トランス脂肪酸のその後 ~ダイオキシン、狂牛病、環境ホルモン そして放射性物質 | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

2/13に書いた『「ピッカピカに輝くチョコレートを作りたい」(すイエんサー) をケミカルエンジニア的に考察してみた』の記事で、トランス脂肪酸のことを以前に書いていたことを書きました。

この機会に、トランス脂肪酸の規制がどうなったのか、調べてみました。
その結果、消費者庁がトランス脂肪酸の表示義務化を先送りしたことがわかりました。

J-CASTニュース
http://www.j-cast.com/2012/01/09118066.html?p=all

(引用開始)
どうなるトランス脂肪酸規制 今後は飽和脂肪酸の方が危ない
2012/1/ 9 10:00

心疾患などのリスクを高めるとされる「トランス脂肪酸」について、消費者庁は2011年夏まとめた栄養成分表示を義務づける指針に盛り込まず、表示義務化を事実上先送りした。トランス脂肪酸の過剰摂取は一時、健康を損ねるとして社会的に問題化し、メーカーや外食産業が対応に追われたが、現状はどうなっているのだろうか。

トランス脂肪酸は、常温では液体である植物油に水素を加え、固体化する過程で生成される。マーガリンやショートニングなどの製造段階で生まれることがよく知られているが、牛乳やバターなど天然の乳製品にも含まれる。洋菓子などの製造時に使うとサクサクした食感が出るといい、パイやケーキ、菓子パンなどに使われることが多い。

WHOが摂取量押さえるよう勧告

しかし、体内に多く摂取すると、悪玉コレステロールを増やして、善玉コレステロールを減少させ、心筋こうそくなどの心疾患が増えることが判明。 世界保健機関(WHO)は2003年、トランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満に押さえるよう勧告した。

そんなトランス脂肪酸に対し、米国やカナダ、韓国などでは食品内の含有量の表示を義務化している。日本でも義務化を求める声があるが、「他国と日本とはそもそも事情が違う」との指摘は強い。

食品安全委員会が日本人約3万人を対象に実施した調査(2003~07年)によると、1日のトランス脂肪酸の平均摂取量は約0.67グラムで、 エネルギー比では平均0.31%だった。これに対し、米国では1.9~2.6%、英国では1.2~2.2%と、日本に比べてかなり大きい。

一方、日本ではメーカーや外食産業が工夫し、実際には加工食品のトランス脂肪酸の含有量はここ数年で大きく減っている。食品安全委が2010年度に実施したマーガリンなどの調査では、2006年度比でトランス脂肪酸は19~95%減少した。業務用ショートニングでは約9割も減ったという。

「日本人を対象とした科学的データが不足している」

過剰摂取は当然、注意すべきではあるが、「むしろ、今気にするべきは飽和脂肪酸の方だ」との専門家の声が高まっている。メーカーなどがトランス脂肪酸を含まない「パーム油」への切り替えを進めた結果、パーム油に多く含まれる飽和脂肪酸の含有量が増える傾向にあるというのだ。飽和脂肪酸を多く摂取すれば動脈硬化の原因になるとされる

消費者庁が、トランス脂肪酸の表示義務化を先送りしたのは、「日本人を対象とした科学的データが不足している」との理由からで、今後も検討が続けられる。ただ、トランス脂肪酸だけに焦点を当てた基準作りは、かえって問題を生み出す結果につながりかねず、食品全体を見据えた慎重な検討が必 要といえそうだ。
(引用終わり)

FOOCOM.netの昨年11/7の記事にも、もう少し詳しい記事が載っています。
http://www.foocom.net/secretariat/observer/5160/

(引用開始)
 トランス脂肪酸をめぐっては、摂取量の多い欧米では冠動脈疾患を増加させる可能性が高いことから、様々な対策が講じられている。日本でも一部の市民団体やメディアの関心が高く、表示について消費者庁でも検討が行われてきた経緯がある。

 そこで日本人の食生活におけるトランス脂肪酸摂取のリスクはどの程度か、食品安全委員会は2010年3月に自ら食品健康影響評価を行うことを決定し、専門調査会で計7回の審議を行い、2011年10月に評価書案をまとめた。評価書案の結論は「日本人の通常の食生活では健康への影響は小さく、脂質に偏った食事をしている人は留意が必要だが、現実の食生活では問題はない」というもので、これまで消費者庁などで説明されている内容と、ほぼ同じだった。

 1日の意見交換会に参加したのは、食品事業者がほとんどで、消費者の関心は薄くなっているという印象を受けた。質疑応答では「ここ数年で食品事業者の努力によってトランス脂肪酸含有量が減少した分、飽和脂肪酸が増加した」という点について、質問が集中した。食品安全委員会の2010年度調査によると、食品企業の低減努力によりマーガリンやショートニング等のトランス脂肪酸の含有量が、ここ数年で全体として数十%減少したことが報告された。しかしその分、飽和脂肪酸の含有量は増加しており、製品によっては2倍以上増えたものもある。

 飽和脂肪酸はもともと心疾患のリスク要因として知られており、新たなリスクが増大しているのではないかと、質疑応答に参加している食品事業者は懸念しているのだが、食品安全委員会の回答は明確ではなかった。また、トランス脂肪酸の摂取量調査を今後も継続して行うべきといった意見も出された。
(引用終わり)

日本らしいエピソードです。

あるひとつの要因の危険性を声高に叫ぶ一部の消費者団体の声をマスコミが取り上げ、それに関心を寄せた一般消費者の声を無視しきれなくなったメーカーは、高い技術と対応力を発揮して短期間で代替品に切り替えた。

しかし、わずか1年もたたないうちに消費者の関心は薄れてしまい、メーカーにとって、この努力は何だったのかと徒労感にさいなまれるだけでなく、代替品の安全性まで問題視されてしまっている。

ダイオキシンや環境ホルモンや狂牛病も、一時期は「ブーム」のように大きく問題視されたけど、実は一部団体が大声で問題視するほど危険でもないことがわかってきて、マスコミが話題にすることもなくなってきたのと似たような経過です。

マスコミはブームの問題を大きく取り上げるほど「売れる」ために、よりセンセーショナルに煽ったということもあるでしょう。また、学者は旬の話題を研究した方が研究費を獲得しやすいということもあると思います。

でも、「研究の結果、危険性は大きな問題ではなかった」という情報は、マスコミにとっては「売れる」ものではないため、扱いも小さくなります。そして、一般人の目に止まることもないまま、単純にいつの間にか忘れ去られているということが繰返されています。


私がずっと購読している安井至先生の「市民のための環境学ガイド」のサイトでは、2000年以前から、このような必要以上に危険性を煽る情報に対して、科学的で冷静な対応を説かれています。

1999年から2002年までのダイオキシン、環境ホルモン、狂牛病(および、どちらかというと逆の観点でマイナスイオン)について、先生が「自選必読ページ」をまとめられていますので、紹介しておきます。

http://www.yasuienv.net/TopicsToRead.htm

「久米さんのダイオキシン報道で風評被害」などという懐かしい話が見つかったりします。
2003年以降もこれらの話題に関する記事は書かれていますので、それはトップページでタイトルを検索して見つけることができます。

ざっと読むと、ダイオキシンについて「ゼロリスク指向」などという言葉が出てきます。

全く同じことが、今、「放射性物質」に対して起きていますね。トランス脂肪酸などはもともと大きなリスクでもないので、一般にはさほど大きな関心も呼ばなかったですが。

科学的に冷静な判断をしないで、いたずらに「ゼロリスク」だけを求める。

これら過去の危険因子に対しては、たいへんな税金を投入して研究や対策が行われましたが、狂牛病や環境ホルモンはほとんど全くリスクなし、ダイオキシンは人間に対しては当初考えられたほどの猛毒ではないことがわかってきています。


恐らく、ダイオキシン、狂牛病、環境ホルモンの危険性を大声で叫んでいた人たちは、現在、放射性物質の危険性を叫んでいる人たちとかなり重なっているのではないかと想像します。これらの問題について今はどう考えているのか、聞いてみたいものです。私は、

「環境問題の専門家」たちは、自分たちの仕事を確保するための確信犯である可能性もあります。私はこういう人たちが警告を発してくれることは悪いことではないと考えます。それに対して、マスコミや政府、そして一般市民が科学的に冷静に対応できるかどうかが、より重要です。


そして、今回の放射性物質の問題は、今までの問題に比べても桁違いに多額の税金を使って対策が行われることになるでしょう。

政府・自治体としては、これら過去の出来事にしっかり学んで、いたずらにゼロリスクを追わないように市民を正しく啓発・誘導し、必要以上に広大な範囲の土を掘り返すという馬鹿げた無駄な作業のために、莫大な税金を使わないでほしいものです。