ちょっと前の話になりますが、菅首相が太陽光発電について思い切ったことをぶち上げました。
http://news.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210526015.html
(引用開始)
「住宅1000万戸の屋根に太陽光パネル設置を」。フランスを訪問中の菅総理大臣が、自然エネルギーの推進を打ち出しました。
日本の総理として初めてOECD=経済協力開発機構の閣僚理事会に出席した菅総理は、自然エネルギーを基幹エネルギーにすると強調したうえで、具体策に踏み込みました。
菅総理大臣:「設置可能な約1000万戸の家の屋根に、すべて太陽光パネルを設置することを目指していく」
菅総理は、自然エネルギーの割合を2020年代の早い時期に少なくとも20%以上にするとし、その第一歩として、太陽電池の発電コストを2030年までには現在の6分の1まで引き下げる方針を打ち出しました。
(引用終わり)
この案、民主党の幹部でも知らなかったそうで、思いつきの案を国際舞台で勝手に発表してしまったみたいです。
2020年代など自分に関係ないから、テキトーに法螺話を気持ちよくしゃべっちゃったのでしょうか。
全く・・・。
ただ、個人的意見としては、原子力発電は(常識的に実現可能な範囲で)可及的速やかに停止し、その関連予算を太陽光発電や風力発電の開発・普及にまわすことで、自然エネルギー活用分野で日本が世界をリードする国になるように方向転換することには大賛成です。
しかし、ただ単に太陽光発電や風力発電のような出力が不安定な発電の比率を上げると、電力の発電量と使用量とのバランスが崩れ、電圧や周波数が乱れたり、ひどい場合には停電が起きてしまうことが懸念されます。
これを防ぐためには「スマートグリッド」と呼ばれる「賢い電力網」を構築することが必要です。
Wikipedia
より
(引用開始)
スマートグリッド (smart grid) とは、デジタル機器による通信能力や演算能力を活用して電力需給を自律的に調整する機能を持たせることにより、省エネとコスト削減及び信頼性と透明性の向上を目指した新しい電力網である。
(引用終わり)
スマートグリッドについては後日、もう少し勉強してからブログに書きたいと思います。
そして、もうひとつ大事なことは、菅首相は太陽光発電を実施する主体として誰を想定しているのか、ということです。まさか、東電など既存の電力会社に太陽光発電も独占させるつもりではないと考えますが。
ソフトバンクの孫社長が「電田」を提案して参入を目指しているように、現在の送発電一体の「9電力会社による地域独占体制」という世界的に珍しい体制をぶち壊して、他の発電会社の新規参入を促す体制にしなければなりません。
その場合、送電網は国有化することになるでしょう。
国が東電(および他の地域電力会社)にお金を払うことになるので、東電はこれを賠償金として使うことができることになります。結局は国民負担ということにはなっていしまいますが、今のまま単なる電気料金の値上げで賠償金をまかなわれるよりは、大きな社会の転換を実現するための費用とする方が、ずっと前向きでいいでしょう。
こうして送発電分離、発電の自由化を実現できれば、関連業界の研究開発が活性化され、より優れた技術を日本企業が世界をリードして開発し、さらにこれを技術輸出できるようになるのでは、ということまで夢が広がってきます。
(東芝と日立による原子力技術の海外への輸出はもう終わった・・・かもしれません。)
発電会社の競争により電力料金を下がることが期待されますが、もっと現実的な話として欧米では、消費者が電力料金は少々高くても、原子力発電以外の発電方式の電力会社を選ぶ、などということができるようになっているようです。
さて、東京電力ですが、この度、清水社長が引責辞任して、西沢俊夫氏が新社長に就任することを発表しました。
しかし、清水社長は資材部出身で完全に傍流だったのに対し、西沢新社長は勝俣会長と同じ企画部出身。
勝俣体制が強化されただけと言われており、独占体制を維持するため、送発電分離に強い抵抗を示しそうです。
菅首相・民主党政権が、首相が国際舞台でやっちまった発言。
原子力発電を漸次停止して自然エネルギーの比率を上げる方向を目指すこと自体は、たいへん結構なことだと考えます。
これから、民主党政権がその実現に向けてどこまで真剣に向き合うのか、そのために東電(および他の電力会社)と対決できるのか、期待と不安を持ちつつ見守っていきましょう。