『マンガのようにふっくら分厚い ホットケーキを焼きたぁ~い!!』 ~「すイエんサー」より | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

NHKの番組「すイエんサー」、思わぬ視点の疑問を「すイエんサーガールズ」が専門家の協力を得ながら科学的に解決するというバラエティで、うちの子供たちが好きなのですが、実は私も結構好きです。

今回の課題は『マンガのようにふっくら分厚い ホットケーキを焼きたぁ~い!!』

結果としては、分厚いホットケーキを作るのに成功した!……ということになっていますが、よくよく考えると(こんなことをなぜよく考えているのか←自分:笑)疑問も生まれてきたので、色々調べて考察してみました。


いつも思っているのですが、調理とは化学反応を伴うプロセスであり、また熱の移動がきわめて重要であるという点で、私の専門であるケミカルエンジニアリングの視点で見えてくるものが多々あります。

今回、ホットケーキを焼くことをケミカルエンジニア的視点で考えてみました。


まず、この番組では、牛乳のかわりに豆乳、さらには豆腐を使うことで、分厚いホットケーキが焼けるとされていました。

しかし、まず豆乳を使うことについては、ネットで調べた結果(そんなに真剣に探してないけど)、豆乳でもホットケーキが焼けることを書いたサイトは多数ひっかかりましたが、豆乳によって分厚く焼けると書かれているサイトは、今回の「すイエんサー」関係以外に見つかりませんでした。

それから、豆腐を使う方法については、生地の粘度が高く(粘り気が強く)なって流れないで厚く盛ることができるため、一応、有効だろうとは思います。(番組では、にがりがたんぱく質と反応して…とかちらっと解説していましたが、本当かな?と思います。)

調べると、実際に「すイエんサー」に従って豆腐ホットケーキを作ってみた人のブログがありました。厚さ3.2cmもあったとか。

http://maroka3.exblog.jp/16722610/

でこれがその写真↓。

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確かに厚いですが、これ、ホットケーキ?(笑)ホットケーキのふっくらふわふわ感が全然なさそう。
ご本人も「蒸しパンぽい」と書かれています。

また、豆乳や豆腐を使ったときのホットケーキの味については、たいてい「あまり感じられない」とされていますが、やはり全く同じとは言えず、牛乳の方が美味しいでしょう。

以上より、分厚いホットケーキを作るのに、牛乳の代わりに豆乳や豆腐を使う方法は邪道と考え、個人的には却下(!?)とします。


「すイエんサー」では、もうひとつ面白い方法を使っていました。

それは、大きさの異なる2枚のフライパンを重ねて使う、という方法です。

なぜこれが有効なのか、科学的に考えてみました。そのためには、そもそもなぜホットケーキはふっくらとするのかを知らなければなりません。

調べたら、そのわかりやすい説明は、NHKの「ためしてガッテン」のサイトにありました。

http://www9.nhk.or.jp/gatten/archives/P20090318.html

『食の?にお答えします ~夢の新レシピ大公開~』

(引用開始)
都内在住のAさんは、市販のホットケーキミックスの箱に載っている写真のように、ふっかふかのぶ厚いホットケーキを焼いてみたいと思っています。しかし、レシピ通りにやっても、なぜかはじっこがペシャンコでどら焼きのようなホットケーキになってしまうのが不満でした。

そこで、ホットケーキミックスのメーカーの担当者に作ってもらうと、同じレシピで作ったにも関わらず、はじっこでも厚さが2センチもある夢のホットケーキを焼き上げたのです。

はじっこがペシャンコのホットケーキ。実はこれは「臆病者のホットケーキ」とも言えるもの。なぜなら「黒こげ」と「生焼け」を避けることを第一に焼いた結果、できあがってしまうものだからです。
そこで注目したのが、ホットケーキミックスに含まれる「ベーキングパウダー」。夢のホットケーキへ近づくために、この「ふくらし粉」の性質を調べてみましょう。

ベーキングパウダーの研究所を訪ねると、ホットケーキをふくらませるには、ある「重要なもの」が必要であると言います。それは「炭酸ガス」。

ベーキングパウダーを容器に入れ、熱湯を注ぐと、大量の炭酸ガスが発生します。水ではこのようなことは起こりません。つまり、ぶ厚いホットケーキを焼くには、フライパンの温度が高くなっている必要があるのです。

ところが、Aさんとメーカーの人がホットケーキを焼いている時のフライパンの温度を調べると、大きな違いはありません。それなのに、2人がホットケーキを裏返す瞬間を見ると、ふくらみ具合に大きな差があるのです。

さらに2人の作業をよく見てみると、「フライパンの予熱時間」と「ぬれフキンで冷ます時間」に大きな違いがありました。予熱時間は、Aさんは40秒でしたが、メーカーの人は1分8秒。冷ます時間は、Aさんは6秒でしたが、メーカーの人は2秒でした。これが原因となり、「フライパンに生地を入れる瞬間の温度」に、大きな差が出ていたのです。

高温で生地を入れると、ベーキングパウダーが強く反応し、炭酸ガスが大量に発生します。このガスがどんどん生地を持ち上げて、ホットケーキを一気に上へふくらませます。

このとき、ホットケーキの上のあたりの生地は熱源から一気に離れることができたため、まだやわらかい状態です。ここで裏返すと、再び炭酸ガスが発生し、さらにふくらみます。

ところがAさんのように低温だと、炭酸ガスが充分に発生しないため、まず横に薄く広がります。さらに、薄くなったぶんだけ、熱が上まで通りやすくなって生地全体が固くなります。すると、後でフライパン温度が上がっても時すでに遅し。裏返しても、もう上にはふくらまないのです。
(引用終わり)

なるほど。
分厚くてふっくらしたホットケーキを焼くには、フライパンの温度が最重要ポイントでした。

ここまできたら、せっかくですので、もう少し科学的に考えましょう。

そもそも、「ベーキングパウダー(ふくらし粉)」とは何でしょう?
東京ガスのサイトにわかりやすい説明がありました。

http://home.tokyo-gas.co.jp/shoku110/shokuzai/140.html

ベーキングパウダーの最も重要な成分は、重曹(重炭酸ソーダ、NaHCO3)です。
重曹は、熱で分解して、炭酸ナトリウムと炭酸ガスと水を発生します。

 2NaHCO3 → Na2CO3 + CO2 + H2O

ベーキングパウダーは、重曹、助剤(酸性剤 HXと書きます。Xは色々ありえます。)、分散剤とから成ります。ベーキングパウダーの重曹が熱分解する場合の反応は、このような式になります。

 NaHCO3 + HX → NaX + CO2 + H2O
 
重曹が分解して生成する炭酸ナトリウム(Na2CO3)はアルカリ性で、生地の着色を促進し黄色く色づけ、また独特の臭気と苦みがあります。ベーキングパウダーでは、助剤によって重曹を使った場合の問題点(黄色、臭気、苦み)を改良してあります。分散剤は、保存中にこれらが反応しないように隔てておく目的で、主にでんぷんが使われるようです。

助剤の種類や組み合わせにより、最も適した温度やスピードでガスを発生させることができる、とのことです。

ほほう、勉強になりました。


さて、分厚いホットケーキを焼くプロセスは、

・予熱した高温のフライパンに生地を落とすことで、一気に炭酸ガスを発生させて気泡をつくる。
・これにより、生地がだらだらと横に流れることが防げる。
・また、炭酸ガスによる気泡が断熱材の役目をして、上側の生地は加熱されていない状態を維持できる。
 これをひっくり返すと、裏側もまた一気に炭酸ガスが発生してふくらむ。

ということのようです。


そこで、問題になるのがフライパンを予熱して「高温」にすること。

単にフライパンをガスコンロで加熱すると、火が当たっているところとそうでないところとで温度のむらが出来てしまいます。これを解消するのが、従来法では「ぬれフキンで冷やす」ことです。

しかし温度が下がりすぎると本末転倒。そこで、「ためしてガッテン」のプロはたった1秒しか冷やしていません。

「すイエんサー」では、2枚のフライパンを重ねて使うことで、加熱のムラをなくすという、面白いアイデアを採用しています。温度は確か、160℃といっていました。

それなら熱伝導率のいい銅製のフライパン(!?)でホットケーキを焼いたら美味しく焼けるのでは?と思ってググったら、記事がありました。

http://ameblo.jp/takisaburou/entry-10731528399.html

「左が鉄製 右が銅のフライパンで焼いたホットケーキです」

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確かに、銅製だときれいに焼けています。(まぁ、腕の問題もあるでしょうが。)


では、熱伝導の悪いステンレス製のフライパンだと焼きにくいだろう、しかし多層構造のステンレスならどうか、テフロンコーティングは…と、調理器具の選定も重要ですね。

さらに、ガスコンロとIHとではどうかも気になるところです。
ガス会社は、IHの方がむらができる、電力会社はIHだとむらができない、と言っているようです(笑)。

ホットケーキを焼くことひとつをとっても奥が深く、きりがないので、このくらいにしておきます。

(フライパンや鍋の材質については、いずれしっかりエンジニアリング的に考察してみたいと思っているテーマです。)


最後に、分厚いホットケーキを焼く私独自のアイデアを披露します。

ホットケーキの生地を冷やしたらどうでしょう?粘度が高く(粘り気が強く)なって、豆腐で作ったときのように厚く盛れるのではないかと思います。

ベーキングパウダーを混ぜてから時間が経つと効果が低くなるようなので、牛乳などの材料を先にキンキンに冷やしておく方がよいかもしれません。(うまく混ざらないかなぁ?)

焼くのだから温度が上がって効果がないとも思えますが、焼けた側が断熱材になるのなら、うまくやればより分厚いホットケーキが焼けるかも。

どなたか試してみてくれませんか?

2014.6.8 追記 東日本大震災支援のお返し セルビア洪水復興支援にご協力を!!