アメリカの対イラン政策と「アメリカ・イスラエル公共問題委員会」 | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

昨日の記事で、アメリカがイスラエルの核疑惑をもみ消す一方で、イランの核疑惑には制裁を加えるという全く異なる対応をしていることを書きました。そしてこれは「ユダヤ人の陰謀」かと。

しかし、現実にどうやってユダヤ人(イスラエル)がこのようにアメリカを動かせるのかがわからなかったので、調べてみてようやく分かってきました。

こんなこと、知っている人には当たり前のことなのかもしれませんが、中東で仕事をしている私ですが今まで恥ずかしながらよく知らなかったことです。


まず、アメリカには「アメリカ・イスラエル公共問題委員会」(The American Israel Public Affairs Committee=AIPAC、エイパック)というロビイスト団体があります。ロビイスト団体とは、政府の政策に影響を及ぼすことを目的として活動する私的団体です。

Wikipediaに、AIPACの政治目標が書かれています。

(引用開始)
同委員会のホームページによれば、2006年8月現在でのAIPACの政治目標は以下の6つである。

1. ハマースに率いられたパレスチナ自治政府を孤立化させる。
2. イランの核兵器保有を防ぐ。
3. イスラエルを支援し、中東における唯一の民主主義国家を守る。
4. イスラエルを、将来の脅威から守る。
5. (アメリカにおいて)次世代の親イスラエル政治指導者を育成する。
6. アメリカ合衆国議会に対し、米-イスラエル関係に関する宣伝活動を行う。
(引用終わり)

おっと、はっきりと他でもない「イランの核兵器保有を防ぐ」ことが明確に目標に掲げられています。

こんなにはっきりとアメリカ合衆国にとって外国であるイスラエルの政策との共同を掲げる政治団体が「アメリカにおいて、全米ライフル協会をも上回る、もっとも影響力のあるロビイ団体とする報道もある」(Wikipedia)ほどの力を持っているのでしょうか?


その仕組みが簡潔に書かれた記事を二つ引用します。

http://mijikaku.blog67.fc2.com/blog-entry-286.html

(引用開始)
この団体(AIPAC)の目的はイスラエル国家の擁護であり、
その影響力の根源は巨額の資金と組織力で、
主に米議会の議員たちに対して働きかけます。

イスラエルに有利に政策を行う政治家を援護し、
不利な決定を行う政治家には
世論工作などを通じて落選運動などを行い圧力をかける。
イスラエルに不利な報道をするマスコミにも
スポンサーなどを通じて締め上げる。

また、この団体の特徴は
議員達が必要とする情報の提供者となることで、
AIPACのスタッフが議員達の演説の原稿を作成するのを助けたり、
法案を作成する際に助言を与えるなどして
無償で議員活動の援助を行うことで
米議会に食い込んでいます。
(引用終わり)


http://blog.kajika.net/?eid=688562

(引用開始)
その米国を事実上、支配しているのは人口の2%程度のユダヤ系アメリカ人だという。ラテン系、アフリカ系、アジア系などのマイノリティより少ない五四〇万人。人口五〇〇万人のイスラエルが、二億人といわれるアラブ諸国と張り合っているのも不思議だが、米国のユダヤ社会の強大な力はどこからくるのであろうか。

その一つはユダヤ系アメリカ人が米国経済の25%を直接的に動かし、資金投資などの間接的な関与を含めると40%もの影響力を持っている。この経済力を駆使して大統領選挙になると裕福なユダヤ系アメリカ人と団体は、大量の寄付行為をして政治的な影響力を行使してくる。

もう一つは最高の権力となる大統領選挙の制度をユダヤ系アメリカ人は、実に巧みに利用している。ユダヤ系アメリカ人は人口の高い12州に集中して居住している。極端なことをいえば、この12州で勝てば他の州で全敗しても大統領選で勝利する仕組みになっている。民主党のアルバート・ゴア候補が全米の得票でブッシュ共和党候補を五〇万票も凌駕しながら、選挙人投票で25人の選挙人の差で大統領選に敗北した例がある。
(引用終わり)


それでも、2009年1月に書かれたAll Aboutの記事によると、オバマ大統領は当初はロビイストの活動を規制する方針だったようです。

http://allabout.co.jp/gm/gc/293369/2/

(引用開始)
2009年から4年間アメリカ大統領になるオバマ氏は、ロビイストを規制する目標を掲げています。その目的は、選挙期間中から訴えている「変革」の実現のために、既存の政治を象徴するロビイストの影響力をなくすことです。

すでにオバマ政権への政権移行チームは11月にロビー活動を規制するための倫理規定を発表しており、その内容は(1)ロビイストから政治家への献金・贈与の禁止、(2)過去1年間にロビー活動に従事した人物が関連分野の政策決定に関与することへの禁止、(3)政権移行業務に従事した後、新政権に対して関連分野のロビー活動を行うことの1年間禁止、などとなっています。
(引用終わり)


しかし、今年の7月にはこのようなことが書かれています。

【ニッポンの講演】冷たい米・イラン関係と熱を増す制裁強化の動き
http://nonfiction-j.com/%E5%A4%96%E4%BA%A4%E3%83%BB%E5%9B%BD%E9%9A%9B/3208

(引用開始)
 来年のアメリカ大統領選挙をにらんでのアピールが議会から、そしてオバマ大統領自身からも出ております。一つはAIPAC、アメリカイスラエル公共委員会への接近でありまして、この親イスラエル政策を標榜するロビー団体への接近が再選を保証する、ないしは新規の候補者であれば大統領の職務への近道、ないしはその切符ということになってくることかと思いますけど、最近、オバマ大統領もここにきまして年次総会でイスラエルの生存権を確認するとともにイスラエル防衛へのコミットメントを強化するという話しをしております。
(引用終わり)

 前回の大統領選挙では絶大な人気を誇り、ほとんど個人献金だけでロビイストからの献金を受けずに大統領になれたオバマは、その当時はロビイストの活動を制限する方針を意気揚々と掲げていたけれども、人気が落ち目になって次期大統領選挙が近づいてくると変節してしまい、最大のロビイストであるAIPACに頼らざるを得なくなって、親イスラエル・反イランの政策に舵を切ったということなのでしょう。

 上記の記事を書かれたのは、田中浩一郎 財団法人日本エネルギー経済研究所中東研究センター理事兼中東研究センター長。この記事が書かれたのが2011年7月2日で、その最初にはこのようなことが書かれています。

http://nonfiction-j.com/%E5%A4%96%E4%BA%A4%E3%83%BB%E5%9B%BD%E9%9A%9B/3181

(引用開始)
 アメリカとイランの関係は国交がないまま31年経っております。2009年から2010年の頭ぐらいまでにかけては一応、イランとアメリカとの間の対話という機会ももうけられ、なんらかの形でそれが継承されるのではないかという期待もあったわけでございますけれど、それが今、また違う局面を迎えている。イランの核開発、これは彼らが言うところでは平和利用目的であり、欧米それから安保理が現在、制裁を科していることからおわかりの通り、こちらの側では兵器転用ということを前提に見ているわけでありますけれども、そのプログラム自体は前に進んでいるという情勢をIAEAの最新報告を使いながら報告したいと思います。そして、こうしたイランの核兵器開発疑惑に関してもっとも厳しい見方をするのがアメリカでありますけれども、その中でも最近出たニューヨーカーの記事などではですね、アメリカの見方が相当凝り固まっているのではないかという情報筋の方からの声を拾い上げて一石を投じておりますので、そこをご紹介させていただきたいと思います。
(中略)
 それからサウジアラビアというイランとして、ペルシャ湾をはさんで両側に対峙するもう一つの大国が、まぁ、アメリカとの関係もいろいろありますけれど、ここ何カ月間のもっぱらイランとの間での非常に厳しい対決姿勢がありまして、このサウジアラビアとアメリカ、それからイラン、これが三すくみでどう動くかによって恐らく次の制裁の道筋にも影響が及ぶであろう。
(引用終わり)


10月11日には、米国で、駐米サウジ大使暗殺計画容疑によりイラン特殊部隊員が起訴されるという事件が起きました。
http://ameblo.jp/tomamx/entry-11046457335.html

これはある意味、このような「事件」が起きることを田中氏が「予言」していたと言えるのかもしれないと思って、驚きました。

その後も、

10月31日には、ユネスコがパレスチナの正式加盟を認め、米国は分担金を凍結
http://ameblo.jp/tomamx/day-20111104.html

11月10日には、IAEAがイランの核兵器開発の証拠を示し、米国が独自に制裁の方針
http://ameblo.jp/tomamx/day-20111110.html

と、米国がユダヤ人ロビイストAIPACの意向に沿ったと思われる動きを続けています。これも米国の次期大統領選挙が近づいてきたからなのだとすると、本当に米国は世界の平和を乱す元凶だと言わざるを得ません。

世界が平和であることを心から望みます。