ふくしまへおくる | とむりん Logbook

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福島の現実はやっぱり重い。
避難されている方のお話を聞いて、そう思わざるを得ませんでした。


(株)ディストル・ミュージックエンターテイメント主催、「ふくしまへおくる」。
19日、川崎の「産業振興会館」という所で開かれました。



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ライブ中心のイベントでしたが、途中、福島県富岡町から千葉県内に避難されている女性に、同社代表取締役・生明尚記(アザミ ナオキ)さんがお話を聞くというコーナーが設けられました。



地震で家の中がメチャメチャになったけれど、それを片付けるまもなく避難命令が出たこと。
2~3日の避難といわれ、身の回りの物だけ持って避難したこと。
震災前は自営で米屋さんを経営していたこと。避難所の状況を見てご主人が商品の米を取りに戻り、約300㎏を避難所に提供したこと。
避難先は10カ所変わり、家の事情でご主人とはほとんど別行動。今ようやく千葉県内のアパートに家族で暮らしていること。
ずっと自営業だったことから、ご主人もご本人もアルバイトをして、東電からの補償金と併せて生活していること。
2ヶ月に1回、国が指定した日に、防護服を着て自宅に帰っていること。
自宅の窓がこじ開けられ、宝石類などが盗まれていたこと。
一時帰宅の時に支給される機器で計ると確かに放射線量は高く、屋外の物はたとえ微量の土でも「放射性廃棄物」となること。
息子さんが10歳になった時にもらった手紙を大切にしていたので、一時帰宅のたびに探しているが見つかっていないこと。
40年は帰れないと言われているが、その頃には今小学生の子供も50歳くらいになっており、先行きが見えないこと。



30分くらいのお話でした。記憶のみですので漏れていることもあると思いますが、だいたいこのようなことを話して下さいました。



ステージで話をされたのはご本人だけでしたが、会場にはご家族と来ておられました。たまたま席が近くだったのですが、ご本人もご家族も全く普通の方としか見えず、呼ばれてステージに上がるまでは福島支援のために来場した一般客だと思い込んでいました。
原発事故で避難してきた、というと何か特別な人のように思ってしまいがちですが、実は全く普通の人で、事故が起こる前は、今まさに私たちが暮らしているのと全然変わりなく生活していた、ということを、まず出発点にしなければ、と思いました。
そして、報道があまりされなくなったからといって問題が終わった訳ではなく、むしろこれからだということも忘れてはならないでしょう。避難が済んだら事は終わりと考えるのであれば、それはやっぱり、違います。


とはいえ、向き合えばやっぱり重すぎる問題、特に放射能など、一般人にはどうしようもありません。ではどうすれば、という問いへの答えは一つではないけれど、結局やれることをやれる方法でやっていくしかない、と考える人は多いと思います。


ミュージシャンならば音楽をやって、それを支援に繋げる。
そうした想いから、「vallote」kaho*さん、「WEFUNK」「エソラビト」の4組のアーティストがこの企画に参加しました。



「vallote」(ヴァローテ)はビオラ・加治友理さんとコントラバス・千木良綠さんのクラシック・ユニット。どうしても敷居が高くなりがちなクラシック音楽を親しみやすいものに、というテーマで活動しています。ピアノとカホンのサポートで、よく知られた曲から隠れた名曲まで、POPに演奏していました。ジャグラーのKAZUHOさんとのコラボも斬新でした。


kaho*さんは女性ソロでピアノ弾き語り。実は先日、横浜の小さなライブハウスで聴いたことがあるのですが、その時より歌声の響きが格段に良く、正直びっくりしました。この日の会場は結構広いホールだったのですが、そういう所に向いたアーティストなのかもしれません。背伸びしない歌詞を広がりのある歌声で歌うのが魅力です。
http://www.kaho-rururu.com/


「WEFUNK」は、本来は大きなアーティスト集団のようです。今回はギターとカホン、そして前半のヴォーカルに総合司会も務めたまさはるさん、後半にchihiroさんを迎え、最後にはダンサーも加えてのライブでした。まさはるさんは「Stand by me」をジョン・レノンバージョンで歌っていました。レノンが生きていたら、福島のことを何て言っただろう、とふっと思いました。
http://www.wasjp.com/
「WEFUNK」は9月1日・2日に川崎クラブチッタでライブをやるそうです。


「エソラビト」は女性ヴォーカル・菜々子さん、ギター・JOJOさん、サックス・生明(アザミ)さんの3人ユニット。サックスの生明さんは「ディストル」の代表取締役社長でもあるのですが、奈々子さんからはいつも下に見られているそうです。(^_^;)(^_^;)
せせらぐ水のように自然に心の中に流れ込んでくる音楽が魅力。
宮城県南三陸町の小学校に、CDの売り上げで購入した楽器を寄付するなど、被災地支援も継続的に行ってきました。
http://esorabito.com/
イベントの最後に「エソラビト」の「空へ」という曲を会場の全員で合唱。馴染みやすいメロディと歌詞で、かなり長い間、頭の中で鳴り響いていました。



「あの日」からもうそろそろ1年半。福島については、さすがに「放射能がうつる」といったいわれのない差別は最近耳にしませんが、かわって無関心な人が増えているようにも思えます。
しかし、特に関東の人間にとって、福島のことを他人事と思うのは、やはりダメだと思うのです。


自分の問題としてとらえ、自分のやれることをやっていく。それがすぐに問題解決につながらないにしても、やはりやっていかなければならない。
といって、重苦しくなってばかりいる必要はない。音楽をやって、観客を楽しませて、しかも大きな支援をしている、こんな活動もある。長続きする支援は、こういう形も「あり」だ。


そんなことを感じたイベントでした。


「前を見ないと、福島は戻ってこない」
避難された方の言葉が、強く響いています。