ちょっと遅い記事ですが…、
福島第一原発の事故を受けて、エネルギー基本計画の見直しについて議論するため、10/3に「総合資源エネルギー調査会・基本問題委員会」が開催されました。
その委員の人選等について、事前に色々取りざたされていました。
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20111008-01-0901.html
(引用開始)
この委員会は経産大臣にエネルギー政策についての助言を与える諮問機関で、基本問題委員会は福島第一原発事故を受け、日本のエネルギー政策のあり方を基本から議論するために、この6月に設置が決まったもの。既に環境ジャーナリストの枝廣淳子氏や京都大学の植田和弘教授などいわゆる「反原発派」の委員の就任が内定していたが、委員17人のうち14人は基本的に原発推進派と見られ、特に脱原発の立場を取る菅直人首相周辺からは委員会の中立性が疑問視されていた。
今月、「死の街」、「放射能つけちゃうぞ」などの発言で経産相を辞任に追い込まれた鉢呂氏は、辞任直後のメディアとのインタビューで、同委員会に反原発派を9人から10人を新たに任命する意向だったことを明らかにした。このため、鉢呂氏から経産相を引き継いた枝野幸男氏の人選が注目されていた。
新たに委員に任命された5人は、飯田哲也環境エネルギー政策研究所長、大島堅一立命館大学教授、伴英幸原子力資料情報室共同代表、八田達夫大阪大学招聘教授、阿南久全国消費者団体連絡会事務局長。八田氏を除く4人は、いずれも原発に反対する立場を取ることで知られる。また八田氏は電力の発電・送電分離論者として著名だ。
飯田氏や大島氏の委員任命を画期的と歓迎する向きもある一方で、新たな5人を加えても、委員会内の力関係は圧倒的に原発推進派が多数を占める以上、結論は見えているとの指摘も聞こえてくる。
最終的には委員会の審議が公開されるかどうかが重要になってくるとの見方が強い。
(引用終わり)
枝野経済産業大臣は官僚の言いなりだとの批判もある中、このきわめて重要な委員会がどのように進むのか、注目です。
まず、審議の公開についてですが、何とニコニコ動画で生中継されたようです。
ここで今でも見ることができます。
http://live.nicovideo.jp/watch/lv65365358
国政の公開に積極的な枝野大臣なのでやってくれると思いましたが、これはすごいことです。
各委員が何を言ったのか、日本中、世界中に公開されますので、密室で何かを決めることはできません。この流れは国民にとって非常に好ましいことと考えます。
ただ、一方でせっかくの議事録にはそれぞれ誰の発言なのか、全く書かれていません。
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihon_mondai/001_giji.html
これは全くいただけないですね。
動画で公開しているから、議事録は手抜きということでしょうか。
さて、各委員はどんな人たちでしょうか?リストは次の通り。
阿南久 全国消費者団体連絡会事務局長
飯田哲也 NPO法人環境エネルギー政策研究所所長
植田和弘 京都大学大学院経済学研究科教授
槍田松瑩 三井物産(株)取締役会長
枝廣淳子 ジャパン・フォー・サステナビリティ代表 幸せ経済社会研究所所長
逢見直人 日本労働組合総連合会副事務局長
大島堅一 立命館大学国際関係学部教授
柏木孝夫 東京工業大学大学院教授
金本良嗣 政策研究大学院大学教授・学長特別補佐
北岡伸一 東京大学大学院法学政治学研究科教授
橘川武郎 一橋大学大学院商学研究科教授
河野龍太郎 BNPパリバ証券経済調査本部長・チーフエコノミスト
榊原定征 東レ(株)代表取締役会長
崎田裕子 ジャーナリスト・環境カウンセラー NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット理事長
高橋洋 (株)富士通総研主任研究員
辰巳菊子 公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会理事
田中知 東京大学大学院工学系研究科教授
寺島実郎 (財)日本総合研究所理事長
豊田正和 (財)日本エネルギー経済研究所理事長
中上英俊 (株)住環境計画研究所代表取締役所長 東京工業大学統合研究院特任教授
八田達夫 大阪大学招聘教授
伴英幸 認定NPO法人原子力資料情報室共同代表
松村敏弘 東京大学社会科学研究所教授
三村明夫 新日本製鐵(株)代表取締役会長
山地憲治 (財)地球環境産業技術研究機構理事・研究所長
ググったところ、この顔ぶれを、以下のように分類しているサイトが多く引用されています。
http://hibi-zakkan.sblo.jp/pages/user/iphone/article?article_id=48192627
(引用開始)
○:反東電・脱原発 6人
△:恐らく原発容認 2~3人
×:原発村グループ 16人
反原発・脱原発関係は以下6人
○ 飯田哲也、大島堅一、伴英幸、八田達夫、植田和弘、崎田裕子
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
△ 逢見直人
日本労働組合総連合会(連合) 副事務局長
△ 中上英俊(御用学者だが原発可否判断なしの省エネ推進)
▲ 橘川武郎(御用学者 自然エネルギー推進?)
「運転ミスが事故を起こした米スリーマイルアイランド原発などとは違う」と、東電の過失を全面的に押し出すことを疑問視
「石炭火力の効率化技術では日本は世界一。資源小国として選択肢を残しておくべきだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
× 槍田松瑩(長老クラス)
http://pfx225.blog46.fc2.com/blog-entry-44.html
× 枝廣淳子(原発村の隣人)
東電CM出演、原発推進派のバイブルとなった「不都合な事実」を翻訳した
× 北岡伸一(原発村の外交官)
親米外務官僚、清和会、核密約
武器輸出や集団的自衛権の行使(日本の国連安保理常任理事国入り目指す)
× 豊田正和(原発村の住人)
元経済産業省審議官 原発輸出を推進
× 阿南久(原発村に迷い込んだ人)
専門知識なし。「福島県産の牛肉を避けるのは行き過ぎ」との発言
× 柏木孝夫(村長クラス)
http://www.toyota.co.jp/jp/vision/message/conference/080611_professor_prof.pdf
× 金本良嗣(御用学者 原発推進)
原子力発電を維持していくとすれば、今回の事故を教訓に、原子力発電の安全性を高めなければならない。
建設済みの原発を稼働させないことのロスは非常に大きい。
× 河野龍太郎(東電から来た人)
東京電力技術開発本部技術開発研究所
× 榊原定征(経団連 原発村の村長クラス)メンバーをよくご覧あれ~
国際公共政策研究センター http://cipps.org/group/index.html
× 辰巳菊子(原子力委員会おかかえ原発賊)
総合資源エネルギー調査会 電気事業分科会 原子力部会 放射性廃棄物小委員会
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/kettei/kettei070626_2.pdf
× 田中知(長老クラス)
現 日本原子力学会 会長
× 寺島実郎(生粋の原発賊)
経産省資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会委員
「原発再稼働なければ電力不足」と試算した日本総合研究所 会長
× 豊田 正和(村長クラス)
元経産審議官、元内閣官房宇宙開発戦略本部事務局長、元内閣官房参与(国際金融問題担当)
http://eneken.ieej.or.jp/press/president/toyoda_cv1104.pdf
風評被害が地震、津波、原発事故に次ぐ4番目の災害だ http://japanecho.net/jp/topic/0068/
× 松村敏弘(原発村の住人)
原発の稼働率目標80%が低すぎ、恥ずかしい数字だと批判。柏崎刈羽の原発が、
地元の反対によって地震後止まっていることについて、原子力の安全性と直接関係のない
トラブルまで公表する必要はない、といった趣旨の発言。
http://tanukinosato.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/post-be6a.html
× 三村明夫(長老クラス)
http://pfx225.blog46.fc2.com/blog-entry-44.html
× 山地憲治(原発賊 東電擁護)
電力中央研究所 出身
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2011/siryo29/siryo8.pdf
(引用終わり)
25人のうち、反原発・脱原発論者はわずか6人!?
これでは、審議の結果は見るまでもないことになってしまいます。
実際のところ、どうなのでしょうか?発言を書き起こしてくれたサイトを見つけました。
http://vektavekta.blog.so-net.ne.jp/2011-10-03
http://vektavekta.blog.so-net.ne.jp/2011-10-04
しかしこのサイト、現時点で①②でまで書かれていますが、残念ながら途中までです。それ以降は、自分でニコニコ動画を見ました。
以下、各委員の発言について印象的なひとことだけ記述し、私自身の判断で、
★ 原発推進派
△ 現実派=当面は安全を確実に確保しながら原発の稼動もやむを得ないが、中長期的には脱原発。
☆ 反原発・脱原発派
と分類してみます。
☆阿南久 委員 全国消費者団体連絡会事務局長
「原発をできるだけ早くゼロにするしかない」反原発派に見えます。
☆飯田哲也 委員 NPO法人環境エネルギー政策研究所所長
「前のエネルギー基本政策を作られた方が委員長というのは、国民の目線から見たとき正統性に疑問」反原発派。
☆植田和弘 委員 京都大学大学院経済学研究科教授
「電力エネルギーシステム全体の再設計展望を示す必要がある。」
今回の発言だけではよくわからないですが、間違いなく脱原発派なのでしょう。
★槍田松瑩 委員 三井物産(株)取締役会長
「原発は世界に400基以上。中国でも昨年1月1日で11基、36基が建設中・計画中。この先新興国ではさらに数が増えていく現実から目を逸らすわけにはいかない。」原発推進派。
☆枝廣淳子 委員 ジャパン・フォー・サステナビリティ代表 ・幸せ経済社会研究所所長
「本当の幸せとは何なのか?」上記評価とは異なり、現在は脱原発派のようです。
△逢見直人 委員 日本労働組合総連合会副事務局長
「短期的には既存の発電設備を有効活用、中長期的にはエネルギーのベストミックス。」
現実派でしょう。原発推進論者とまでは思えない。
連合の組織員も多くは脱原発派でしょうから、あまり原発擁護はできないのではないでしょうか。
☆大島堅一 委員 立命館大学国際関係学部教授
「原発を止める事でコスト面でのベネフィットが大きい。」反原発派。
★柏木孝夫 委員 東京工業大学大学院教授
「世界の趨勢で新興国は工業化を目指している。選択肢を減らさないことが大事。」原発推進派。
△橘川武郎 委員 一橋大学大学院商学研究科教授
「現実性とは、原子力のリアルな畳み方。一方で産業構造を考えると原発再稼働を視野に入れる。
地元自治体が納得する安全基準を出す。」
ニコニコ動画での公開を提案。現実派。
△河野龍太郎 委員 BNPパリバ証券経済調査本部長・チーフエコノミスト
「方向性は脱原発。ただしそのスピードは経済への影響を最小限に抑えるようにすべき。」現実派。
★榊原定征 委員 東レ(株)代表取締役会長
「福島の原発事故は大変不幸な事故だったが、経験と教訓を活かし、日本の科学技術力を駆使し、原発の安全性を高め、進化させ、世界に示すべき」原発推進派。
△崎田裕子 委員 ジャーナリスト・環境カウンセラー ・NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット理事長
「原発は安全に運転するという前提が崩れた今、できるだけ再生可能エネルギーを増やしていくことを徹底する、当分の間、基幹電源として(原発含めた)多様な電源を安全に使っていく」現実派。
☆?高橋洋 委員 (株)富士通総研主任研究員
「シンクタンクで電力政策の研究をしている。個別の話は次回以降。」
調べてみたら、スマートグリッドを推進している人のよう。そうだとすると、脱原発派かと。
☆辰巳菊子 委員 公益社団法人日本消費生活アドバイザー ・コンサルタント協会理事
「全ての国民が安心できる暮らしを望んでいる。持続可能な暮らしこそ安心できる暮らし」反原発派。
★田中知 東京大学大学院工学系研究科教授
「中国・韓国・インドでの原子力の拡大。わが国の国際貢献、協力が大事」原発推進派。
★寺島実郎 (財)日本総合研究所理事長
「安心・安全なエネルギー体系をどう組み立てるかという問題意識に加え、強靭な産業経済国家として日本をどのようにしていくかという思想的な確認が重要。」原発推進派。
★?豊田正和 (財)日本エネルギー経済研究所理事長
「日本のエネルギー安全保障の状況は悪化。国際的な視点で定量的議論を。」
発言だけからは中立に見えるが原発容認派?
△中上英俊 (株)住環境計画研究所代表取締役所長 東京工業大学統合研究院特任教授
「需要構造の分析を。徹底した省エネを追求すべき」中間派。
☆八田達夫 大阪大学招聘教授
「指定数量契約ができない、新会社が余分に発電したら没収されるなど、現在は仕組みが悪い。
CO2削減は余地の大きい中国など外国において日本が貢献すべき。」脱原発派。
☆伴英幸 認定NPO法人原子力資料情報室共同代表
「使用済み核燃料の処理方法が確立されていない。恩恵を受けない後世に何万年も負担を強いる」
反原発派。
△松村敏弘 東京大学社会科学研究所教授
「電力市場の歪みが、再生可能エネルギーの導入を不当に抑制してきた。ガスシフトも選択肢。」
中間派。
★三村明夫 新日本製鐵(株)代表取締役会長
委員長。原発推進派。
★山地憲治 (財)地球環境産業技術研究機構理事・研究所長
(欠席?)原発推進派。
私の見た限りでは、こんな感じです。
★原発推進派 槍田 柏木 柏木 榊原 田中 寺島 豊田 三村 山地
△現実派・中間派 逢見 橘川 河野 崎田 中上 松村
☆反原発派・脱原発派 阿南 飯田 植田 枝廣 大島 高橋 辰巳 八田 伴
結構、勢力は拮抗しているように思います。
昔は原発推進派だったのに、3.11以降に状況が変わって見解を変えた人もいるのかもしれません。特に一般消費者に近い人にその傾向があるように思えます。まぁ、それはそれでよしとしましょう。
福島第一原発の事故を受けて、エネルギー基本計画の見直しは絶対に必要で、そのためにこの委員会が開催されたことはたいへん好ましいことです。
しかし、このように全く意見が異なり、歩み寄りを見せそうもないメンバーを集めて議論して、どんな結論が出るというのでしょうか。この委員会の先行きは全く見通せません。
(これは批判のつもりではなく、単純疑問というか、ちょっとため息です。)
さて・・・、
この会議で枝野大臣は、官僚が変わっていないとの批判に対し、「大臣が変わった。官僚は大臣のミッションに従って仕事をする」との強いメッセージを出していました。
菅直人前首相の頭ごなしの「政治主導」に官僚が反発して動かなくなったのを、官房長官として間近に見ていた枝野氏。
(その前には国民からは人気のあった長妻氏も、官僚に嫌われた結果、大した仕事が出来ませんでしたね。)
枝野氏は「改革派官僚」古賀茂明氏を切ったことで批判もされましたが、逆に古賀氏を重用することで他の大勢の官僚たちが反発して働かなくなることを嫌ったのかと。
今回の委員会でも、反原発論者の数を前任の鉢呂氏時代に想定していた人数よりも減らしたとのことですが、これも官僚の意見に従ったものかもしれません。
そして、妥協できるところでは妥協して経産省の官僚たちに恩を売ることで、彼らをうまく使いながら自らの政策を実現しようとしているのだろうと、「新党さきがけ」時代から枝野氏に注目してきた私は(勝手に、いい方向に)解釈しました。
しかし、これはなかなかのイバラの道。
国益よりも省益を優先し、先輩たちの顔色をうかがい、自分たちの天下り先を確保しようと悪知恵を働かせる官僚たちに、枝野氏がどこまで対抗して、自らの思う政策を実現させられるのか。
枝野氏は本来、官僚とのしがらみのない政治家ですから、国民の大多数が脱原発を指示していることがわかっているからには、政権の支持率を高めるためにも、その方向に誘導しようとしているはずです(と信じます)。
この委員会では、経産省官僚の言う通りに反原発派の委員の人数を減らしても、結局、脱原発の意見が優勢になったではないか、という結果が出ることを計算しているはずです(・・・希望的観測?)
したたかな官僚を使いこなし、意見のまとまりそうにない委員会をまとめて、「エネルギー基本計画」という今後の日本の方向性を左右するきわめて重要な政策をどのように確立するのか、枝野氏の手腕にも注目しなければなりません。