核開発問題で欧米などの経済制裁下にあるイランで、3月2日に国会議員選挙が行われました。
今回の選挙では、改革派は「自由で公正な選挙が望めない」として正式候補の擁立を見送っており、アフマディネジャド大統領派と最高指導者ハメネイ師派(反大統領派)という、保守派内の争いとなっていました。
http://mainichi.jp/select/world/news/20120304k0000m030059000c.html
(引用開始)
国営テレビが3日午後(日本時間同日夜)に報じた途中集計によると、ハメネイ師派が110議席(現有は約180)以上を獲得したのに対し、大統領派は10議席(現有50~60)にとどまる。改革派は28議席。
内務省によると、保守派の大物でいずれもハメネイ師派のラリジャニ国会議長▽ハダドアデル元国会議長▽ボルジェルディ国家安全保障・外交委員長らは当選した。大統領の妹パルビン・アフマディネジャド氏は落選した。
イラン政界では、イスラム体制の頂点にある聖職者ハメネイ師と、憲法上、体制ナンバー2の非聖職者アフマディネジャド大統領が激しく対立している。ハメネイ師派の勢力伸長を受け、選挙後の国会でラリジャニ議長など反大統領派が発言力を増すのは確実だ。
今の保守派内で劣勢の大統領派の衰退が一層進めば、核問題や米欧との外交関係で宗教界の影響力が強まり、強硬姿勢を加速させる可能性がある。
アフマディネジャド大統領派はこれまで、水面下で米欧諸国との核協議再開に向けた調整を進めてきたとみられるが、イランが米欧への協調姿勢に転じる可能性は遠のいた格好だ。
毎日新聞 2012年3月3日 21時19分(最終更新 3月4日 1時18分)
(引用終わり)
最近、オバマ大統領は、親イスラエル系ロビー団体(!)に対してイランに対する強硬姿勢を表明しています。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2012030500011
(引用開始)
武力行使、「ちゅうちょしない」=イランに警告-米大統領
【ワシントン時事】オバマ米大統領は4日、親イスラエル系ロビー団体の会合で演説し、イランの核開発に関連し、「米国と米国益を守るために必要なときは、武力行使をちゅうちょしない」と述べ、イランに警告した。
大統領は「イランの核兵器保有阻止のため、いかなる選択肢も排除しないと言うとき、私は本気だ」と強調。選択肢には「あらゆる有事に備える軍事的取り組み」など、「米国の国力の全ての要素を含む」と語った。(2012/03/05-01:40)
(引用終わり)
嫌な空気が流れてきているようです。
米国主導の経済制裁による経済の悪化からイラン国民の不満が高まり、ときに欧米との協調路線を探ろうとする現政権を国民が見限り、強硬路線をとる超保守派が力を持つことによって、イランが欧米に対する戦争をしかけることを狙っている、米国・イスラエルの思う壺になりつつあるのではないかと邪推してしまいます。
※ところで、アフマディネジャド大統領は実はユダヤ系の家系の出であり、本人も4歳になるまでユダヤ人の友に囲まれて育ち、彼らと同じく割礼を受けている、との情報がありました。「彼の強烈な反イスラエル、反ユダヤの言動は、ユダヤ教から足を洗い、その出自を消したいという思いが働いているのだろう。」とのこと。
http://facta.co.jp/article/200912007.html
さて、ネットをさらに色々検索していたら、1996年より在テヘランで、テヘラン大学で博士号をお取りになったという「Dr.サラさん」という方のブログを拝見しました。
http://sarasaya.exblog.jp/
(引用開始:2/25の記事)
3月2日に迫った国会議員選挙の投票日ですが、全く盛り上がっていません。私の周囲でも無関心な人がほとんどで、投票日を知らない人もいるほどです。有権者は4800万人とのことですが、投票率はどうなるのだろうと思わず心配になってしまいます。少なくとも、テヘラン北部地域ではほとんど投票に行かないのでは?と思うくらいです。
(引用終わり)
あれ?
外からニュースなどを見て国外の人間が心配しているのに比べて、イランの国内はずっと平静な感じがします。意外にそんなものなのかもしれません。
同じく、2/11の記事から
(引用開始)
一時帰国をしたときに、戦争を避けて避難してきたかのように言う人がいたのですが、たまたま緊張感が高まりつつある時期に一時帰国が重なっていただけで、イラン国内では特に戦争が始まるぞ、というような感じではなかったように思います。
こちらに戻るときも、「危なくないですか?」と言う人もいましたが、正直なところ、どうなるのかは分かりません。
普通に考えれば、アメリカもヨーロッパ各国も、国内の問題で手一杯で戦争などしている余裕などないと思いますし、イランも「精鋭部隊が準備中」とは言っても、現代の戦争での人力の占める割合はそれほど大きなものではないことを考えれば、装備の近代化が遅れている(ように見える)イランが戦争をできるとも思えません。ホルモズ海峡の封鎖も、イランの海軍の貧弱さを見れば、どこまでできるものなのか分かりません。イラクと戦争をしていたときのようにはいかないのでは?と思わずにいられません。
しかし、テレビをつければ、「敵に負けるな」の精神論ばかりが強調され、「戦争になっても我々は負けない」との主張ばかりがまかり通っています。
とはいうものの、政府関係者や有力なルーハーニー(いわゆるイスラム聖職者)は財産を海外に移し、家族を移住させ、いつでもイランから逃げ出せるようにしています。(どこまで本当かは分かりませんが、イランの人達と話をしていると、「誰それの息子はどこどこに移住している」「誰それの家族はどこそこに行った」等、有力者の家族の動向までよく把握しています)
そういうことをしておいて、国民には「最後まで戦え」「貧乏に耐えろ」では、それこそイラン・イラク戦争当時のようにはいかないのでは?と思わずにいられません。海外に持ち出されている財産は、国民の目から見れば国庫からかすめ取ったものでしかありませんし。
(引用終わり)
現地に住んでいる方からの、こういう情報は貴重ですね。
もちろん、ただ一人の人の目で見て書かれているので、これがイランのどこでも絶対に正しいという訳ではないことに留意しなければなりませんが。
戦争などという悲しいことが起きないことを祈ります。