著者は高齢者福祉の専門家。
80代後半のお母様が認知症を発症(著者、兄夫婦とその子供3人、母の7人家族)で自宅介護。
90代前半に大腿骨頸部骨折→入院→老健施設→特養 最後の時を迎えるまでの様子を描いたものです。
最初は大学の先生らしい模範的な文章が退屈でしたが、
施設に入ってからの描写(母と娘の穏やかな日々)がとても良かったです。
お母さまは元歯科医でおシャレで上品な方。
著者は大学の先生なので時間の融通が効くし、
社会的地位もあり、経済的にも恵まれた環境。
お一人みたいなので、家族に何か言われることもない。
お母さん大好きで、ずっと良好な母娘関係だったのだろうなと推測されます。
お母様は晩年まで家族の中で暮らし、施設に入っても娘がこんなに献身的につくしてくれ、
お幸せな人生だったことでしょう。
施設の方々も総じて優しく、平和で、理想的な介護記録だと思いました。
ご本人が周囲に愛される穏やかな性質だから可能なのかもしれません。
『認知症を生き抜いた母~極微の発達への旅』 安岡芙美子 (2017)クリエイツかもがわ
http://www.creates-k.co.jp/books/book.php?searchbk=1490334770
なお著者は現在70代。
自らが暮らす[高齢者の自立と共生の住まい(NPO法人)]を作っているみたいです。
http://cpri.jp/2112/
私も一人身なので、このようなホームが色々な選択肢をもって発達すればいいなと思うし
必要になってくると思います。
認知症を発症しても、全部が暴力的になったり盗難を訴えたりするわけではないし
うちの母を見ていてもわかりますが、短期記憶ができなくなっただけで、それ以外は
前と同じだから普通に話はできます。同じことを言ったり忘れたりするのが普通だと、今は慣れました。
以前の鋭さや理解力はなくなり、幼稚園児のような面も見せるけど、それは母の子供の頃の姿なのかなと
思います。ご飯ができるのを待っている姿とか。昔とは立場が逆転・・・
理不尽な言葉に時々私も切れたりするけど、前後が分かってないからそうなるだけと一呼吸。
理想はこの本のような穏やかな関係ですね。