澄み切った爽やかな大気の中、すべてを鮮やかなオレンジ色に染めてゆく、水平線に燦々と輝く太陽。
しかし、何も釣れない。
現金なもので、魚がいなくなると、人もいなくなった。今週は連日地元の人だろう4、5人程度。
ところが、水曜日。
まだ暗いうちのことだった。緩急をつけたジャカジャカで何となく巻いていると、突然強烈に竿が引ったくられた。
竿が伸されそうなるのを耐えて、波打ち際まで慎重に寄せたのに、寄せ返す汀の大波と最後の魚の抵抗で、いきなり竿から生命力が消えた。
そのとき勢いよく反転する魚の影がちらっと見えた。70センチはあるメジロだった。
たった一度のチャンスだったのに。せっかく運良く喰ったのに・・
打ちのめされ、悔やまれて、悔しくて、その日なかなか海を後にすることができなかった。
散歩がてら、近くの恵比寿神社にお祈りするがやはり、昨日も今日も何の当たりもない、静かな朝の海だった。
早速いただく。
完璧な、整然とした並び。完成された伝統溢れる、黄金の味。
熱燗とともに、一気に平らげてしまう。
翌日は定番のカツオの刺身。
そして、またまたカツオの刺身。
中華も。ビールに、熱燗も進む。
呑んで呑んで。
そして今、晴れ上がった足に、激痛が襲っている。
ついに、2年半ぶりの痛風の発作。歩くことも、ままならない。
あれほど医者に注意されてた、暴飲暴食の結果だと、後悔するが仕方ない。
ロキソニンを飲んで堪えるしかない。
月曜日病院に行こう。
窓から外を見て黄昏れる、かんたろう。公園を思い出しているのか。
昨年の年末。夜の公園でのかんたろう。
いつも、呼ぶとすぐに出てきた。
帰ろうとしてもストーカーのようにいつまでも、ずっと着いてくる。
可愛くて、愛おしくて・・後ろ髪を引かれる思いで、なかなか帰れなかった日々。
思えば、2年半程前に初めて襲われた痛風がきっかけだった。
あのとき病院にかかると、検査の数値がすべて悪く、医師から生活習慣病の改善として食事制限とウォーキングを勧められ、毎朝この公園を散歩することになったのだ。
運命の日はすぐやってきた。
歩き始めた初日。その猫は突然現れ、目が合うと、何のためらいもなく近づいてきた。
遥か昔、高校生の頃飼っていた、溺愛していた猫にそっくりだった。思わず私は『かんたろう』と呼んでいた。
それから激動の日々が流れ、ついに私は家庭を失い、30年間以上勤めた会社を退職し、最期を迎えるための移住地を探して、今この猫と一緒に海辺の小さな町でひっそりと暮らしている。
ここへ連れてきてもうすぐ9ヶ月。
そしてもう、師走を迎えようとしている。
かんたろうにとっては初めての、暖かいお正月もすぐそこだ。
初めて過ごす、ふたりだけの正月。
おやすみ、かんたろう。














