「サラマッポ」は、フィリピン(タガログ)語で「ありがとうございます。」という意味だそうです。
1945年フィリピン市街戦のことをネットで調べていて、この方のブログに偶然行きあたりました。

著者は金沢市出身の日本人で、
不慮の事故(23年前)により首から下が全く動かなくなった重度障碍者です。
この本を出したあとは同名のブログを書いてらっしゃる。

プロフィール写真は若いころなのか、オーケストラの楽器を弾いている爽やか青年。
クラシック好きなんだな・・・
フィリピンで仲間に囲まれている写真を見ながら、どういういきさつでフィリピンに渡ったのか、
どうやってその絶望から這い上がれたのか、知りたくなりました。
(本には不慮の事故の詳細や直後のことは書かれていません。フィリピンでに行くまでのことと、フィリピンのことが中心です)


まず図書館で検索したけどありません。
なので楽天で買いました。
実用書や雑誌じゃない本を買うのは何十年ぶりだろうか…。


-------「アイ!サラマッポ」寺本一伸  (2008年)---------------------
 詳細
http://www.v2-solution.com/booklist/978-4-434-12203-3.html
自費出版されたそうです。

著者ブログ
http://blog.goo.ne.jp/isshin3_jph_m
お箸のような棒を口にくわえて一つ一つ文字を入力するそうです。

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上巻・下巻に分かれてるが、ほぼ一気に読みました。
これはもっと多くの人に読まれて良い本だと思います。
文章が読みやすい。何といっても面白い。
「面白い」って言ったら語弊があるけど、次から次へとアクシデントが起こり
その時々の心理状態を共感を持って読むことができました。

特に「手におえない」と精神科(!)に入院させられるほど周りの顰蹙を買っても、
再び1人でマニラに旅立つところ…。すごい行動力。介護者もなく。
車椅子で1人で・・・。車いすは電動であごで動かすのです。
時にはコンビニの店員の手が空いたときに、買ったおにぎりを食べさせてもらえるよう頼んだり…。
(三口で食べられるとか。)
英語もそうだけど、コミュニケーション能力が高いのかな。
どんなお声なのだろうか。

施設は楽だけど管理された毎日が苦しく
日本での自立生活(1人暮らし)は介護のヘルパーさんや
ボランティアの若者で回そうとしたが、長く続かなかったとのこと。

フィリピンは物価が安く、人件費も安く、また介護職の資格を持つ若者が多いそうです。
たいてい介護の資格をとって外国で働くことを希望しているらしい。
外国で仕事が見つかるまでのつなぎに、求人に応じてくれるので
次々と人が変わるけど、それでも日本よりは上手く人が回るし(日本YENの恩恵もあるが)
暖かい気候も体に良いので、寺本さんの他にも何名かの重度障碍者の日本人が
フィリピンに移住して暮らしているそうですね。

読んでいたらフィリピンに行きたくなりました。
私は日本での平均的な暮らしには失敗したので、いつか(老後?)日本でも韓国でもない別の国で暮らしたいという、ぼんやりした希望を持っています。
来年くらいに是非下見に行こう^^。

(ちなみに、韓国人は英語留学など含めフィリピン旅行の需要が日本より多いようです。)

寺本さんはあとがきで
「人と関わることによってしか生きられないことをもっと肯定的にとらえたほうがいいのかもしれない…」と書いていたけど、[人と関わらなくても生きて行けてる引きこもり]の私としては頷くしかないです。フィリピンの子供たちと笑顔で映っている写真を見ると実に羨ましい…。

それにしても何もないところからここまでよく築き上げたものだと、その情念には心を打たれます。上巻の中ごろから下巻の中ごろまで、引き込まれて読めるのはそのためです。



読みたい方はお貸ししますので言って下さい。