テレビ画面の中で「ほんとうに」が飛び交っています。

 各局とも年度末で、バラエティー番組の司会者やコメンテーターの入れ替えが始り、送迎両者が「ほんとに、ありがとう」のお別れの言葉。これがズラリと居並ぶコメンテーターひとりひとりがやるのだから、なんとも聞きづらい。言葉が見つからず(見つけきらず)「ほんとに、ほんとうに」と反復。耳障りです。

 コメントに不慣れな、と言うより普通の日常用語に不慣れな?コメンテーターが多く、「ホントに」だけが耳に突き刺さるのです。「ほんとうに」「ホントに」「本当に」……。あたかも「ほんとに」で、すべてを水に流せるかのように。言葉のプロの人々とも思えません。

 ほんとうにって、本当に思ってるの? ただ、感情や思いを表現する〝的確な語彙〟を持ち合わせていない、あるいは感情の在りようの分析をやめた思考停止の言葉では? などと意地悪い思いに駆られてしまいます。

 

 そういえば、テレビでこのごろ目立つ言葉に「……というもの」があります。言葉のプロのアナウンサーがよく使っているようです。

「オリンピックというものを」「支援策というものを」「建物というものを確認」「経費というものを認めて」……。なぜ、「もの」が必要なのだろう。

 辞書をひくと「強い断定を表す」ともあるから、前後の文脈から考えて附属する名詞の強調・アクセントと思えます。が、私はテレビで聞いていて必要性を全く感じません。前述の例文から「もの」をとっても意味は同じでしょう、どうです。

 せめて「強めの気持ちを表す終助詞」として可愛く「だって強調したいんだもの~」なんて。

 今この時の感情を言い表せないのは、勉強というより経験不足なのだろう。若いアナウンサー、芸人コメンテーターらがほとんどだから。それとも、時代を反映した単なる新しいテレビ用語かもしれませんね。「このごろのアナウンサー、ほんとにホントに聞きづらい」。

 この「ほんとに」。読みやすい紙面を求めて試行錯誤する新聞にも影響するのだろうか。

これまでも「~~の目的で」「~~を目指して」などと書いていた記事がテレビ用語と同じく口語体で「~~しようと」などと変わりました。確かに新聞に浸透した歴史があります。

 新聞紙面に「ほんとに」が飛び交う時代がくるのでしょうか。本当に心配です。