4-10で負けた試合にも関わらず虎ファンは帰らずにスタンドに残っていた。

彼等は9回表に代打ホームランの金本兄貴を待っていたのだ。

神宮は試合後、ベンチを出てグランドを通って退場する。
その時の金本を待っていた。



ヤクルトの選手がお立ち台に上がり、これからヒーローインタビューが始まろうとする頃に背番号6が大きな荷物を抱えてベンチから姿を現すとレフトスタンドから3塁側に掛けて物凄い大声援が背番号6金本兄貴に降り注いだ。



金本兄貴がレフトスタンド方向の退場口へ向かって歩いている間、大声援は止むことなく続いた。

お立ち台に上がっているヤクルトの選手達が虚しくなるほどの大声援だった。

金本の姿が完全に見えなくなってからヒーローインタビューが始まった。

試合はスタンリッジが初回5失点で試合を壊す呆れかえるような展開で始まり、追撃の得点を挙げても直後に失点して最後は大差の着いた重苦しい展開となっていた。

しかし、金本兄貴の一発で神宮の虎ファンの足取りは一気に軽やかになった。

とても負けた試合後の帰りとは思えないような虎ファンの明るい雰囲気だった。

虎はBクラスが確定し、試合の勝ち負けは、もうぶっちゃけどうでもいい。

今夜は金本兄貴の一発が観れて良かった。



それから、野原将司のプロ初ヒットと小宮山のプロ初ホームランも観れて良かったのである。

S10-4T