1925年8月15日カナダ・モントリオール生まれ。確かなスキルと自在なアドリブ能力によって、エリントンに「鍵盤の皇帝」と呼ばれたピーターソンは、1993年に脳卒中を患い、左手に障害を遺しました。(発症から2年間は演奏活動を中断しています。)

 

やがて、リハビリによって元通りとは言えないまでも、再び演奏活動を開始出来たのは、ファンにとっては喜ばしいニュースだったことでしょう。

 

本作は、リハビリ後の1998年7月のミュンヘンのライブアルバムで、比較的ゆったりとした演奏が多く、ピーターソンの病気を乗り越えた73歳なりの感受性や人生観が盛り込まれて居るように思います。もちろん左手は完全ではないにしろ、右手には障害がありませんので、以前のような速弾きを聴くこともできます。

 

この意味では、キース・ジャレットが、慢性疲労症候群からやっと復活したアルバムThe Melody At Night, With Youの世界観に通じるものがあるようにも感じています。

 

このアルバムA Summer Night in Munichの中で私が特に気に入っているのが、ピーターソン作曲の2曲目のWhen Summer Comes。

 

永年ピーターソンと演奏していたベースのペデルセンは、ピーターソンにこの曲に歌詞を書いてくださいと提案していたそうです。

 

結局、ピーターソンはエルヴィス・コステロに歌詞を依頼し、ピーターソン80歳の記念イベントでコステロの妻ダイアナ・クラールが歌うこととなりました。その様子がピーターソンのツイッターに載せられています。

 

 

美しい歌詞を書くことで知られるコステロは、この曲想にピッタリの冬から春へ、そして夏に変わるスケールの大きな歌詞を与えました。コステロに歌詞を依頼したことはピーターソンの慧眼であったように思います。

 

 

Live in Montreal (2004)での演奏

 

こちらがアルバム"A Summer Night in Munich"に含まれた演奏です。

Oscar Peterson – piano
Ulf Wakenius - guitar
Martin Drew – drums
Niels-Henning Ørsted Pedersen – double bass

 

美しい演奏は、自分の耳も心も浄化してくれるようでありがたいものです。