週初めの海は、ひどく時化ていた。

 荒海に逆巻く、白い波濤の怒号が、地鳴りのようにあたり一面に響き渡っていた。



 遠くの島々をも隠すほどの、高いうねりが次々と襲ってくる。



 南寄りの風が強く吹き、最高温度は20°Cを超えていた。
 汗ばむほどの陽気だが、この波では海岸に近づくことすらままならない。




 木曜日、やっと波が収まってきたので、夜明け前からこの浜へジギングに出かけた。
 しかし、またしても寒波到来で、早朝の最低温度がこの日、−3°C。

 寒くて冷たくて、手も足も指先がジンジンと痺れて痛い。そして吹き付ける冷風が眼に滲みて、涙が冷たく乾く。


 そしてこの日も何の生体反応も得られず、30分程で早々に退散した。



 魚が釣れないので、近くのスーパーで「本よこ(本鮪幼魚)トロ刺身用ブロック(新潟産)」を買う。
 どう見ても美味そうだったので贅沢してしまった。



 言葉では表現できない程に、旨い。山葵、醤油。そして日本酒の熱燗に、熱々ご飯。


 翌日は、売出のスーパーのお買い得、お寿司。


 サラダ巻きも。



 朝獲れの鰹と鰤の刺身パックも買って、昨日の残りのトロで贅沢三昧、海鮮寿司パーティ。




 ついでに先日釣った冷凍アオリイカも解凍して刺身に。



 これは「山葵醤油漬け」にした方が旨かった。




 贅沢しすぎたので、次の日は質素にフィッシュカツとご飯で済ます。カレー風味が何故か病みつきになる。



 その次の日は、冷凍餃子を炒める。やはりビールにご飯が進む。
  


 ふと、視線を感じる。
 ひとりで酒を飲み、餃子をつまみながら朦朧として悦に入っている姿を、じっとかんたろうが睨んでいたのだ。


 退屈そう。
 遊んで欲しいのか。




 昨年の3月5日朝。公園から初めてこの家に連れてきた日。 
 部屋の隅に隠れ、怯えて出てこようとしなかった。 




 現在の、真夜中のかんたろう。私の寝床を占領して動かない。
 夜中、頭もとにきて、髪の毛を舐めたり、小さい声で甘えたりして何度も起こされる。そして、澄ました表情で私の顔に鼻息をかけてきたりもする。

 思わず笑ってしまい、目が覚める。




 大雨や、強風の夜、底冷えに震える夜、そして雷鳴轟く夜・・そんな「嵐のような夜」は特に酷く怖がり、不安そうな顔で、弱々しい哀しい声で、何度も何度も起こしにくる。

 捨てられた、辛かったあの公園を思い出すのだろうか。

 昨年の冬の公園で、帰ろうとする私を執拗に追いかけてくる、かんたろう。


 おやすみ、かんたろう。
 もう大丈夫だ。
 何も怖くない。