気に入りの湯飲みを金継ぎしました。武雄温泉の黒牟田焼です。唐津です。と言っても私が施したのではありません。同じ町内在住の現代美術家、柿本静子さんにお願いしたのです。

 柿本さんとは私が現役時代、異色の美術作家としてお話を聞かせてもらったことから、しばらくお付き合いが続いていましたが、このごろは同じ町内在住なのに全くの音信不通でした。

 その柿本さんが焼物の指導をされていることを知り、早速、町の「陶芸の館」に伺い、金継ぎをお願いしたのでした。快く引き受けて頂きホッとしました。

 2週間後に引き取りに館に伺いました。大変、満足な出来です。口縁のいくつかの小さな欠け部分に少しの金を施しただけですが、湯飲みがにわかに輝きを放ち、湯飲みの周辺を違った雰囲気に彩ります。それにしても、金粉を膠で貼りつけ、輝かせて定着させる技は、手すさびの技とは思えません。やはり、すごい。織部の時代のきらびやかさを妄想させてくれます。

 柿本さんは、だいぶ前になりますが、ミカン農家だったか、自宅倉庫で白布を垂らしたインスタレーション(空間芸術)を制作されたことがありました。その時、鑑賞に訪れたのでした。〝この場を変えたい、変革したい〟という意志が漲り、しばらく見とれた記憶があります。この金継ぎにも息を飲みました。何を手掛けても変わらぬ意志は貫かれているようです。

 金継ぎの黒牟田焼です。大切にしましょう。