ウィッグ部門で賞を取りまくった。
その間も、色々と皆に迷惑かけた。

大会直前は気合いを入れて練習。それ以外は大体酒飲んでた。
そんなんでも賞は取れていた。

ナメてたなー。
それでも兄貴は根気良く指導してくれたし、皆応援してくれた。

気合いの入った後輩も入ってきた。いつの日か日本チャンピオンを目指すコンテスター、さっさんだ。

順調だった。そう思っていた。

そんな時悪い癖が出てしまった。
酔っ払って店の近所で喧嘩。
まあ、絡んできたのは相手だったが…
倒そうと思ってカカトを思いっきり蹴り上げた。宙に浮いて倒れた相手にマウント取った所で、スタッフが来てとめてくれた。
足がおかしい…
そいつは確かにブーツを履いていたが…

次の日の朝起きると、右足の甲が信じられない位腫れていた。
病院に行ってレントゲンを取った。
「粉砕骨折」手術。入院1ヶ月…

最高にダサい。店に迷惑をかける。
もし治って店に戻っても、相手は間違いなく近所にいる。見つかったら確実にヤバい。

「辞めるしかない」

悩み続けた。そんな時陽さんに出会った。神様が俺に「頑張れ」と言って会わせてくれたプレゼントだと今は思う。

入院中にいきなり工藤さんが見舞いに来てくれた。面会時間を大幅に過ぎて。案内して連れて来てくれたのは陽さんだった。
帰り際、「工藤さん俺…」「治ったら次何のコンテスト出る?」
「いやぁ、工藤さん実は俺考えてる事があってですね…」「そういえば新しい薬剤入ってな。戻ったらみんなに教えて貰えばいいよ」
「工藤さん、俺このまま…」

「アホな事考えんじゃねえぞ。これやるよ。じゃあな」

と、かぶせてくれた赤い帽子にはCHAMPIONと刺繍がされていた。
まただ。
見えなくなるまで頭を下げ続けた。

戻って恩返しだ。
俺はまだ何も出来ていない。

あの赤い帽子は今でも大切にとってある。
もう10年以上前の話だ。
久しぶりになってしまった。

ジョージに入店して、全てが間違いだったと分かった。

俺は器用だ。何でもできる。いつかうまくなる。仲間が多い。魅力的だ。なんとかなる。

俺は酒が強い。

全てが間違っていた。

と分かるのにそんなに時間はいらなかった。それでも練習が嫌いで同期と比べてもダメダメでテストも受からなくて、自分が情けなかった。

本気になる、頑張るって事が格好悪いと思ってたのかな。

そんな時、雲の上の存在、総店長工藤の兄貴が「とりあえず賞取ってみれば?」つってウィッグ作ってくれた。

触ろうとしたスタッフに「触るんじゃねえ‼‼ 邪魔だから帰れ‼‼」と言った。
今でも忘れない。
本気でやってくれた。俺も本気になろうと思った。

コンテスト当日。
朝まで教えてくれた兄貴は審査員の立場だった。
外まで送りに出たがいつものバイクが無い。外は明るかった。
「工藤さん、バイクは…」
「昨日雨降ってたからな。歩いて帰る。頑張れよ。終わったら旨いビール飲もうぜ」
頭下げるしかできなかった。涙がボロボロこぼれて、兄貴が見えなくなるまで頭を下げ続けた。
多分40分位歩いたんだと思う。寝ないで審査員だよ。

帰ってシャワー浴びて時間ギリギリまでもう一回だけ練習した。自分じゃなくて誰かの為にって、初めて思った。

当日の作品や工程はあまり覚えていない。必死だった。
5位で名前を呼ばれて工藤さんを見たら、ガンガン泣いていた。

俺は馬鹿だからさ、「工藤さんどうすか!俺やりましたよ!」とか言ってた。

1番格好いい人って、感謝してる人なのにね。とにかく嬉しかった。いつか表彰台に立ちたいと少しだけ思った。


色々あってアメリカの高校を退学した。あと一年いて卒業していたら、違う人生があったのかも知れない。

とにかく二年で退学して日本に帰ってきた。都立千歳高校に編入した。
典型的なアメリカかぶれだった。
金ネックレスジャラジャラして、ダボダボのジーンズはいて。

クラブに通った。そのうちクラブでDJやるようになった。夜の生活になっていた。
調子に乗ってたんだと思う。
酔っ払って喧嘩ばっかしてた。

アホだった。

そのうち「俺は将来どうなっちまうんだろう」って思い始めて、自分の人生と向き合い、創造してきたと思っていた全てを壊してゼロベースにして、不意に幼い頃の夢を思い出した。
「床屋さんになりたい。」

親に土下座して大学辞めて、専門学校の入学が決まった時、俺は22歳になっていた。

もう中途半端はやめよう。本気でやろう。遊びは、もう終わりだ。
そう誓った。

とにかく必死に勉強して練習した。本当に良くやったと思う。

校内コンテストで優勝して、担任の先生に、「日本一の先生のサロンに行きてえ」と言った。「半端ないみたいよ」と紹介されて向かったのは、泣く子も黙る魂のコンテスター、ジョージ丸山先生経営のGEORGE HAIRだった。

そこで13年も幸せに働く事になるなんて、その時は想像もしなかった。