ウィキリークスが米民間調査会社ストラトフォーの情報を盗み出し、その中でダウ・ケミカルが政治活動団体の動向を監視するよう依頼していたことが暴露されました。
(引用開始)
2012年02月28日(火)17時51分
政府や企業の機密情報を暴いて数々の騒動を巻き起こしてきた内部告発サイト、ウィキリークスが、新たな攻撃を開始した。
今度のターゲットは米民間調査会社ストラトフォー。ウィキリークスは今週、国際ハッカー集団「アノニマス」がストラトフォーから盗み出したという500万通もの電子メールを順次公開しはじめた。2月27日の初回公開分には、ストラトフォーが有名企業の依頼を受けてアメリカやカナダの活動家の動向を探ってきた様子が克明に記されている。
公開されたメールによると、ストラットフォーはコカコーラや米化学大手のダウ・ケミカルとユニオンカーバイドなどの依頼を受け、反グローバル化と反資本主義を掲げるアメリカの活動団体「イエス・メン」や動物愛護団体PETA(動物の倫理的待遇を求める人々)の動向を監視していたという。
イエス・メンが監視対象にされたのは、1984年12月にインド中部ボパールで農薬工場から有毒ガスが漏出し、1万人近くが死亡した悲劇について世論を喚起しようとしていたため。この史上最悪規模の産業事故を起こした張本人が、ユニオンカーバイドだった。
同社と後に同社を買収したダウ・ケミカルは、事故から25年の節目に再び世論の反発が高まるかどうかを知りたかったようだ。公開されたメールには、イエス・メンのメンバーの個人情報やメディアへの露出、ニュース媒体での扱いなどについて詳細に報告されている。
ストラットフォーのバート・モンゴベン副社長が04年11月に送ったとされるメールには、こう書かれている。「(事故から25年の式典まで)1か月を切り、主要なプレイヤー、特に(国際人権団体)アムネスティ・インターナショナルがボパールの事故を利用してより大きな問題を提起していると思うだろう。だが、その証拠は見当たらない」「彼らが25周年を機により大きな問題提起ができないなら、おそらく今後もできないだろう」
(引用終わり)
(→コカコーラは省略します。)
ここで取り上げられているボパール化学工場事故は、1984年に発生した世界最悪の化学工場事故です。
事故を起こしたのは、米国を代表する化学会社であるユニオンカーバイドのインド子会社。ユニオンカーバイドは、2001年に世界最大級の化学会社ダウケミカルに買収されて子会社となっています。
化学会社に入社すると、安全教育で必ず(←多分)このボパール事故のことを学び、安全をないがしろにしてこのような悲惨な事故を起こすようなことが絶対にないように教え込まれます。
畑村洋太郎・東大名誉教授(政府の東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会委員長にも任命されています)が提唱している「失敗学」でももちろん取り上げられています。
失敗学とは。(Wikipediaより)
(引用開始)
失敗学 (しっぱいがく) とは、起こってしまった失敗に対し、責任追及のみに終始せず、(物理的・個人的な) 直接原因と (背景的・組織的な) 根幹原因を究明する学問のこと。
失敗に学び、同じ愚を繰り返さないようにするにはどうすればいいかを考える。さらに、こうして得られた知識を社会に広め、ほかでも似たような失敗を起こさないように考える。すなわち、以下3点が失敗学の核となる。
原因究明 (CA: Cause Analysis)
失敗防止 (FP: Failure Prevention)
知識配布 (KD: Knowledge Distribution)
(引用終わり)
「失敗知識データベース」に、失敗事例としてボパール事故についてフォーマットに従ってまとめられており、また「失敗百選」のひとつとしてさらに詳しくまとめが作成されています。
http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CC0300003.html
http://www.sozogaku.com/fkd/hf/HC0300003.pdf
きわめて危険な物質をずさんな管理で運転していたこと、さらにその背景には当該製品が赤字であったことから安全投資・管理を行っていなかったことがあると指摘されています。
(引用開始)
1984年の12月の夜中に、インド、ボパールの化学工場から猛毒のMICが漏洩した。漏洩した毒性のMICガスは風に乗って市街地に拡がり、3,000人以上(最大14,410人)の死者と35万人もの被災者を出した。
多くの人が長期間後遺症に苦しんだ。
漏洩の原因は
1)運転ミスにより製造時の溶媒であるクロロホルムの多い不合格品を留出した。
2)工事の手違いにより、貯蔵タンクに水を混入させて、MICと水との発熱反応によるタンク内温度の上昇、MICに混入したクロロホルムの水存在下での熱分解による塩化水素の生成と鉄の溶出、さらに鉄触媒によるMICのトリマー化反応によりタンク内圧力と温度が上昇し、安全弁を作動させたことによる。
3種類の安全装置を保有していたが、何れも停止中で何らの役に立たなかった管理の問題がある。
さらにその裏には、最終製品のライフがなくなり、装置が赤字であったため、親会社を含めて、一切の安全投資、安全教育・訓練などを放棄していた、リスクマネージメント不在の経営がある。
(引用終わり)
ひとたび事故を起こしてしまうと、従業員のみならず近隣の住民にまで大きな被害を及ぼしてしまうという意味で、化学工場は大きな責任を負っています。(この点、自動車や電器、繊維、食品などなどの工場と比べて、その重大性が大きく異なります。)
そのため、化学会社では安全対策・安全管理・安全教育を徹底して行うことが求められます。過去の失敗にも学びながら、絶対に事故を起こさないように、化学会社では日々努力しています。
(→って、宣伝みたいになってしまいましたが。)
(原子力発電所も同じですね。化学工場よりもはるかに大規模・広範囲の被害を及ぼします。)
さて、実は本当に書きたかったのは、ボパールの事故のことよりも、ウィキリークスについてでした。
今日はまだ十分調べ切れなかったので、いずれ整理できたら記事にすることにします。