「のど自慢」じゃなくて、どこかのオーディションの最終選考じゃないか?
そう思えるくらいハイレベルな大会でした。
「第3回奄美島うたのど自慢大会」。奄美島うたのアマチュアの唄い手が、その力量を競う大会です。東京で開かれるため、首都圏在住の奄美出身者が多いのですが、島唄を唄うことができれば、そうでなくても出場できます。
里アンナさんがゲストで出演するので行ってきたのですが、とてもアマチュアとは思えない出場者の皆さんのレベルに驚かされました。
大会は、古くから伝わる奄美民謡を唄う第1部「島うたの部」、奄美に関連する歌謡曲などを歌う第2部「新民謡の部」、招待された唄者が唄う第3部「ゲストショー」の3部構成でした。
第1部「島うたの部」は21名がエントリー。2名がやむを得ない事情により出場を辞退し、19名で競われました。
結果は以下の通り。
※( )内は出身地。特に断りがなければ奄美の地名です。
優勝 松崎博文さん(笠利) ♪「野茶坊節」
準優勝 小林成芳さん(喜界・大阪より) ♪「嘉徳なべ加那節」
優秀賞 上野俊英さん(鹿児島県出水) ♪「野茶坊節」
審査員賞 水野由紀子さん(東京都) ♪「嘉徳なべ加那節」
〃 永井枝子さん(大和) ♪「朝花節」
〃 伊賀美佐子さん(東京都) ♪「俊良主(シュンジョシュ)節」
優勝した松崎さんは、下からお腹に響くような唄い方で、ハイレベルな中でも特に印象に残りました。終了後、たまたま御本人がいらしたのでそう申し上げたら、そこを気をつけて唄ったとのことです。里アンナさんと同級生だとおっしゃっていました。詳しい方によれば、島唄の世界では有名な方なのだそうです。
準優勝の小林さんは昨年度「新民謡の部」の方の優勝者。群を抜いた表現力と独特の歌唱法で会場の注目を集めていました。
個人的に、「優勝は9番(小林さん)かなぁ、でも15番(松崎さん)も好きだなぁ。準優勝しないかなぁ。」と思っていたのですが、審査結果はちょうど逆になりました。
第2部「新民謡の部」は、奄美に関連する曲であれば既成・自作どちらでもよく(中には替え歌をやっている人もいました)、ギター弾き語りやオケも可、という、「島うたの部」に比べればかなり自由な部門でした。
エントリー11名中2名が欠場で、出場は9名。
結果は以下の通り。
優勝 順田ひろみさん(天城) ♪「永良部ゆりの花」
準優勝 村岡俊貴さん(千葉県) ♪「永良部ゆりの花」
優秀賞 愛川俊治さん(名瀬) ♪「思い出の喜界島」
優秀賞 和田美代子さん(福井県) ♪「島のブルース」
優勝の順田さんが歌唱力で一歩抜きんでていて、準優勝の村岡さんがそれに続いていた、という印象でした。
第1部・第2部の後には、それぞれ前年の優勝者が登場。第1部前年優勝の池田麗奈さん、第2部前年優勝の小林成芳さんが2曲ずつ唄い、いずれも玄人はだしの唄い手ぶりを見せてくれました。
「のど自慢大会」というと、まあ、まともに聴けるのは数人、大半はカラオケレベルで、中には明らかに音程を外している人も何人か、というのが定番でしょう。ところがこの大会は、「まともに聴ける」出場者ばかりだったといっても過言ではありません。
みんな上手かったですし、何よりも「ただ歌えばいい」というのではなく、どの人も気持ちがこもっていました。唄の間から、その人の人生や、その人に繋がる人たち、現在ばかりでなく遙か過去の人たちの人生までがにじみ出てくるようで、普通の「のど自慢」とは全く重みが違うような感を受けました。
そもそも音楽に対する考え方がこちらとは違うのではないかと、ふっと思いました。こちらでは音楽に接する機会といえば、テレビ・ラジオ・CD、学校の音楽の授業、最近ではネットと、いずれも「外から」流れてくるものです。ところが奄美では、もちろんそういうものもあるのですが、島唄を唄う人は幼い頃から習い始め、親から子へ、子から孫へと歌い継いできた、いわば「内から」の音楽があるのです。
我々が仕事帰りにカラオケに行くような、そんな軽いものではない。だからアマチュアでも、とてもアマチュアと思えない唄を聴かせてくれるのだ。と、そんなふうに考えました。
そうした環境の中でさらに選りすぐられた「唄者」が登場するのが第3部「ゲストショー」。
まずは年少の唄者から。
森田美咲さん(高3)、宮村美希さん(中1)、そして美咲さんの妹の葉月さん(小学生)の3人が、並んで三線を弾き、それぞれ得意の島唄を披露しました。年齢からいっても、見た目からいっても、「ちゃん」付けにした方がいいような可愛らしい子たちなのですが、唄を聴いてしまったら、もう「さん」付けにしかできません。
特に美咲さんは、「どうして高校生なのにこんな深みのある歌声を出せるんだろう」と不思議に思えるほどでした。ただ子供が上手に歌っている、というのとは全く違っているのです。
この美咲さん、「Misaki」の名でCDを出しています。実は、先月池袋の東武デパートで開かれた「奄美フェア」で、「あまみエフエム」の方に、「この子がいいんですよ~~!今、島唄で一番オススメなのがこの子なんですよ~~!!」と猛プッシュされたのが、他ならぬMisakiさんこと森田美咲さんなのです。
奄美・徳之島在住。台風15号の影響で飛行機の欠航も心配されましたが、その歌声を生で聴けたことには、天に感謝しなければなりません。
その後、年長の唄者・里アンナさんの登場。聞くところによれば、出番の前に美咲さんの唄に合わせて舞台袖で三線を弾いていたそうなのですが、そのせいかどうか、最初の出だしを間違えるというハプニングも。しかしそこは大人の貫禄、見事に立て直して、島唄から「朝花節」「黒だんど節」、オリジナルから「きゅらうた」「恋し恋しや」の計4曲を歌い上げました。
「恋し恋しや」は、前日のバースデーライブよりもずいぶん響きがいい感じでした。やはりアンナさんは大きなホール向きのアーティストなのでしょう。繰り返しになりますが、「レ・ミゼラブル」のファンテーヌ役、がんばってほしいです。難しい役ですが、「内からの唄」を持っているアンナさんなら、必ず見事に演じてくれると信じています。
「ゲストショー」の後は、審査発表・表彰があって、最後は「ワイド節」「六調」でフィナーレ。(「六調」は、沖縄の「カチャーシー」にあたるものです。)終盤はかなり時間が押しましたが、奄美イベントではよくありがちです。(^_^;)
里アンナさんのライブにはよく行っているのですが、そのルーツである奄美島唄の奥深さをかいま見ることのできたイベントでした。
このイベントに関する詳細はコチラをご覧下さい。
http://amaminodojiman.com/top/