イランの核疑惑とアカデミー賞候補のイラン映画『別離』 | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

イランの核開発(原子力開発)について、一進一退の状況が続いています。

IAEAは、イランが核兵器につながるウランの濃縮を拡大していると警戒する報告書を提出しています。
http://mainichi.jp/select/world/news/20120225dde001030031000c.html

(引用開始)
 【ウィーン樋口直樹】国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は24日、イランによるウラン濃縮活動の大幅な拡大を示す報告書をまとめ、35理事国へ配布した。イランは、米国やイスラエルの空爆を想定して中部フォルドゥの地下に建設した第2ウラン濃縮施設で、遠心分離機を倍増。さらに濃縮能力の拡大を計画しており、濃縮停止などを求める欧米に真っ向から対抗する姿勢を示している。

 毎日新聞が入手した非公開の報告書によると、イランは昨年12月中旬、濃縮度20%ウランの製造を開始。昨年11月の事務局長報告以降、遠心分離機を約700台に倍増し、今月中旬までに約14キロを製造した。さらに約2090台分の拡張を準備している。

 イランは中部ナタンツの第1濃縮施設でも昨年11月以降、遠心分離機を1100台以上増加させ、約8800台を稼働可能な状態に置いた。さらに約6200台分の拡張工事を終えた。これまでに製造した20%濃縮ウランは約95キロに達し、フォルドゥ分を加えると計109キロとなる。

 兵器化には濃縮度を90%以上に高める必要があるが、20%に達すれば必要工程の大半を終えたことになる。イランが現有する20%濃縮ウランの量では原爆1個分に足りないが、濃縮度5%以下のウランは、濃縮度を高めれば原爆数個分に相当する量が既に製造されている。

毎日新聞 2012年2月25日 東京夕刊
(引用終わり)


これに対し、イラン当局は核開発は平和利用に限っていることを強調し、IAEAとの協議を継続すると表明しています。
イランラジオの報道
http://japanese.irib.ir/index.php?option=com_content&view=article&id=25890:iaea&catid=16:gozarash-kabari&Itemid=118

(引用開始)
IAEA国際原子力機関の天野事務局長が、イランの核開発に関する報告を提出しました。

天野事務局長は、24日金曜に提示した報告の中で、イランにおける濃縮活動の拡大に懸念を示しています。ウラン濃縮活動と核兵器製造を同一視するのは、政治的で筋道からそれた流れです。IAEA事務局長はこれ以前にも、イランの核開発が軍事的なものである可能性、あるいは西側が主張する問題に関して一部の主張と非難を提示してきました。イランの専門家はテヘランで、これに関する技術的で専門的な説明をIAEAの専門家に提示し、こうした主張に根拠がないことを証明しました。

イランのソルターニーエIAEA大使は、この点について触れ、イランはIAEAと協議を継続する用意があると強調し、「イランは国際法規を遵守する責任ある国として、IAEAとの協力を継続する」と述べています。ソルターニーエ大使は、同時に、「イランは核の平和利用という明らかな権利を断念することはない」と述べました。

2012年 2月 25日(土曜日) 18:55
(引用終わり)

やや意外なことに、アメリカの情報機関は、イランの核兵器製造について慎重な見方を示しています。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2012022500259

(引用開始)
 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は24日、米情報機関はイランが核兵器製造を決断したことを示す確実な証拠はないと判断していると報じた。
 2007年、中央情報局(CIA)など16の米情報機関の見方をまとめた国家情報評価(NIE)は、「イランは03年に核兵器開発計画を断念した」と判断していたが、米情報機関は今もこの見解を保っていることになる。

 複数の当局者の証言として伝えた。同紙によると、米欧やイスラエルの情報機関は、イランがウラン濃縮や核エネルギー生産に必要なインフラ整備を進めていることでは意見が一致しているが、米情報機関は、イランが03年に一度断念した核弾頭製造について、再開すべきか否かの決定を下していないと見ている。

 こうした米情報機関の見方に対しては、イスラエルや欧州の批判が強い。イラク戦争に先立つ02年、フセイン政権の大量破壊兵器保有で誤ったことが米情報機関のトラウマになり、イランには慎重になっているという指摘もある。(2012/02/25-18:59)
(引用終わり)


イランは、現在は核兵器を製造してはいないでしょう。IAEAとの査察を受け入れられるのは、実際に核兵器の製造をしていないからだと考えるのが自然です。

しかし、イランを敵視し、かつ核兵器を保有していると信じられているイスラエルとの対抗上、いつでも核兵器を持てるという姿勢を示しておくことが、防衛政策上重要なことなのだと推測します。

日本が原子力発電を行ったのも、自民党の石破氏が意見を表明していたように、いつでも核兵器を製造できることを外国に知らしめることが防衛上重要だったからであり、実は東京電力などは原子力発電をやりたくなかったのだとの説もあります。

イランも同じことでしょう。イランは原油産出国ですので、原子力発電の必要性は日本に比べてもかなり低いことは明白です。イランに核開発をやめさせたければ、まず核不拡散条約(NPT)に調印もせず、IAEAの査察も受け入れないイスラエルを制裁する方が近道と考えます。


さて、日本は、米国にイランからの原油輸入をさらに削減する方針を示して、日本の銀行が米国の制裁から適用除外とされることになったようです。
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20120221k0000e030167000c.html

(引用開始)
 日米両政府は、イランの中央銀行と取引のある外国金融機関を対象とした米国の制裁から邦銀を除外する方向で大筋合意した。イラン産原油の輸入をこれまで以上のペースで削減するとの日本側の方針を米側が評価。米政府は22日以降、米議会に対し、日本との協議内容を説明し、理解を求める。両政府は月内に適用除外を発表する。

 日本政府関係者によると、これまでの協議で日本側は、イラン産原油の輸入量について過去5年で約40%削減してきたことを説明。日本側が協議で示した具体的な削減量は明らかになっていないが、これまでを上回るペースで削減を進められる見通しを伝えたことから、米政府も適用除外に前向きな姿勢を示したという。
(引用終わり)

一気にイラン産原油の輸入禁止になったら日本経済は大混乱でしたが、とりあえず、そうはならなくてよかったと考えるべきなのでしょう。アメリカ様にお目こぼししていただけるとは、何と有難き幸せでしょうか。。。属国ですから、ねぇ。


さて、そんな中。

イラン映画『別離』がアカデミー賞外国映画賞にノミネートされていて、受賞が期待されています。



非常に評価が高い映画で、既に、例えばベルリン国際映画祭で最高賞である金熊賞、女優賞・男優賞の2つの銀熊賞の計3部門で受賞を果たすなど、多数(現在までに40以上)の国際映画賞を受賞しているそうです。日本での一般劇場公開は2012年春からとのこと。

ストーリーは、Wikipediaより。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%A5%E9%9B%A2_(2011%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%98%A0%E7%94%BB)

(引用開始)
ナデルとシミンは14年来の夫婦で、7歳の娘テルメーとテヘランで暮らしている。家族は中産階級の上流に属し、夫婦は離婚の淵に立たされている。シミンは夫と娘とともに国を出たいのだが、ナデルはアルツハイマー型認知症を患う父のことを心配し、国に留まりたいと考えている。そこでシミンは家庭裁判所に離婚許可を申請するが、認められなかったため、彼女は夫の許を離れ娘を連れて母と同居することにする。

ナデルは父の世話のためにラジエーという若く敬虔で貧しい娘を雇う。ラジエーは短気な夫ホッジャトに無断でこの仕事を得ていた。しかしラジエーの家族はこの仕事に依存していた。ある日、ラジエーは事故に遭った娘の容体を医者に聞くため、ナデルの父をベッドに縛りつけ、閉じ込めて出かける。ベッドから落ちた彼は、帰宅したナデルとテルメーに意識不明で発見される。激昂したナデルは、帰ってきたラジエーを怒鳴りつけ、アパートから押し出すが、その勢いでラジエーは階段から転落し、妊娠していた胎児を流産してしまう。
(引用終わり)

日本や欧米の話だとしても違和感のない普遍的なストーリーのように思います。テレビでも少し見ましたが、役者の演技はリアリティが高く見えました。人生を考えさせられる、深く切ない映画のようです。

監督は政府から映画制作を禁じられたこともあったようですがそれも解除され、このような社会問題に光を当てる映画を撮影できたということは、イランが(それなりに)自由のある国であることを証明しています。

マスコミでは、欧米諸国からの制裁を受けても頑なに核開発を続ける危険極まりない怖ろしい国のようなイメージを撒き散らされているイランですが、この映画のように、人々がふつうに考えふつうに暮らしていることを、欧米および日本などその他諸国でも広く再認識されることは、イランへの武力攻撃への静かな抑止力になるのではないかと期待します。


第84回(2012年)アカデミー賞の発表は2月26日(現地時間)です。