長崎新聞の昨日18日付のコロナウイルス感染症拡大に関する報道は圧巻だった。
主な地ダネを拾ってみた。
まず1面。政府による緊急事態宣言の全国拡大に対する長崎県の対応方がトップに置かれ、県内の感染状況もフォロー。ハラ(中央部)には、歌手のさだまさしさんが労りの心と我慢を県民に訴える歌を作った話題を、地元紙らしい明るい写真入りで貼っていた。
2面では自前の論説「生活に配慮した慎重な判断 県内緊急事態宣言」を置き、県の方針を後押し。大型連休の移動時期を控え、県民に「外出自粛などの実践」を訴えていた。
社会面には、中村県知事と県内市町長との意見交換のテレビ会議の記事。医療体制の強化、事業所などへの支援の要望が多く出された実情をリポートしていた。
そして、じっくりと読ませたのは企画「危機と生きる 新型コロナ考」の1ページ特集。この共同通信社配信の特集は、私の気持ちを暗くしていた頼りない政府方針の実情と本質が明らかにされ、溜飲が下がる思いだった。
「このウイルスが社会的に脅威なのは、人間を孤立させてしまう強力な力があるからです。人と人が物理的な距離を取らないといけない(略)。連帯の可能性は、科学の知見や先端技術を、愛情や共感を示すための武器とできるかどうかにかかっています」(医療社会学者・大野更紗さん)
「コロナショックの教訓は、時間軸の『分散化』こそが感染防止に役立つと。(略)多様な時間軸が併存する社会の方が、むしろ危機に対して強い」(歴史学者・與那覇潤さん)
「(略)市民の力で防ぐべきです。そもそもウイルスというのは、国家が闘う相手でしょうか。政治によって抑え込める相手ではないですし、政治的な特効薬だってありません」(批評家・東浩紀さん)
そして対面するページの大型特集は、長崎大の鈴木達治郎教授の「新型コロナと文明 原発事故の教訓を生かせ」。政府の対策が後手に回った背景に、安倍内閣の経済(景気)優先政策があるのでは? といった私の疑問に根本から応えてくれる内容だった。
鈴木教授は、リスクの最小化の施策は別のリスクを高めるという「リスクのトレードオフ(相殺)」理論を踏まえて安倍政治の施策に言及。「(政策決定者の判断が揺らぎ)国民よりも『経済を守る』、ましてや『政権を守る』といった間違った基準で危機管理対策を取られては、何をかいわんやだ」と揺れ続ける対応に釘をさしていた。
もう一点、さすが地元紙だと頼もしく思ったのは新聞社の論説委員による自前の「論説」。安倍首相による緊急事態宣言発令を受けて4月8日「協調して難局を乗り切ろう」、12日「『観光長崎』維持へ全力を」、16日「未知の不安と向き合って」、17日「地方への感染波及阻止を」ーー。感染症問題を県民の目線でとらえ、タイムリーに対処方を読者に発信、平易な言葉で訴えかけている。やはり地元記者の記事、特に論説などコラムは、私たちの分身・身代わりとなって怒りや悲しみ、つぶやきを吐露し、あるいは盾となって戦ってくれて信頼感もひとしおだ。引き続き分かりやすい論説を楽しみにしている。