10月に公開する

超次元トリッパー☆イシュタールの

物語を公開していきます

 

    

 『鎮魂の地図』

 

 

異次元の荒野に

静かな光が揺れていた。

 

 

セリーヌ・グラシアは

掌に浮かぶ記録装置

―高度文明の地図媒体―に

手をかざしていた。

 

 

触れると

その土地に刻まれた記憶が

立体映像として甦る。

 

 

「…ここも、かつて血で

染まった大地だったのね。」

 

 

背後から声がかかる。

「やあ、セリーヌ。

ずいぶん複雑な地形を扱ってるね」

TOMAの指先が静かに装置に触れる。

 

 

瞬間、視界に光が広がった。

 

 

宝石赤

 

 

砂塵が渦を巻き

焦げた空気の匂いまでが漂う荒野。

 

ヴォルター、リアム、レオン

現在イシュタール号に乗船する3名が

命を懸けて仲間を守る姿が映されていた。

 

 

ヴォルター・エイオンは重力を操り

崩落する地盤を押さえ込む。

間に合わなかった仲間の影が

光に呑まれる。

彼は拳を握りしめ

『すまない』と呟く。

 

 

リアム・ヴェイザーは肉体を武器に

迫る敵を押し返す。

負傷した仲間を庇いながら

『俺を置いて行け!』と叫ぶが

仲間は炎に飲まれていった。

 

 

レオン・アッシュフォードは炎の刃を掲げ

残された者を退路に導く。

振り返れば、仲間が次々と

光に消えていく。

『必ず生き延びろ―俺たちの分まで』

そう言う声は涙で震えていた。

 

 

 

戦場の風に舞う灰

焦げた空気

仲間たちの息遣い

映像は悲しみの余韻まで映し出す。

 

 

 

他の星の救援が入り

そのうちの1つにイシュタール号もいた。

 

イシュタール号からは

異次元で失われた人々を探し

瞬間移動で救出する能力を持つ

オスカー・ノックスが現れた。

 

 

生き残った3人とオスカーは

亡くなったものたちを埋葬し

御霊にレクイエムを歌い

どうか魂が救済されますように

と祈った。

 

 

「光の彼方、君は眠る

 風が運ぶ、声にならない祈り

 消えゆく記憶の波間で

 灯火はまだ、揺れている

 

 暗闇を裂いて、空へ還れ

 苦しみの影を越えて、安らぐ地へ

 この歌が君の迷い道を照らす光になる

 さよならじゃない、また、どこかで」

 

 

祈りは届いた。

宇宙議会にて

この戦いで生命を失ったものたちの魂は

救済措置により他の星で

修復期に入ることとなった。

 

 

新たにイシュタール号から

キリック・ソウルシーカーが

派遣された。

 

彼は、次元間で魂を追跡し

失われた魂を救い出す仕事を担う。

 

彼は、その仕事を残されたものの

意志を汲みながら、丁寧に始めた。

 

 

それは再生のための措置

しかし、残された者には

深い悲しみが残った。

 

 

「魂は永遠に生き続ける。

でも、この星で出会った愛する者たちは、

一度全てを忘れてしまう。

やっぱりそれは、悲しいものだ」

 

 

リアムが呟く。

愛する者の記憶に

もう自分はいないのだと思うと

やはり耐え難いものがあった。

 

 

それでも彼らは祈った。

「みなの幸せを祈る」

ヴォルターは手を合わせ

涙をこらえた。

 

オスカーは、少し微笑み

『イシュタール号に来ない?』と

彼らに声をかけた。

 

 

 

「さまざまな星で仲間を集い

宇宙のミッションをこなしているの。

 

今、イシュタール号は

コード3333と呼ばれる地球が

新しい成長に入るための

サポートをしているのだけど、

とても際どいミッションが多いので、

あなたたちが来てくれると、皆喜ぶわ」

 

 

3人は自分たちが

成し得ることの出来なかったことを

このままで終わらせるのではなく

次に繋げて、宇宙平和のため

任務に着く決意を固めた。

 

 

 

宝石赤

 

 

TOMAは映像を見つめながら呟く。

 

「あぁ、そうだった。

記録を読んだ覚えがある。

 

侵略者は、あの星から追い出された

民族だったんだ。

 

戦いを挑む者

元は同胞として戦えなかった者たち

…複雑な心の葛藤があった。

 

亡くなった者たちはすべて救済され

別の惑星で魂の修復の旅に

送られたんだったね。」

 

 

そのとき

3人が地図制作室の扉を

開けて入ってきた。

 

 

 

「タイミングが悪かったかな?」

 

 

「そんなことないわ。

ちょうど良かった。

 

今この地図の最新情報を

書き込もうと思っていたの」

 

セリーヌが出て行こうとする3人を止めた。

 

 

「TOMA、あなたがこの星に行って

生命を再生させるように

指令が出ているわ」

 

 

「あ!そうか!呼ばれたから

ここにきたんだったね。

 

星も休息を取り

再生の時が来たんだね。

 

そしたら、まだ状況が

変化しそうなので

ジュリアにも同行してもらおうかな」

 

 

とTOMAが言うと

セリーヌが『オーケー、伝えておくわ』

と答えた。

 

 

そして、TOMAが3人に話した。

 

「魂が修復期に入る場合は

確かにその前までの記憶が消える。

消えるというより忘れるかな。

でも、彼らの魂が癒えた時

再び記憶を取り戻すんだ。

 

同じ星、同じ状況とは

確かに言えないけど

いつかまた再会できる時がくるよ。

 

再会できる時のために

レクイエムでも作っておいたらどうかな?

彼らの魂が癒されますように。

そして、彼らと再び会えることを祈ってさ」

 

 

3人が沈んだ顔から笑顔が見えた。

「それはいいアイデアだね。」

 

 

「TOMA、俺らも連れて行って

もらえないか?

星にも募る想いがあってさ」

 

 

「そうだね、一緒に見て回ろうか。」

 

 

セリーヌは皆の様子を見て

声を響かせた。

「じゃ!さっそくプロジェクトを

組んで始めましょう!」

 

 

 

 

この物語から生まれた楽曲は 

10月11日

お楽しみいただけます