。


 行政では原発事故を想定した避難計画が、作られつつあります。一年一回、愛媛県と連携した訓練があります。私は旧三崎町で生まれ育ち現在までずっと同じ場所で生活しています。両親・子供達・地域の年配者と一緒に暮らしています。福祉まで起きた事故を想定するなら、また南海地震も想定するなら、急斜面を切り取った生活道路は、避難道として使えるのでしょうか?地すべりも継続しており、国道名取トンネルは1年余の通行止めによる改修工事も行われました。私は地元の建設会社で働きながら町道県道工事に携わっていたので、その体験からみて地震が起きれば落石・倒木・崩落などで避難道としてはつかえないと考えています。


 台風、豪雨による生活道路の復旧作業も幾度も経験しましたが、迅速な避難が必要な原発事故には対応できると思えません。その上、現在では、地元建設会社も減少し、保有重機も少なくなっております。私が勤めていた建設会社も廃業しています。


 また、急斜面に暮らす年配者は、迅速に避難できると思いますか?私は消防団員なのですが、地区のお年寄りの迅速な避難誘導は困難です。生活している場所が急斜面で階段が多いからです。私は祖父母の病院への通院時、家から道路まで階段を背負っていました。


 また、瀬戸地区・三崎地区からは、伊方原発の近くをすり抜けないと避難できない住民はどうすればいいのですか?船で九州へ避難すると言い続けていますが、津波や地震のときに港湾設備は無事使えますか?冬場の悪天候で、これまで訓練していますか?


 私は漁業もしているのですが、時化ている時には漁船での避難は困難です。また、もし避難出来るとしても、その人数も限定されます。フェリーなどの大型船は時化ている時は、着岸が困難です。この事は、私がフェリーの着岸時の綱取の仕事もして経験済みです。南海地震の影響で津波被害も予測されてます。その時港湾設備は使えるのでしょうか?漁船は無事ですか?何事も最悪を想定して、また想定外の自体にも対応できる避難計画を愛媛県、伊方町で出してみてください。できなければ地元自治体として再稼動に反対してください。


 原発立地の過疎地の住民は言いたくても言えないしがらみがあることをご理解ください。原発のお金を貰っているからです。それで、生活をしているからです。子供や親族がお世話になった人がいるからです。しかし、福島で目が覚めました。駄目なものはどんな理屈をつけてもだめなのです。


 私たちが求めているものは、安全な空気と水と大地と海・佐田岬半島からの恵です。そして、子々孫々受け継ぐことのできる佐田岬半島です。一旦伊方原発で重大な事故が起きれば、私たちは故郷を失ってしまいます。そんな危険な原発の運転など、すべきではありません。


 意見陳述の最後に、訴えます。美しい佐田岬半島の自然を守るために、また何よりもそこに住んでいる私たち住民の生命と財産を守るために。伊方原発の運転差し止めを求める私たちの訴えを認めてくださるようにお願いします。