トルコ 優れた政治家に導かれてイスラムの盟主に ~「クローズアップ現代」より | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

先日のNHK「クローズアップ現代」では「激動 中東はどこへ」として3回のシリーズが放送され、その第三回「トルコ モダンイスラムの挑戦」を見ました。

トルコがイスラムの盟主としてその存在感を高めている、という内容でした。

以下、NHKのサイトから要約します。
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=3131&html=2

人々は今、経済も好調で欧米にも堂々とものを言うようになったトルコをモダンイスラムの希望の星と捉え始めています。

2002年の政権交代でトルコの与党となったAKP=公正発展党。
90年近い国の歴史でイスラム系政党として初めて、単独の政権運営を任されました。

熱心なイスラム教徒として知られるエルドアン首相は、この9年強力なリーダーシップで次々と改革政策を打ち出してきました。

これまでEUへの加盟申請など欧米中心だった方針をイスラム諸国とのつながりを生かしたより中東を重視する政策へ切り替えました。

また、イスラム諸国に限らず近隣国との懸案を一つ一つ解決するゼロプロブレムという理念を掲げ、積極的な対話外交を開始したのです。

それをここ数年でロシアやイラン、セルビアなど10か国以上と、次々と新たな協力関係を構築。
シリアやレバノンなどとは関税を撤廃しEUのような自由貿易圏の創設に向けて動き出しました。

去年の経済成長率は8%を超え、政権獲得以来GDPを3倍に増やして新興国の仲間入りを果たしました。


そして、エルドアン首相の腹心で、戦略立案の要でもあるイブラヒム・カルン首相主席補佐官という方に国谷キャスターがインタビューしているのですが、イスラム世界でありながら市民の人権や自由を大切にすることを明言し、また、したたかな外交戦略も展開するその見識の高さに、こんな政治家が日本にもいればと、うらやましくなりました。

こちらはそのまま引用します。

(引用開始)
カルン首相主席補佐官:
とにかく、社会に権限を持たせることが何よりも重要です。
権限を国家に持たせるのは、20世紀初めまでの古い国家モデルの思想です。
例えば経済や教育、外交などすべてを国家が統制するという考え方でした。

トルコは現在、それを市民中心のモデルに転換しています。
もちろん国家は存在しますが重要なのは社会であり、個人です。
そして、人々の人権や自由が守られることです。

そこでは人々が、さまざまなコミュニティーを通して自分たちが望むとおりのことを実現していくことができます。
法律を守るかぎり、政治組織を作って野党になることも自由です。
そうやって、生き生きとした市民社会や公共の生活が維持され、また、そのことが国家の形をさらに発展させるのだと思います。

(アラブの春について)
あくまで私の見解ですが、逆にトルコはアラブの春によって利益を得る立場にあると思います。
私たちは、アラブ諸国が民主的に繁栄できると信じているからです。
今後も私たちのゼロプロブレム外交の考え方に変わりはありません。

トルコは、中東各国の独裁的な政権と関係を維持してきた唯一の国でしたが、同時に私たちは全く別の外交チャンネルも築いてきました。
つまりその国の社会、一般の人々とも結び付きを深めてきたのです。

要するにトルコは国家としてのシリア、エジプト、イラク、リビアとつきあいながら同時にそれぞれの一般の市民とも交流を温めてきました。
だから独裁政権が倒れたとしてもそれらの国々と良好な関係を維持できると信じています。

(引用終わり)


そして、現在、国内の反政府デモへの武力弾圧で大きな問題となっているシリアのアサド大統領と、家族ぐるみの親交を温めてきたエルドアン首相は、先月末、これまでの友好関係を白紙に戻す苦渋の決断をしました。弾圧をやめようとしないアサド大統領に辞任を要求。近隣のアラブ諸国とともに経済制裁に踏み切ることにしたのだ、と。

深い親交のあった外国首脳とでも、その国の市民の立場から考えて政策が間違っていると判断すれば、たもとを分かつ決断ができる指導者を持ったトルコ人は幸せです。

いつもいつも米国にいいなりのポチとして自らの判断を示すことなくその政策に安易に追随し、良好な関係にあった他国に対してでも、その市民を殺戮する攻撃の手助けをするような政策を取るような指導者しか持てないわが国は不幸です。


9月の初めに、私が脳天気な観光旅行をしてきたトルコ。
http://ameblo.jp/tomamx/entry-11004086870.html#main

確かに、活気があって経済的にうまくいっているな、ということは実感しましたが、それも素晴らしい政治家が国を導いているからだったのですね。


11月10日に起きた地震で「難民を助ける会」の宮崎さんが亡くなられました。そのことについて書いた記事で、この地域はクルド人が多いから「難民を助ける会」のような人たちが支援しなければならないのだろうと書きました。
http://ameblo.jp/tomamx/entry-11075374628.html

しかし、今回もう少しよく調べてみると、こんな記事を発見しました。
http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/News20090813_070747.html

(引用開始)
エルドアン首相、「クルド問題」で歴史的演説
2009年08月12日付 Radikal紙

昨日(11日)の公正発展党会派会議でのレジェプ・タイイプ・エルドアン首相の演説は、多くの点から歴史に残る発言だった。

第一に、わずか10年程前まではこの演説の一部と同し内容を、書いたり発言した人は裁判に訴えられ、その多くが「テロ組織への援助」であるとして、投獄されてた。今日、わが国の首相が同じ発言をしたのである。

第二に、PKKとの戦闘で殉職した兵士の遺族や、PKKに加わった息子を山岳部での戦闘で亡くした遺族に対しての共感が示されたことは、トルコ政治の歴史上、ほとんど例のないことである。

第三に、私には、発言それ自体が「クルド問題解決策」であるように思える。私たちのクルド人同胞は、国の責任者からこのような発言を求め、対等な人間としてあつかわれていると実感することを求めているのである。
(引用終わり)

私が昔の情報しか知らなかっただけで、エルドアン首相は、国内のクルド人問題に対しても、他の民族であっても同じ市民としてその命・人権を守る一貫した態度で対応していたのですね。
素晴らしい政治家と思います。

(もちろん、クルド人問題にしてもシリアとの関係にしても、政治家としてのしたたかな計算もあるのかもしれませんが、それでも政治家はその政策と実現した結果とで評価すればいいと考えます。)


同僚から貸してもらったこちらの本にも、エルドアン首相のもとで今後はトルコがイスラムの主導権を取るだろうということが、最後の結論的に書かれていました。

革命と独裁のアラブ/佐々木良昭

¥1,680
Amazon.co.jp

トルコは親日国ですので、それをうまく活用してこれからもますますトルコとの親交を深めることが外交上、おおいに得策だと思いますが、エルドアン首相に比肩できるような見識ある政治家が日本に見当たらない(ように思える)のが、たいへん残念です。


(なお、この本は2011年7月発行の新しい本で、著者の豊富な経験をもとに、アラブ人・ムスリムたちの思考と社会と国家について平易に書かれており、「アラブの春」も含めて、それらを理解するための良書と思います。)