オオカミ少女はいなかった | ナンでもカンでも好奇心!(tomamのブログ)

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硬軟取り混ぜた種々雑多なネタについて書いてみようかと思います。
全くまとまりがないと思うけど、それが自分らしさということで。。。

インドに、オオカミに育てられた2人の少女がいた。名前をアマラとカマラという。発見された時にはオオカミのようで、人間らしいところは微塵もなかった。アマラは発見後1年して亡くなる。カマラは9年を生きたが、生涯、知的な能力を発達させることができなかった。

・・・こんな話、「実話」として聞いたことがありますよね。

しかし、どうもこの話、捏造らしいのです。

2年前に読んだこの本に、驚かされました。

オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険/鈴木 光太郎
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この本によると・・・
アマラとカマラの話は1926年に米英で新聞報道され、専門家の並々ならぬ関心を呼んだ。
1928年、ニューヨーク心理学会が、シング牧師にカマラを同伴しての招待講演を依頼したが、シングは断り、カマラは翌年亡くなった。
さらに、アメリカの発達心理学の大御所アーノルド・ゲゼルが一般向けにこの話を紹介する本を出版し、読者は疑うことなくこれを事実として受け入れた・・。

二人の特異な少女を養育した、シング牧師の日記と写真を要約した本が、人類学者ロバート・ジングによって1942年に出版されている。邦訳は今も入手できる。

狼に育てられた子―カマラとアマラの養育日記 (野生児の記録 1)/J.A.L.シング
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鈴木氏は、シング牧師が撮影したとされる写真について疑惑を挙げる。

日時が最大2年以上離れているとされている写真がどう見ても同じ日に撮影されたとしか見えない、四つ足で早く走る写真は意図的な二重露出、木に登っている写真があるが、オオカミは木に登らない、ただインドには登るという誤った言い伝えがある。

記述にもさまざまな不審点がある、と。
目が暗闇の中で青白く光る(あり得ない)、生肉しか食べず(オオカミは雑食だが)犬歯が尖っていた、など。

そして、アマラとカマラを見た専門家は誰もいない。
シングが亡くなって11年後に調査に訪れた研究者がいた。関係者の証言によると、カマラは、言葉ができなかったが、見かけはオオカミのようではなくふつうの子どもだったらしい。

最後に、この話が実話として受け入れられた背景に、オオカミに育てられたという伝説・民話が各地にあり、中でも古代ローマ建国の英雄とされるオオカミに育てられた双子のロムレスとレムスの話が有名だったからではないか、と。

・・・いやぁ、こうして読んで行くと、オオカミ少女などはいなかったようです。完全に信じてましたが。
確かに冷静になって考えてみれば、オオカミが人間の子どもをそんなに大きくなるまで(8歳くらい?)育てるなど考えられませんねー。

(なお、この鈴木氏の本に対する専門家からの批判もあるようですが。
 シングの本へのAmazonの書評もこういう背景を知って読むと興味深いです。)


もうひとつ、「サブリミナル効果」も、衝撃の否定です。

1956年、アメリカで映画の上映中に「ポップコーンを食べろ」「コカコーラを飲め」というメッセージ画面を、観客が気づかない1/3000秒だけ5秒おきに繰り返し映し出した。その結果、ポップコーンとコカコーラの売り上げは大幅に上昇した。

・・・詳細は省略しますが、これも完全に捏造データだったようです。
現在、映画・テレビで禁止されているサブリミナル効果というもの自体、本当にそんなものがあるのかどうか、怪しいようです。
こちらも、全く疑いをもってなかったので、驚きです。

この本では、これらのふたつをはじめ、心理学の世界で起きたデータ捏造(疑惑)事件を、全部で8章にわたって紹介されています。

文章も読みやすく、心理学をよく知らなくても、知的刺激を求める方にはお勧めの本です。


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