NHKスペシャル「シリーズ日本新生第一回 どう選ぶ?わたしたちのエネルギー」という番組を観ました。ちょっと途中からだった(汗)
26日、再生可能エネルギー固定価格買い取り法案が成立する見込みです。
この番組では、スペインとスウェーデンの事例を紹介し、日本はどうあるべきかを問いかけました。
(番組紹介開始)
再生可能エネルギー固定価格買い取り法案では、再生可能エネルギーを、電力会社が、国が決めた固定価格で、その全量を買い取ることを義務付けます。
同様の法律は、80以上の国と地域で実施されていると。
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スペインの事例:
自然エネルギーの固定価格買い取り制度は17年前に始まった。
自然エネルギーが占める割合を10%にする目標で始まったが、現在は15%を占める。
風力発電量は1万倍になり、発電所は1000箇所以上となった。
スペインでは、発電と送電を分離。送電会社はひとつで、発電会社を統括している。
不安定な自然エネルギーを火力発電で補うなどの指令を行うことで電力を安定供給している。
関連企業は1000社以上になり、ワインを越えるスペインの一大産業に成長。
新たな技術や世界トップクラスの風車メーカーも生まれた。
問題は、買い取り価格をどう設定するか?
買い取り価格を6%上げたところ、参入が急に増え、買い取り費用が1年で65%増加。
スペインでは電力料金に上乗せできない制度になっているので、年間4200億円の赤字に。
そこで買い取り価格の引き下げを行ったが、これによって収入が減り、参入したのに借金が返せない業者が増えた。そこで、政府は電力料金の引き上げを決定。
それでも、政府は自然エネルギー開発がスペインにとって必要との信念を持っている。
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太陽光発電や風力の安定供給のための対策は、できるだけ面積を増やすこと。
どこかでは晴れているし、どこかでは風が吹いている。
日本ではコストを電気料金に上乗せできる。
2020年度に再生可能エネルギーを20%にしたときの電気料金の試算。
現在の家庭で6,600円/月として、原発0%なら7,177円、15%なら6,902円、30%なら 6,628円と。
試算の前提により計算は変わる。
原発事故の賠償、核燃料の処理を加味すると、原発を減らした方が価格が安くなる計算にもなる。
この程度の料金アップなら、家庭では、原発を止められるのであれば喜んで出すのではないか。
一方で、企業にとっては死活問題で、そのコストを吸収していけるのか?
今の電気代はその根拠がわからず、それがフェアなのか誰もわからない。
電力のコストを誰が監視するのか?電力会社に対する不信感が強い。政府が明らかにする必要がある。
個人が自分たちで資金を出して自然エネルギーを普及させようという動きもある。
(おひさまファンドのこと?)
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スウェーデンの事例
あるハンバーガーチェーン店が、全ての電力を自然エネルギーで賄うことにして注目を浴びている。
最大手に比べて商品の価格は2割高いが、売り上げを伸ばしている。
スウェーデンでは市民ひとりひとりが水力、風力、原子力などから発電方式を選べる。
選択する市民が多いほど、その会社にお金が流れる仕組み。
紹介されていたある人は、最近、自分の家庭で買う電力を原子力から風力100%に替えた。
電気料金は月約2万円。風力を選択して2割上がったが、社会の変化につながればと選択した。
スウェーデンの電力政策は、半世紀にわたって試行錯誤してきた。
工業国で貿易立国。資源はない。1950年代から原発を推進。
スリーマイル事故をきっかけに、世論がおおきく分かれ、1980年に国民投票。
30年後までに全ての原発を廃止することを決定した。
しかし脱原発は進まなかった。他の方式がみつからないということが理由。
1991年には、原子力発電が電力の51%を占めた。
電力を自由化することに電力会社が抵抗していたが、政策を転換。
地域独占状態から、新規発電会社・小売会社ができ、消費者が選べる方式に転換した。
発電コストも公開。これにより、1999年にあった原子力発電所12基のうち2基は廃止した。
現在原発が38%、自然エネは10%に増えた。
福島の事故はスウェーデンにも大きな影響。
「原発を止めたくありませんか?」という自然エネルギー会社のポスターが目立つ。
個人が選択し、その責任を負う。市民は自分たちのパワーをどう使うか自覚すべき。
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携帯電話は会社や料金プランを選ぶ。
電力も選べるようになると、個人が責任を持つことになる。
個人が何かできることはないか、意思表示ができることは大切。
スペインでもスウェーデンでも原発は30%残っている。
原発があってまだ余裕のある間に時間をかけて仕組みををつくることが大事なのでは。
日本はこれからどういう選択をするのか。
原発維持か自然エネルギーかという二者択一ではなく、ベストミックスを我々が造って行く。
国民がどう選択するのか、時間をかけてやる。
国民は自分たちのことと考えて選択する時代になる。
(番組紹介終わり)
全般として、良質の番組であったと思います。
自然エネルギー固定買い取り制度の先進国の事例をしっかり紹介し、日本との違いを考えさせました。
ただ、もっと日本と諸外国の制度の違いを際立たせるべきだと思いました。
日本では、まず発電・送電の分離が実現していません。地域独占会社が存続したままです。
そして、買い取りコストは電力料金への上乗せが認められています。
私のブログで何度も書きましたが、これは3月11日の震災の午前中に閣議決定された法案で、地域独占電力会社の存在を大前提としています。
・原子力発電を今後どうしていくのか
・発電・送電の分離は行うのか
・地域独占会社を解体するのか
・スウェーデンのような使用者が電力を選択できるシステムの導入はしないのか
・不安定性への対応:広域の統括会社の責任で行うのか、スマートグリッド導入促進するのか
・電力料金とコストの透明性をどのように確保するのか
このような重要課題を山積・放置・先送りしたまま、再生可能エネルギー固定価格買い取り法案は成立する見込みです。
まずは第一歩と喜びたいところではありますが、国のエネルギーに対する基本政策が全く不明確なままで末端の制度だけが先行するという、相変わらず何の信念もない行き当たりばったりの政府の対応だと言わざるを得ません。
新しい民主党の代表、すなわちこの国を任せる首相の選挙がもうすぐ行われることになりますが、大震災後この国の重大な転換期を任せるには、どの顔を見てもぱっとしない顔ぶれです。
前原、野田、鹿野、海江田、馬淵、小沢(鋭)・・・。
まともな政治家がいないことが、この国の最大の不幸のひとつですねぇ。