「妻があの男と既に関係を持っている。」

僕がそれをはっきりと認識したのは

今から2年半ほど前だろうか。

 

その頃の妻はパソコンに向かう時間が

以前に比べると減っていたように感じる。

そして、

僕がいる時にSNSで怪しいやり取りをする事は

一切無くなっていた。

 

あの雨の日に

SNSの世界で2人が会っている場面を

僕が目撃した事を妻は気づいていたのだと思う。

あれからすぐにSNS上の妻の日記が削除された。

僕があの男につながる尻尾を掴んだ日記だった。

でも既に僕が男の正体を見つけていた事は

おそらく妻も想像していなかっただろう。

 

しかし、

また2人のやり取りが見えなくなってしまい

僕は焦りを感じていた。

 

 

 

それからしばらく経ったある日の午後

たまたま家の近所で仕事の用事を済ませた後、

僕は家に寄って少し休む事にした。

妻が在宅なのか把握していなかったが、

玄関に入るとリビングに人の気配があった。

 

僕はその時、嫌な胸騒ぎがした。

足音を立てずにそっとリビングに向かう。

そして静かにリビングのドアを開けると

 

そこには・・・

 

 

不意な侵入者に驚いて奇声をあげる妻がいた。

その滑稽なリアクションに

僕は思わず笑ってしまった。

 

「もう、驚かさないでよ!」

妻は得意のカップケーキを作ってる最中だったが

僕が驚かせたせいで作業を見失ってしまい、

少しの間あたふたしていた。

 

「冷蔵庫に昨日のお茶あるからそれ飲んで。」

妻はさっさとキッチンに向かい

大きな音を立てながらミキサーで作業を始めた。

 

そして僕が冷蔵庫を開けて中を覗いている時に

すぐ近くでLINEの通知音が鳴った。

冷蔵庫の横の棚に置いてある妻のスマホだった。

 

『金曜日大丈夫になったよ♡』

 

妻は後ろを向いているし

ミキサーの音で気が付いていない。

 

僕は急いでお茶を取ると

少し離れたリビングのソファーに座った。

今のは何だったんだ??

黙ってお茶を口に含みながら

今見たLINE画面を頭の中で再生していた。