長崎県の長与町図書館内に展示されたノルウエーの現代美術作家アーリン・ローデ氏の抽象画「雨上がりの朝」について、先に、全体の汚れ、支持体(合板)と色彩の経年劣化について報告しましたが、先日5月24日、修復作業の準備に入りました。 

 町内に居住する美術作家、井川惺亮・長崎大名誉教授と画材店主の二人での作業。合板作品は意外に重量があり、壁からの撤去と設置、二階の作業場(休憩室)への運搬には手間が掛かったようです。

 作品は、大小6枚の板を繋いだ全長130㌢、縦33・5㌢、枠の厚さ6㌢の支持体。濃淡分けたグリーン系とホワイト、ブラウンのパステル調の色彩が叙情を感じさせます。使用の絵の具は井川先生の見立てではアクリルか、それと作家が建築学専門であることから建築用ペンキかもしれない、とのこと。

 作業では、まず木枠に積もった埃を取り拭い、画面上の小さなほこりも取りました。画面を傷つけないように細心の注意を払いながらの手作業です。

「ひび割れがひどい。下地が十分に乾かないうちに塗り重ねると、ひび割れする。板自体のひび割れと塗り重ねの剥落とがある」と先生、「たまったゴミ綿が湿気を呼んで劣化を進める場合と、たまったほこりそのものが板を浸食して化学変化を起こすことがある」と専門家の目で分析。さらに「経年した色、古びた色を作るのは難しい。表面はいじらずに額装がいいようだ」と美術作品の修復の難しさを明かし、「きょうだけの清掃で5年間分時間を戻した意味がある」と話していました。

 作品を保護する額装については「本来なら、アクリル板で囲った額装がおしゃれでいいのだが」としつつも「高額なので」とアルミ製を薦めておられました。

 

 制作者のローデ氏は、履歴によりますとトロンダイム芸術工科大教授ですが作品制作当時、長崎大客員研究員の肩書きもありました。この作品の制作年と近況を知りたいところですが不明です。長崎大は井川先生が勤務していた大学であり、現役時代、先生は同町の旧ペーロン記念館の壁画を制作されており、現在、その修復の準備をされておられます。長崎歴史文化博物館の壁画の修復を終えたばかりで、次は県美術館で9月に開催される野見山曉治展への賛助出品の制作もあるとのこと。超多忙の中、合間を縫っての「雨上がりー」の修復作業になるようです。