毎朝、ウオーキングを兼ねて孫の学童の通園に付き合っています。晴天の朝は熱せられた透明な白い空気が目に眩しいくらいです。

 朝の8時半に自宅を出て住宅街を歩いていると、やけにミーンミーン、ミンミンとセミの鳴き声が耳に付いてきます。道路沿いの住宅の庭木を見ると、クマゼミたちが蛇腹を震わせてかき鳴らしています。一日の始まりを告げる合奏のようです。

 私は早速、スマホカメラを向けました。すると警戒して鳴きながらも、ジワリ、ジワリと枝上を移動するのです。さらに一枚の葉っぱに、蝉の抜け殻が張り付いていました。昨晩、土から出たばかりの様子です。その下の側溝を見ると、蓋上に息絶えた蝉の亡骸がころがっているではありませんか。

 孫が通う保育園までは自宅からわずか15分ほどの距離。その間は低い山裾と住宅街が続いているのですが、なんだか蝉の一生の涅槃図を見せられた感じです。蝉たちの合奏は末期の火でしょう。

 夏真っ盛りというか、早くも晩夏迫るといった今の時期、蝉たちも一気に生を全うする儀式に入ったのでしょう。なんだか、「おまえの命も同じだぞ」と諭されているようで、蝉は命を司る神か仏の使いのように感じた次第です。