ある愛の風景(2004デンマーク) | CINEPHILIA~映画愛好症~

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気づいたら11月。もうすぐ1年終わっちゃいますねー。今月はフィルメックス見に行かれたらと思ってます。

ある愛 ある愛2 ある愛3

昨日の日記に続き、スサンネ・ビア監督の作品です。


戦禍のアフガニスタンに派遣された、国連軍のエリート兵士のミカエル。アルカイダによって彼の乗ったヘリが撃墜され、妻は彼の戦死を告げられる。そしてミカエルの弟は、彼女と死の喪失感を共有することで、初めて他人と心を通わすのだった。そこへ、実は捕虜となって生き延びていたミカエルが別人のようになって帰ってくる…。(cinemacafeより)


社会的背景(アフガニスタン駐留)を縦糸に、そして家族内での様々な愛情(夫婦、兄弟、父息子)を横糸に、物語を綴っていきます。女性監督なのに戦争を描くというのは珍しいと思うのですが、直接的なシーンはもちろん、心に残る傷痕という無形の描き方が容赦ないのです。


後半ぐんぐん引き付けられました。死に直面し罪を犯した兄は、決して悪くないのだけど嫉妬心や不安感、違和感で苦しむんです(観客は事情を知っているだけに、よけいに辛い)。一方の弟は、兄の居場所を奪い、立場が逆転してしまった罪悪感に悩む。誰も悪くないのに、心がすれ違い、愛が壊れてゆく悲しみを、遠慮なく突きつけてくるので、また胃がキリキリする思い。雰囲気や衝撃は「21グラム」のイニャリトゥ監督に近いのかな。


悲しいラストの中に、やはり救いがあるという点が優しい眼差し。


ビア監督は眼に近づき、心を映すのを得意としているようですが、他にも指のリングでそのヒトの心を仄めかしたり、またざらざらとした肌、湿気を帯びた肌に丁寧に寄るのが上手です。そのヒトの温もりや呼吸さえ伝わってきそうな親密感。惹かれました。


11月下旬よりシネカノン有楽町2丁目にて公開予定

満足度:★★★★★★★★★☆