(前回までのあらすじ)
半年前の父の他界を受け入れられずにいるトムは、ぜん息の発作も起こし身も心も落ちていた。このままではいかんと思うトムは、コロナの影響で2年ぶりとなった空手の型大会の案内を見て、前回大会決勝で取り逃がした優勝をし、自分が変わるきっかけを作ろうと決めた。
空手の型大会出場を決めたトムだが、2年前とはまるっきり立場が変わっていた。
茶帯→黒帯、指導員(週1クラスだが)
暗にこれは、『最低でも優勝』を求められる。
そこで、前回大会なぜ自分は負けたのか?を映像を観て分析し、優勝する為にはどこを改善するか洗い出した。
本番では、緊張と興奮から自分の120%を出そうとしてしまう。
いつもと違う体の動きになる為、わずかでもバランスを崩しやすい。
ではなぜ、緊張と興奮を抑えきれないのか。
不安からだ。
出来ることを全てやったという自信が無かった。
延長戦に入ることも不安だった。
今までは、ただ懸命に型の練習をして試合に臨んできた。
今回はこれだけじゃダメだ。
先生でも年下でも後輩でもアドバイスを求め、自分の型の悪い所を治そうとした。
治すところがありすぎて、上手くいかない。
1つ修正すれば、出来ていた1つが出来なくなる。
腰は落ちない、足は上がらない。
型を真剣にやればやるほど、体の痛みと疲れが長引く。
もう筋肉痛か肉離れか、自分でもわからない。
そこで長年お世話になっている、パーソナルトレーナーの先生に型の動画を見せ相談した。
すると、(空手の経験が無い)トレーナーから意外な答えが返ってきた。
『トムさん、試合まで時間は限られています。修正点よりも良い所を伸ばしましょう。』
はっとさせられた。
勝敗を決定するのは、審判の判定。
自己の満足する型でなく、審判に旗を上げさせなければ勝てない。
『大きくバランスを崩さないまま、技の力強さをさらに上げましょう。』
全く空手を知らない人だがさすがプロ。
型の動きを見て、どこの筋肉を鍛えれば良いかなどがわかるのだ。
与えられたトレーニングを毎日行い、
(内容は秘密。誠真会館杉並道場の毎週水曜19:30~のクラスに来てね
)
もちろん型も出来る限り打ち込んだ。
後悔しないよう、前回の大会よりももっと。
毎日、湿布を大量に使った(整骨院をやっていて良かった
)。
不安を生み出す要素も1つ1つ解消させていった。
小さなことだが例えば、
足をつってしまう不安
試合会場の新しいマットが滑る不安
蹴りでバランスを崩す不安
延長戦に入った時の不安
などなど。
こうした不安を1つ1つ解消していくと、精神的に『俺はできることを全てやった』と思えてくる。
前回大会のような、根拠の無い自信ではない。
空手の恩師であるO原先生が言うところの、『自分を表現する』型。
『俺を見ろ!』と訴える型。
本気でここへ近づきたい。
『3人で優勝するから、親父見てろ!』
娘と息子と、父の墓前で誓った。
(これが父の、最高潮に幸せな顔)
そして本番を迎える。
(つづく)
