長崎県長与町議会の12月定例会を傍聴した。本会議一般質問の初日、4人が登壇した。
若い議員の勢いのある質問とともに、二人のベテラン議員の質問が印象に残った。
一人は、声も言い回しも枯れた感じ。ヌラリクラリと自信なさそうに発言。議長から「マイクに向かって」と注意されるほど、なんとも心もとない感じ。
それが、どうして、どうして。けが人が続き存続か廃止かで揺れる町の公園のランドマーク、大型滑り台について、「町の言う『ランドマーク』とは何か。他の自治体では何があるか」「再開したとして運営する人員は」など…質問を訥々と繰り出す。町長、担当の幹部職員だけでなく、自ら発言したいといった態で関連部署の職員、さらに副町長までが次々に手を挙げ発言、問題の核心に迫る答弁を引き出した。
しかし当の議員は、それを論うでもなく淡々と、その場その場の答弁に対して質問を続け、いつの間にか滑り台問題の本質らしきものにまで迫った。当議員は確かに「廃止」を主張していたのだが、ヌラリクラリと件の滑り台について起きている問題の核心と解決の方向性を明らかにして、「安全性をよろしくお願いします」で質問を結んだ。
この成り行きは、傍聴者の私には演劇のクライマックスを見ている感じで〝舞台〟に心奪われた時間だった。
もう一人のベテラン議員。長く私の頭から消えていた地元自慢の焼物「長与三彩」の窯跡に焦点を当てた質問。これこそ町のシンボルなのだが、その古窯を保存整備する計画が、用地取得が進まず長くとん挫したままなのだ。
その原因の一つに、町側の不手際がある。計画区域の雑木伐採時に誤って地主の柿の木の苗を刈ったことから怒りを買い、交渉ができない状況になったという。そのうえ苗木を植える回復策もとっておらず、誤りにも行っていないらしい。うやむやのうちに時間が過ぎている。
議員は、用地買収という事案は「感情論」になると困難になると諭し、「自らが交渉を難しくしている」と強く指摘。感情に無頓着な対応を戒め、打開のための行動を求めた。
この感情論。同議員は町の「ハザードマップ」についての質問でも取り上げた。警戒区域からの指定と除外の判定「どのような事務手続きを経て決定されたのか」と迫った。大規模な住宅団地で同じ時期に開発。同じ自然環境なのに指定と除外に別れている。指定は地価に影響するうえ、危険区域というストレスに置かれる。この「住民感情」に思いを致すべきだ、と言うのだ。
人間は感情を素地に日々、理性を操つり、その理性でまた感情を操縦する。だが理性よりも感情が強い、体内部の基層には感情があると、これは私の持論。こんな「人間」を念頭に置いたベテラン議員の味わい深い質問である。対する幹部職員の方は大変でしょうが、公務に誇りを持ち準備万端整え、表現方法も磨いて議員に相対してほしい。
それにしても議会傍聴は面白い。質問に立つ議員一人一人の息遣い、気持ちの在りよう、感情の動きがジンワリと、あるいはビンビンと響いてくる。誤魔化しが訊かない。この臨場感、みなさん、時間があれば、ぜひ傍聴を!