(前回までのあらすじ)
2年ぶりの空手の型大会に出場を決めて稽古に励んだトムだったが、自分の体は理想の動きとかけ離れていた。色々な人に教えを請う中で、『自分の良さを伸ばす』ことと精神面の弱さを克服しようと気付く。そして、娘と息子と優勝して亡き父に報告することを誓い、本番を迎えた。
大会当日。
開会式の3時間前に、会場の周りをジョギングし、BCAA inポカリスエットを2リットル用意して娘と練習を始めた。
カバンには、サプリやらバナナやら、テーピングまで準備している。
会場でも足を冷やさぬよう、サンダルを履いた。
もちろん、汗っかきのトムはピカピカの道着を3セット用意してある![]()
準備は万全。
試合が始まった。
親子とはいえ、娘とトムは自分のことでいっぱいいっぱいで互いの様子は見えていない。
会場外のガラガラの廊下でコッソリ練習していたら、コッソリ練習する娘と会った。
『本番直前まで、上手くなろうとあがけ』
いいぞ、ちゃんとトムの言うこと守ってる。
1回戦,2回戦と焦らずにでき、勝利。
ホッとしたい気持ちを抑え込み、
『今の自分なら当然の結果』と無理矢理思い込む。
今日はいける、それだけの準備をしたんだ。
少し時間が空き、決勝戦。
ここまでは2年前も来た。
2年前は、不安を消そうと自分で高揚させた。
『必ず勝てる!』と言いきかせ盛り上げて、自分をコントロール出来ず負けた。
今回は違う。
『細心の注意を払えば必ず勝つ』と信じた。
型の試合は2人で戦い、5人の審判が判定する。
うち3人の判定を得れば勝利となる。
引き分けの判定もあるので、
2人の旗が自分に上がっても引き分けとなり、勝てず延長戦へ。
つまり、5人中最低でも3人の旗が自分に上がらないと勝てない。
決勝戦が始まった。
型を終え、『勝った』と思った。
相手の型も同時に行っているので見えていないから、何の確信も無い。
ただ、そう思えた。
判定
自分1:引き分け4
延長戦へ。
ここで2年前までのトムであれば、不安になっていた。
今は違う。
『絶対勝ったけどな、まあ良いか』
審判から、行う型が指定された。
『どの型が来ても、勝つよ』
大きなミスなく、力強く打った。
今度こそ、勝利を確信した。
判定
自分2:引き分け3
引き分け
再延長戦へ。
『おいおい、俺が勝ったでしょ!』と思った。
(何の根拠もない)
『まいっか。次でトムが勝つよ』
(何の根拠もない)
疲れも感じていない。
白黒ハッキリするなら、もっとやるよと思った。
再延長戦は、トムがバランスを崩しやすい苦手な型だった。
練習でも2回に1回はフラついていたが、落ち着いていた。
あそこだけフラつかなければ勝てる。
フラつかない為には、足ではなく丹田だ。
そこまで試合中に意識できていた。
判定
トム3:相手2
ギリギリだが勝った。
全く笑顔も出ない。
ホッとしたも無い。
『あれ、なんでこんなギリギリ勝ちなの?』
と、本気で思った。(異常な精神状態)
少し落ち着いて動画を観ると、やはり自分はそんなに上手くなかった![]()
ただ、そんな精神状態だったからこそ再延長戦
まで気持ちが切れなかったのだ。
勘違いも力になる。
自分を勘違いさせられたのは、自分で納得するまで準備できたからかもしれない。
娘は、残念ながら決勝で負けた。
試合直後に相手が表彰されトロフィーを貰っていた時に、娘が拍手をしていた。
あの負けず嫌いが。
それだけでトムは十分満足して、親父にそれを伝えたかった。
親父が0歳から育ててくれた娘は、ちゃんと育っているよ。
トムは初優勝だった。
帰宅し、ビールを飲み、貰ったトロフィーを眺めて考えた。
優勝したことでなく、2年前の自分を越えたことが1番嬉しかった。
体は2年前より衰えたが、人として成長できた。
父に受けた恩や愛情。
それを父に返せず逝かれてしまったから、
トムは引きずっていた。
父から受けた恩や愛情は、まず自分の子どもたちに返していけば良いとわかった。
親父、ありがとう。
また困ったときは頼むよ!




