「響新共命」に収録された
楽曲にまつわる物語を
お届けしていきます
「旅する星」
イシュタール号は
離れた位置から
彼らの仕事を見守るしか出来なかった。
地球にいたTOMAも
イシュタール号に到着し一緒に
画面から彼らの仕事を見ていた。
「新しい宇宙とのコネクトは完了した。
次は、次元変化に伴う最重要ミッションの
登場だね。
いよいよかー」
と、TOMAがつぶやく。
「宇宙と新宇宙をドッキングさせていく
作業が始まる。
別次元で、星巫女たちが扉を
開いてくれているので
そこへの道筋をつけるのが
今回の仕事となる。
非常に難しいが、まずは初めの一歩だ」
と隊長が答えた。
今まさに新時代に向けて
各自が準備してきたものを
連結させていくという
宇宙全体での協働作業が
始まろうとしていた。
虚空は揺れていた。
星々の囁きがほどけ
重なり、縺れ合う。
その渦の中心にエヴァ・ルクシスと
イーサン・ソルベリアは立っていた。
「行こう、エヴァ。
こちらの扉が閉じる前に終えなくては、
だね。」
イーサンの声は
細い呼吸が震えているようだったが
徐々に集中する呼吸へと変化していった。
彼の足元には、幾千の扉が浮かび
星巫女たちが開いた扉を見つけ出せたら
他の扉は閉ざされていく。
その両方の扉が開いている合間にしか
存在しない<旅の道>を
彼が持つ能力が切り拓く。
エヴァはうなずき、両手に光を集めた。
彼女の光は剣となり、盾となり、
影の中から伸びる幻影を払いのける。
「影に囚われても、信じれば進める」
彼女は自らに言い聞かせるように
振り抜いた。
ミッションが始まると
二人は同じ世界を見ているにも関わらず
まるで逆さまの世界のように見える道を
抜ける必要があった。
彼らがお互いを信じる力こそ
このミッションを成功へと導く鍵でもある。
空は沈み
大地は渦を巻いて天に吸い込まれていく。
甘いささやきが大気から聞こえる。
『留まれ。ここにいれば安らぎは続く』
それがもちろん幻ということは
2人は知っていた。
震えや怖さがあると
空間がそれを読み取り
声を掛けてくるのだ。
お互い信じる強い意志を確かめた。
二人は互いの瞳を見つめ
頷き、力を発揮し始めると
影と光のように響き合った。
「新しい世界を信じよう」
「ええ、私たちは道を開ける」
次の瞬間
イーサンの開いたポータルが渦を裂き
エヴァの光がその道を照らした。
閉ざされていく扉に惑わされることなく
二人は駆け抜ける。
背後で幻影が崩れ落ちていく
全てが虚空に吸い込まれていった。
やがてたどり着いた先には
漆黒の海に浮かぶ一粒の星。
それは小さいものの
強く脈を打ち
二人を歓迎しているようだった。
「これが…私たちの故郷か」
エヴァはそっと星を愛でるように
手を伸ばし続けた。
「魂が幾度も生まれ変わっては還る
約束の場所…。
ようやく、辿り着いたのね
元の場所へと」
「そして、僕たちは、ここから
旅する星として
銀河を渡っていくのか」
新しい空間は無事に解き放たれた。
二人は顔を見合わせ、静かにうなずき
イシュタール号に成功の連絡を
入れるのだった。
瞬時に、イーサンとエヴァの耳には
イシュタール号船内の大歓声が届いた。
「イーサン、エヴァ!ありがとうー!」
と声が聞こえた。
「TOMAも来ていたんだね」
「そうなの!ちょうどライブが
終わって みんなのエネルギーが高まって
満ちたから 次元の扉が開くよって
呼んでもらったの!
地上での歌や踊りの波動が
こうして宇宙の作業と直結するなんて
初めて見るけど、美しいねー。
驚きだよ。
ライブに参加してくれた皆んなにも
伝えなきゃ!」
「いやいや、TOMA
君は何度もこの景色を見ているよ。
過去にね。忘れているだけだよ」
と隊長が声をかける。
「そうだったっけ?
うーん、体を持つと忘れちゃうことが
多いからね。
だから、今日は新鮮に見れたし
新鮮な感動が味わえたよ」
「あはは!それは面白い感想だ」
船内に笑いが起こった。
こうしてイシュタール号は
いくつものミッションを完了させ
新たなミッションへと引き継がれた。
その時、新しい次元空間に浮かぶ星々は
静かに震え
まるで祝福の歌を響かせるように。
彼らの旅立ちを見守るようだった。
旅する星は
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10月11日
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