10月に公開する

超次元トリッパー☆イシュタールの

物語を公開していきます

 

 

    

第7話:踊る箱舟

 

 

宇宙船・イシュタール号が

夜の宇宙を背景に静かに光っていた。

 

 

TOMAは二つのモニターを

見つめている。

 

 

片方には地球の夜空

もう片方には山奥の小さな里—。

忍びの里の境内が映し出されている。

 

 

「宇宙存在が降り立った時から

村はあの船を祀ってきたんだね」

TOMAがぽつりと言う

 

 

「今回、世界樹の種は

その村に落とされる予定。

でも、村人が伝承された舞を

踊らなければ周波数が合わず

種を降ろせない」

次元間の混乱を制御する担当の

ザーク・フォーグが言葉を漏らす。

 

 

 

ザークと同じチームの次元の間に隠された

力を引き出す仕事を担当する

銀髪のアリーナ・エクリプスが

モニターの中でのやり取りを指差した。

「見て、あの二人…もう喧嘩してるわ。

計画実行は、危ういかもね」
 

 

TOMAは笑って、わざとため息をついた

「舞が正しく行われなければ

種は降ろせないし

世界樹も芽吹かない。

夢に入るしかないか…」

 

 

ザークが続けて

「夢に現れて

舞がないと種が降ろせない

種が降りた時に必要な儀式だと

伝えようか」

 

 

「そうだね

人の夢を通じてメッセージを

送るチームに依頼しよう!

 

 

担当は

カスパー・ヴェイルドリーム

だったよね。

依頼出しておくわ」

 

 

そう言って

アリーナが部屋を去った。

 

 

 

宝石赤

 

 

 

 

忍びの里の夜。

 

少女たちは境内に集まり

松明の揺れる光の中で

舞の稽古を続ける。

 

 

忍術の動きと

古来から伝わる舞。

二つが重なるたびに

夜風がざわめく。

 

 

「ねぇ椿、こんなの練習して、

今時何になるの?」

百合の声には

眠気と苛立ちが混ざる。

 

 

「何になるって……」

椿は振り返り、眉を寄せた。

「忍びの技は受け継がなきゃ

いけないものだし、この舞も——」

 

 

「本当に意味あるの?」

百合は肩をすくめた。

 

 

「学校のテストの方が

まだ現実的だと思うんだけど」

 

 

仲間の牡丹や桔梗も息をひそめ

二人の言い争いを見守る。

 

 

2人の言っていること

どちらも分かる。

何のために私たちは

こんな山奥で舞うのか…。

 

 

宝石赤

 

 

その夜

椿の夢に光が差し込んだ。

 

淡い銀色の光が

無数の星の海から降り注ぐ。

 

カスパーの声が

椿の心に柔らかく響いた。

「舞がなければ、種は降ろせません。

新しい世界に必要な、世界樹の種です。

 

あなたたちが先祖代々舞う踊りは、

今回の種が降りた時に必要な

儀式でもあります」

 

 

 

椿は翌朝目覚めても

その意味を理解できなかった。

 

 

夢って言われても説得力がないし

仲間たちにもうまく伝えられなかった。

 

 

しかし村は異変に包まれた。

 

 

 

宝石赤

 

 

 

舞が乱れた夜から

村に次々と異変が起きた。

 

 

村の通信機器は軒並み故障し

ラジオも携帯電話も使えなくなり

大人たちが会議を始めると

真剣な顔で話していた。

 

 

会議から帰って来た大人から

聞く話によると

 

村人たちは眠るたびに

同じ悪夢を見ていた。

 

それは世界が天変地異で

消え去る光景。

 

海は溢れ、大地は裂け

森は燃えて

みな同じ景色を見ているようだった。

 

 

 

「なんか起きるのかな、私怖い……!」

牡丹が泣きそうな声で叫ぶ。

 

 

椿は、夢に現れた

銀髪の女性の声を思い出す。

「舞がなければ、種は降ろせない。

舞は、種が降りた時に必要な儀式だ」

 

 

 

舞を正しく踊らなければ

この異変は収まらない。と

確かに聞いた。

 

 

少女たちは緊張と恐怖を胸に

村人が集まる境内に集まった。

 

 

村の長から話があった。

「残された書物に

何か残されていないかを確認したが

子供達に舞わせている舞が

私たちが思うよりも大事かもしれない。

村全員で今一度、舞を合わせよう」

 

 

「舞なんかでおさまるのか?」

何人かの大人が口にする。

 

 

私たちだけでなく

もう何年も親の世代も同じ葛藤を

抱えていたんだ…。.

 

 

椿は勇気を出して声を出した。

「私!夢で誰かに声をかけられました!」

 

 

椿の勇気がみんなをまとめ

村人全員での舞の稽古が始まった。

 

 

また、時代を追うごとに

少しづつ舞が変わってしまっていたことも

分かった。

 

 

夜の境内。

息を合わせて村人全員が舞う。

 

 

太鼓が波のように響き

影が重なり

手のひらが星を描く。

 

 

風を裂く動きが波となり

村人たちは肌で感じた。

「この舞は宇宙と地をつなぐ

御神事だったのか」

 

 

 

舞を終えると

境内には桃色の光りに満ち始め

神秘的な光景を村人全員で体験した。

 

 

なんと言葉にして良いか分からず

誰も言葉を発することができず

 

ただただ

その光景を見るしかできなかった。

 

緊張と静寂の中

ぽんっと、拳ほどの小さな植物の種が

落ちた。

 

 

「…これが、種?」

 

 

椿の声には驚きと戸惑いが混ざる。

百合も目を見開いた。

 

村長の指示もあり

二人は慎重に種を土に植えた。

 

やがて

銀色の光を帯びた木の芽が

ゆっくりと姿を現す。

 

しかし

普通の木ではなく

その成長はとても早かった。

 

 

枝は星のように輝き

葉は微細な光を放つ。

風が葉を揺らし、光の粒が舞い上がる。

 

「ああ…これが

祈りを捧げて舞う意味だったのか」

 

 

 

椿は理解し、百合も頷く。

拳を胸に、少女たちも再び舞う——

 

新しい世界樹と星々に向け

未来への祈りを込めて。

 

 

 

宝石赤

 

 

 

イシュタール号のモニターに映る

里の光景に、TOMAは号泣していた

 

「うぅぅぅぅ...美しいねー」

 

ザークも船に戻り

やっと周波数が合ったようだ

と報告した。

 

続いて、銀髪のアリーナが頷く。

「世界樹の種は無事に降ろされた…。

あの舞があったからこそね」

 

遠くの星々が静かに瞬く中

宇宙船は次の任務に向けて静かに進む。

 

 

地球の小さな里で

少女たち、そして村人たちは

 

 

祈りと舞で

新しい世界とつながったのだった。

 

 

 

 

この物語から生まれた楽曲は 

10月11日

お楽しみいただけます